活字を喰らう者

AKTY

活字を喰らう者

 創作を始めたきっかけは何かと問われたら、それは簡単なものだ。筋トレ中に怪我をして、しばらく動けなかったから。運動できないストレスを書くことに向けたわけだ。


 じゃあそのストレスが原動力かといえば、そんなはずはない。そんなものはちょっとした一押し程度のもの。当然自分に影響を与えた別の何かがあるのだ。


 それは漫画だろうか?アニメだろうか?映画もたくさん見た。大好きな格闘技、MMAやプロレスからのインスピレーションもあるだろう。あれらは思考を促すものだ。


 だがやはり、一番は子どもの頃から読み続けている活字の本だろう。


 思い返せば、まずは図書館で借りて読み漁った、児童用に翻案された世界文学全集の名作の数々。そして夏目漱石や森鷗外をはじめとした、日本文学の文豪たちの作品。教科書で出会った中島敦の「山月記」などは特に思い出深いものだ。


 大学生の頃は大江健三郎をメインにその同時代の作家たち。以降の新しい世代の作品も加わった。SFも齧った。無謀にも古典や哲学書などにも手を出した。


 そしていまぼちぼち書いている評論というか与太話の題材、海外文学の名作、傑作からもおおいに影響を受けている。


 どれがというのは言えないが、これらが私のベースにあるのは間違いないだろう。しかしこれだけでもないように思う。


 私は数年前、異常に読書熱が高まった時期があった。他所でつけていた記録に残っているので大袈裟に言っているのではなく、正確な数字なのだが、年間365冊以上を5年以上続けたのだ。


 それはもう出鱈目な話である。それまでに読んでいたものに加え、ミステリーや時代小説、歴史物、エンタメ系からラノベ、ノンフィクションと、まさに手当たり次第に読み漁った。


 中にはそれはもう酷いものもあった。それでどうやって校正をすり抜けた !? いや、そもそもどうやって出版にこぎつけたのか?金か?コネか?女か?と、ひとり本に向かって声に出してツッコんだようなものもあった。


 しかしいま思えば、そういったゴミクズみたいなのも含め、すべてが自分にとっての糧になっているように思えるのだ。


 名文だけを読んでも名文は書けない。日本語の構造を知るために、悪文も役に立つ。名文と悪文、横に並べて読んでみれば、言葉選びの重要性や、物語構造をしっかり組み立てることの意味がよくわかる。


 これではっきりした。私の創作の原点に、これまで喰らった活字のすべてが血肉となって流れているのだ。

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