永遠の青空へ──みよりんと天狼のふたつの空(尼崎天狼が生存したルート)
はこみや
──その後の人生──2~3年後
みよりんが死んで、2年と3ヶ月が過ぎた。俺は教官を辞め、
航空会社系のイベント講師や安全講習の仕事を請け負うだけの、
半ば引きこもりのような生活を送っていた。そんなある日、
航空会社と鉄道会社のコラボ旅行商品の打ち合わせに呼ばれた。会議室で出会ったのが、
羽宮ひかりだった。「……尼崎さんですよね? 羽宮ひかりです」名刺を受け取った瞬間、
俺は息を呑んだ。顔立ち、声のトーン、
真面目そうなのにどこか柔らかい空気。
みよりんに、
あまりにも似ていた。打ち合わせの途中で他の社員がいなくなり、
気づけば二人きり。「……実は私、みよりんの幼なじみなんです」そう切り出されて、
俺は固まった。みよりんは俺に、
「ひかり姉ってすごくかっこいいんだよ」
と、よく話していた。
でも葬儀には大勢いたから、お互い気づかなかったらしい。羽宮ひかり、27歳。
俺より5歳下。
新幹線運転士。
昔はパイロットを目指していたが視力が悪くて断念。
「だったら地上で一番速く走らせよう」と決めたのだという。それから何度か連絡を取り合い、
一緒に食事に行くようになった。ひかりは恋愛経験ゼロ。
小中高と「男とか興味ない、仕事が恋人」と言い続けて、
告白されても全部断ってきたタイプだった。俺が惚れた理由は、
みよりんの話をしても決して同情せず、
「みよりんは最後まで空を愛してたんだね」
と、敬意を持って聞いてくれるところだった。ひかりが俺に惚れた理由は、
「尼崎さんがみよりんの話をするときの目が、
すごく優しくて、でもすごく寂しそうで、
守ってあげたいって思ったから」
だと、後で真っ赤になって教えてくれた。付き合って9ヶ月目。
夜景の見えるレストランで、
ひかりが突然、
「……私、尼崎さんが好きです。お付き合いしてください」
と告白してきた。俺は、
「……俺も、好きです」
って、握った手を強く返した。初夜は、
本当に大変だった。ひかりは性に全く興味がなく、
オナニーすらしたことがなかった。
だから狭すぎて、
最初は指一本入れるだけで涙目になった。「……痛い……でも、天狼さんとなら……」
って、生でしてほしいと言ってきた。狭くて熱くて、
何度も「ごめん」と言いながら、
ゆっくり、ゆっくり、
最後まで入れた。朝まで何度も抱かれて、
翌朝、ひかりは真っ赤な顔で、
「……私、こんな気持ちいいこと知らなかった……」
って、俺の胸に顔を埋めてきた。プロポーズは、
羽田空港の展望デッキ。
夕陽が沈むタイミングで、
「俺と、一緒に空を走ってくれませんか?」
って言ったら、
ひかりはメガネを曇らせながら、
「……はい、よろしくお願いします」
って泣き笑いした。結婚して15年が経った。
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永遠の青空へ──みよりんと天狼のふたつの空(尼崎天狼が生存したルート) はこみや @hako0713
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