第8話
我慢の限界だった。
ただただ、この世界からいなくなって欲しかった。
アイツがいるだけで家族が疲弊していく。何もかも壊れていく。
壊れていくとは精神的なこともあるが、実際に家の壁を殴って壊れさせていることも含める。
なぜ殴らなくてはいけないのか?働いてもいないクセになんのストレスがあるのか?
それならば自分を傷つければいいのに。
ただただ私たちが稼いだお金で買った食品を大量に消費し、働かず汗も流さないクセに毎日風呂に入り、さっさと寝ればいいものを、引きこもり特有の夜型生活のため電気を人一倍消費する。おまけにゲームに夢中である。
なぜこの死んでもらっても一向に構わない人間を養わなければいけないのか?
親はなぜこの状況を容認しているのか?
弟を働かせるよう、必死に訴えても母は聞く耳を持たない。そんな母の口から出た言葉は
「あの子は馬鹿だからしょうがないでしょ」
そんなことを言うのならば、私に負担をかけるなと言いたい。
それならば私も馬鹿になって生きていた方がマシではないか。
毎日毎日、会社で嫌な思いをして生きているよりも、衣食住に不自由なく、おまけにゲームまでできるなんて、夢のような生活ではないか。
親にそのことを告げると無視された。都合が悪くなると、すぐにダンマリを決め込むところも私を苛立たせた。
私がなにを言っても誰も聞いていない。私はきっと、いないことになっているんだろう。
学生時代でも社会人になっても言いたいことは沢山あったが、特に発言することもなく、存在感がなかった。
なぜ「発言しないのか?」と問われれば、結局私が言ったことなど誰も聞いていないからである。聞いてくれもしないのに、発言するなど無駄な労力でしかないではないか。
ちなみに学生時代。
「あれ?いたっけ?」と言われることが多々あったので、少し心配になり、学校帰りに普段は行かないコンビニへ買い物に行った際、店員に挨拶され「あぁ、大丈夫だ」と自分を安心させたこともあったほどだ。
存在感がなさすぎて、とうとう姿まで見えなくなってしまったのではないかと思った。未だに、半年に一回ぐらいの割合で自動ドアに無視されることがある。あれは結構恥ずかしい。
話は逸れたが、ここまで家族からいない者扱いされているのならば、うまく逃げられそうだ。
もはや捕まることもないだろう。もし捕まるとしてもその前に死ねばいい。刑務所暮らしはゴメンだ。
——もうこうするしかない——
今の状態の延長線に幸せはないから。
お前ら家族が私をここまで追い詰めたんだ。
親が死んでアイツを押し付けられるのは結局、私。
嫌な役回りを押し付けられるのはいつも私。
生きていてもどうせ不幸せしかないのだ。
「よ~し!決めた!殺してやる!」
強く決心した。
そう決めたがなかなか決行できずにいた。
アイツが部屋から出てこず、機会がなかったというのもある。
しかし、それよりも私の性格上「明日でいいか」と、つい先延ばしにしていた。
この親譲りのだらしなさが本当に恨めしい。
結局殺したのは、仕事のことや親からのお金の催促や、その日起きた嫌なこと…そういったことが一気に重なったときだった。
「あ。もうあと二日が限界だな」
自分でもわかっていた。
決行日を決めるとまず、ボートの手配をしに車で海へと向かった。
もちろん餌も持参した。それがマナーというものである。
それから魚たちと話し合い、
「二日後の夜。よろしくお願いします」と丁寧に告げた。とても大事な約束をしているのだから当然だ。
「わかった」と、リーダーの魚が合図した。心強い存在だ。
私もあんな頼り甲斐のある、リーダーの元で働きたかった。
当日。午後一時。
台所にあった三徳包丁を手に取り、気付かれないように気をつけながら、ちょうど水を飲みに来たらしい弟の背後に包丁を突き刺してやった。
まさか姉から刺されるとは思っておらず、隙だらけだったので簡単に刺すことができた。
引きこもりで食欲が止まらないアイツの丸々と太った背中に刃を突き立てる。
肋の部分を避け、ちょうど胃の裏あたりを狙った。
一度刺したぐらいでは死なないと思い、正面へと周り腹部を思いっきり刺す。
かなり力がいる。引き抜く時も力がいった。
脂肪が多く、包丁の刃に脂が付いてしまったので切れ味が悪くなってきた。
とどめに頭に突き立てると、骨に当たって刃が止まり、もう一度突き立てようと包丁を刺さった頭部から引き抜いた際、血が吹き出た。
頭からの出血はすごいんだよねぇ…
そういえばコイツに殴られて頭に裂傷を負ったとき、ちょっとの傷なのに生ぬるい血が滴ってきてビックリしたことを思い出した。
今思えば、その時に警察に通報しておけばよかった。
今までの恨みを晴らすように、切れ味の悪くなった包丁で何回も刺し続けた。
アイツは、最初は何を言っているのかわからない、他人をイライラさせるいつもの喋り方で、何か言葉をモニャモニャと呟いていたが、流石にもうなにも言わず動かなくなっていた。
醜い肉の塊から出血し、どんどんと床に溜まっていっている。人間の身体の7割が水分だという事実を目の当たりにしている。
これを隠す気力も体力もない。
この百キロ近い肉を解体するには、業者を呼ばないといけないだろう。包丁を捨てることすら面倒なので、刺したままにしておこう。
やってやった!
もしこれが警察に見つかって犯人がわからない場合、この死体の状態って「強い恨みによる犯行」って報道されるのかなぁ。
強い恨み、正解。
弟のことは昔から嫌いだったわけではなかった。
子供の時はごく普通のどこにでもいるような仲の良い姉弟だったと思う。
よく一緒に遊びに行っていたし、おやつもちゃんと半分こして食べた。
しかし、高校卒業後、私と同じく就職せざるを得なかった弟は色々と問題を起こし始めた。
就職難の時代に正社員として就職が決まった時、母は喜んでいた…が、もしかしたらコレがいけなかったのかもしれない。
弟は今までアルバイト経験すらなかった。
そんな状態から社会という荒波にいきなり放り込まれ、大人とのやりとりがわかっていなかった
コレは私も同じで父親とほとんど会話らしい会話をしてこなかったので、本気で”大人とは気軽に喋ってはいけないもの”だと思い込んでいた。
なので担任とも一対一で話をしたことがほとんどない。
——その結果、弟は勤務中にも関わらず、勝手に早退してきたり、無断欠勤したり、と社会人失格の烙印を押された。
それでも母は無理にでも会社へ行かせようとした。
ちなみに弟が就職した会社は食品工場で、いわゆる、おばちゃん勢が幅を利かせて気に入らない奴はいじめて辞めさせる、という典型的なモラハラ体質だった。
そんな地獄のような場所に無理に通わせていたのが悪かったのだろう。
今思えば、若い男なのだから、他にも働き口があったのではないか?
このとき無理強いせずに辞めさせていたら、今のような弟ではなかったかもしれないと悔やまれる。
モラハラ会社を辞めた後、弟は引きこもりと化した。仕事とはこんなに辛くて恐ろしいものだと思い込んだのかもしれない。でも、それは否定できない。仕事とはそんなものだ。
アルバイトぐらいすれば良いものを見事に引きこもった。
髪も切らず伸び放題。そのクセに変に潔癖。
それが三年ほど続いたある日
「盗聴されてる」
おかしなことを口走るようになった。
それからは監視されているだの、誰かが見張っているだのと言い張り、私たち家族がいくら宥めても無駄だった。
ある時は
「ここに盗聴器が仕掛けられてる」と、給湯器を拳から流血するほどガンっガンっと殴り壊した。
その時にはまだ、わからなかったが統合失調症だった。
ある日、呼び鈴が鳴ったので玄関の扉を開けてみると、警官が2人立っていた。
一人は中堅といった感じの頼り甲斐のありそうな警官で、もう一人は細身の若い警官だった。
何事かと警戒しつつ
「なんのご用でしょうか?」と訊ねてみると、どうやら弟が110番をしたらしい。
警官二人の先頭に立ち、急いで弟の部屋へと、荒くなる呼吸を抑えつつ案内する。
部屋から出てきた弟が発した言葉は
「あそこにいる人から殺される」だった。
弟が指さす方には誰もおらず、続け様に
「自分のことが新聞に載る。今日も載っていた」と宣った。
私は一気に恥ずかしくなり、弟に罵声を浴びせた。
そして二人の警官にひたすら謝った。
ことの次第を察したであろう中堅警官の方が
「誰も盗聴なんかしてないから、もし今日のことが新聞に載ったのであれば、また連絡しなさい」と弟を宥めた。
一方、怒り心頭で興奮状態の私には
「まぁ、お姉さんが怒る気持ちもわかるけど。落ち着いてね」と言葉をかけ、二人は我が家を後にした。
警官が去った後、まだまだ怒りが収まらない私は、弟の背中を力いっぱいグーで何度も殴った。
おかげで手が痛くなった。クソが。
パートから帰ってきた母に、先程の出来事を話すとため息をつき、肩を落としていた。
ただ、どういう理屈なのかわからないのだが、元の弟に戻る時期がある。
それも日単位ではなく、年単位で調子が戻る時期があった。
今思えば病院にも行かず、薬を服用していたわけでもないのに、あのひどい症状がここまで回復したことが納得いかない。
ストレスと関係していると言われればそれまでなのだが、病気ではなく何かに取り憑かれていたのではないかと考えるのも自然なことのように、不思議な現象だった。
ある時、私は占いをしてもらったことがあった。
タロット占いだったのだが、正直「そんなトランプみたいなので当たらないでしょ~?」と期待していなかった。
自分の悩みなどを占ってもらったのだが、的を射た答えのカードが出てきて、驚いた。
まだ時間があったので、ついでに弟のことを訊いてみた。
弟のカードを見た占い師はちょっと困った感じで
「う~ん。これはですねぇ、弟さんのせいではないんですよ…」
「どゆこと?」と思っていると
「前世のカルマがありまして、その時に女の人に酷いことしたみたいで…それが今、出てきているみたいなんですよね。こんなこと言っても、弟さんが何かしたわけじゃないから、可哀想なんですけどねぇ…」と、申し訳なさそうに答えてくれた。
カルマて!前世て!
知らんし!!である。
現世で犯した罪を被るならまだ納得いくが、生まれる前のことを言われてもどうしようもないのである。
でも結果、この占い師が言っていることにはなんだか納得できるもので、おまけに良心的な金額だったので騙された感じはなかった。
弟は憑き物が取れたように、働くこともできるぐらいに回復し、それどころか調子に乗ったのであろう弟は、家を出て行った。
ちなみにどこでなんの仕事をしているのか、どのような生活をしているのかなど、私が知る由もない。
仕事や病気などの個人的な不安は当然あったが、警察が家に訪ねてくるなど、非日常な事件が起こらない弟のいない毎日は平和だった。
意外にもその平和な日々は何年も続いた…が、そんなわけはない。
だって、私だもの。
このあと何年分もの不幸が降りかかるのだ。
そんなことも知らずお気楽に過ごしていたこの頃の私、呑気すぎて笑える。
夕方、家の電話が鳴った。
ナンバーディスプレイには知らない番号が表示されていたので、私は出なかった。
知らない番号の電話に出てもいつも碌なことがない事を知っているから。
電話には母が出た。と、同時に
「はぁっ!?」と素っ頓狂な声を出している。
それを聞いただけで小心者の私は心臓の鼓動が早くなった。
——絶対悪い知らせだ。
しょんぼりした様子で電話を切った母に何があったのか尋ねると、警察からだったらしい。
出た、警察沙汰。
詳しく聞いてみると、弟が毎日スーパーで何やらおかしなことを口走って店員に迷惑をかけていたらしく、対応に困った店側が警察に相談してきたそうだ。
どこまでも迷惑な奴め。そして意外にも隣の市に住んでいるという。こんなに近くにいたとは知らなかった。
とりあえず保護しに来いとの話だった。
翌日、父と母で弟の住んでいるアパートまで出向き、家に連れ帰ってきた。
私は夜十時まで仕事があったので、弟と接することはなかった。いや、たとえ家にいたとしても接することはなかったであろう。
——いやだ。また生活が脅かされる。
心の底からの嫌悪感でその日はなかなか眠れなかった。
我が家へ帰ってきてからも部屋からなかなか出て来ない弟の姿をまともに見たのは翌日だった。
何年か振りに見た弟は昔のスリム体型とは違い、小太り体型になっていた。
顔には生気がなく、どこを見ているのかわからない目。近づいては行けない雰囲気を醸し出していた。
弟と顔を合わせても無言を貫いた。何も話すこともなければ、話したところで通じないのだろうという気がした。
やはり、そうだった。昔よりも悪化している。何があったのかは母に訊くしかない。
夕食後、母が聞いた話をまとめるとこうだ。
まず、派遣社員として全国を転々としていた。
派遣切りにあった時には生活に窮して母に助けを求め、電話してきたこともあったらしい(そういえば「帰ってくればいいでしょ」と母が強めに電話口で話していた事を思い出した)しかし、何の意地か帰ってくることはなかった。
その頃は他県にいたが、ここ二年ほどで隣の市に引っ越し、生活していた。
そこが大問題だった。
住んでいたアパートには怪しげな新興宗教の住人が何人かいたらしく、そこでおとなしい弟がターゲットにされ、しつこく勧誘攻撃されていた。
そのストレスからか段々とおかしくなっていった。
統合失調症の症状が出始め、おかしな事を口走りだし会社もクビになったらしい。
——ひどい話だ。
宗教とは心の拠り所となるために入信するものではないのか?その存在で他人を不幸にさせてどうする。
自分たちの価値観を一方的に押し付け、染めていく。
なんと恐ろしいことか。
その神は弟のことは助けてくれなかったのか?
入信しなかったからか?
もし神ならばそんなこと関係なく全人類救ってみせろ。お前は見せかけか?
ひどい話はまだ続く。
会社をクビになったものの、行く当てのない弟はその信仰宗教の巣窟アパートに住み続けた。
おそらく仕事を探して自分だけでどうにかしようとしたのだろう。しかし、おかしな精神の人間を雇う会社などなく、自分が病気だという自覚もないため、どうにもならなかった。
そのため引っ越すことも叶わず、ストレスが頂点に達し、奇行に走ったのだろう。
思えばかわいそうなものだ。
弟のことは大嫌いだが、彼も不幸な人間だと思う。
私が言うのもなんだが、生まれて来ない方が良かったのではないかと強く思う。
弟が我が家に帰ってきてから一ヶ月ほど経った頃、事件が起こった。
病院に通わせたが相変わらず症状は少し良くなったり悪くなったりを繰り返していた。つまり治っていないということだ。
冬が近づき、だんだんと布団から出たくなくなってきた頃の朝。うっすらと夢から現実へと引き戻されている最中に父と母の話し声が聞こえてきた。
「包丁を自分の首に当てていた」
「目が充血して真っ赤だったぞ。多分あいつは寝てないからおかしくなっとる」
「刃物は隠しておこう」
その会話の直後、玄関の引き戸が開く音がしたので、外の物置へ包丁を隠しに行ったのだと分かった。
うつらうつらして二度寝したが母の叫び声で目が覚めた。
「救けて!」
飛び起きて、声が聞こえた玄関の方へと急ぐ。
母の首元にフォークを突き立てようとしている弟が見えた途端
「何やってんだゴラァ!!」と叫んで、弟に思いっきり蹴りをくらわせていた。弟は弾き飛ばされ、持っていたフォークがクルクル回転しながら飛んでいった。
何はともあれ母が無事でよかった。
その後、母は仕事へと向かった。どんなメンタルだよ。
私は、ちょうど休日だったため、弟の行動を見張った。
何かブツブツと呟き、時々キヒヒヒヒと笑う。
外に出たかと思うと道路に向かって天を仰ぎ、庭の土で汚れるのも気にせず両膝をつき、何かに祈っている体勢をとる——よく韓国ドラマでお墓参りの時にやる、あの一連の流れの動きそっくりである——
何をやっているのだろう。お前を守ってくれる神様などいないのに。
恥ずかしいので「家に入れ!」と罵倒し、半ば押し込めるようにして家へと押し込む。靴のまま家の中に入っていったので、思いっきり頭を叩き、靴を脱がせる。
その後、自室へ閉じこもっていたが、一定の時間が経つとまた同じように外へ出たり、靴のまま部屋をウロウロしたりの繰り返しだった。
この間、父親は家にいたにもかかわらず何もしなかった。そのくせに昼食はしっかり食べていたので心の中で
「この役立たずが!」と罵倒した。
午後二時。母が帰ってきた。
弟をすぐに病院へ連れて行こうと父と画策していたが、充血した目で弟は断固拒否している。車に乗せようとすると暴れて逃げる。何回かそれを繰り返したのちに母が
「そんなに言うこと聞かないなら、神様が怒るよ!」と、訳のわからないことを言い出したので、「そんなんで言うこと聞く訳ないやろ」とすかさずツッコんだが、意外にも弟はすんなり車に乗った。
お前らの共通項の神様って何なんだよ。なに?私の知らないところで流行ってんの?
そういえば弟は「皇帝の言うことを聞かなきゃ」とか「神様が怒ってる」とかなんとか口走っていることが多かった。おまけに小さなDIY祭壇もどきのものを作って、先ほどの韓国式お祈りをしていたり…。馬鹿みたい。
数時間後、病院から帰ってきたのは父母だけだった。そのまま入院になったらしい。そりゃそうだろう。私たちでは手の施しようがない。
その後、何回も入退院を繰り返し、徐々に回復したのであろう、一ヶ月ほどして帰ってきた。
弟が退院後、母が深刻そうな顔をして話しかけてきた。こういう時は碌な話ではないとわかっている。
「ヒサちゃん…すごく言いづらいんだけど…お金貸してくれない?入院費が払えなくて困ってて…」
呆れた。子供にお金を借りる親などクズの中のクズだ。
「悪いけど…百万ほど貸してくれない?」本気で言っているのかと耳を疑った。一ヶ月の入院で百万?高額医療なんとかの制度はどうなっているのかと聞いたら弟の場合、対象外らしい。そんなことがあるのか?
翌日、渋々銀行でお金を下ろしてきた。その際「高額なので使い道をお尋ねすることになっているのですが…」と、行員が申し訳なさそうに尋ねてきたので「親に取られるんです」と正直に答えた。
本当に嫌だった。あとからこの日のことを激しく後悔した。貸さなければよかった。結局今までに一銭も帰って来ていない。だらしない親はお金にもだらしなかった。
弟は精神障害で働けないのだから、何か年金などの手当が出ないのか行政に相談するように母に伝えた。
実際、電話して訊いたのかどうかわからないが、弟はそこでも対象外らしい。
なぜだ。
現に、まともに仕事もできないような病気なのに?
悪化すれば、家族がいつ殺されてもおかしくない病気なのに?
おかしいだろう。
何の為に年金を納めさせられて、何の為に安くもない税金を徴収されているのだ。
私たちのような底辺の人間はいつ救われるのだ。
子育て支援ばっかりやってんじゃねえぞコラ。もっと本気で明日食べるものにも困ってる人の為に支援しろや!
最悪だ。なにもかも。
私は子供の頃、母のことが大好きだった。
何よりも大事な存在だった。
もし、母が死んでしまったら一緒に死のうとまで考えていたほどの存在だった。
なのに、こんなに嫌な人間になってしまうなんて…。
あぁ、イヤだイヤだイヤだ!消えてしまいたい!
気持ちが悪い、嫌悪感の塊だ。
それからというもの、度々お金をせびられた。こいつらは一生追いかけてくる借金取りと一緒だ。私はこいつらの前から消える以外、一生お金に困って生活するしかないのだ。
しかし、それも今日で終わりだ。私は賢いから自分で終わらせてやったんだ!
そして今からお前らの前から消える!
さぁ、今後お前らが私なしでどうやって生活していくのかを想像するだけでワクワクが止まらない。
この惨状を目にして父母はどう思うのだろう。この肉の塊が自分の息子だと認識できるのだろうか?母は狂ってしまうだろうか?仕方ないよ、それは自業自得というものだもの。
とにかく返り血を洗い流さなければいけない。気が効く私は、もうすでに風呂を沸かしていた。なんせシャワーがない家なので。
そしてあらかじめ用意していた服に着替え、バッグを持ち出し、海へと急いだ。
さらばさらば辛い日々よ
あの世で出会っても話しかけんじゃねえぞ!クソ家族!
お前らなんか、大嫌いだ!
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