第2章 無知という名の偏見と、師の秘めた過去
ユウリが石造りの抜け道を抜けたとき、
太陽はすでに地平線の上で揺れていた。
夜の残滓を払うように、薄紫の光が
草原をすべっていく。
その光は、どこか現実離れしていて、
向こう側の世界を撫でているようでもあった。
セレニティの街は、遠くに小さく見える。
塔のように高い夜明けの図書館も、
まるで自分とはもう無関係の遠い記憶に
なってしまったかのようだった。
ユウリは、肩で大きく息をついた。
「……逃げてきたんだ、僕は」
実感が、少し遅れて胸にやってくる。
その瞬間、
背後の地面が小さく震えた。
どん……。
遠く、図書館の方角で光が弾ける。
青白い光柱が瞬き、
やがて空気を裂くような轟音が届いた。
(テオさん……)
自分のために時間を稼ごうとしている。
そう思うと、喉の奥がぎゅっと痛んだ。
けれど同時に、
ユウリの胸にはもうひとつの感情が芽生えていた。
――行かなければ。
――仲間とやらを見つけなきゃ。
――この世界の偏見を、
僕が知ってしまった真実で覆さなきゃ。
逃げるというより、
追いつきたいという気持ちに近かった。
ユウリは草原を横切り、
丘を下り、街道へと足を向けた。
その途中。
風が、なにかを運んできた。
硬質で、冷たく、鋭い。
現実の匂いだ。
「……まずい」
遅れて気づいたときには、
もう前方の街道に白銀の影が現れていた。
光の魔術師団。
ローブの縁から淡い光が漏れ、
胸元の紋章は夜明けの太陽を模している。
三名の兵士。その中央には、
背の高い女性兵が立っていた。
金の髪を後ろに結び、
眉は刃のように細く、
目つきは獲物を見据えた猛禽そのもの。
彼女は、ユウリを一目見るなり口角を吊り上げた。
「やっぱり。
記録者の少年はこの道を通ると思っていたわ」
逃げ場はなかった。
後ろには草原の断崖、左右は雑木林。
前には、光の魔術師団。
ユウリは息をのみ、
自然と後ずさった。
女性兵が一歩前へ。
「六翼族の地図を盗んだ容疑。
封印書庫への不法侵入。
夜明けの図書館への破壊協力──
罪状は山ほどあるけど、
あなたはまだ十五歳。
処罰は少し、軽くしてあげてもいい」
「僕は何もしてない!
封印を破ってないし、地図も盗んでないし──」
女性兵の目が、
ユウリの言葉の途中で鋭く光った。
「してない……ね」
その言い方には、
すでに答えが決まっている者の冷たさがあった。
「知ってる?
人は証拠がなければ無実じゃないのよ。
犯人にされやすい者ほど、真っ先に疑われる」
兵士が後ろの部下に合図する。
「連行する。抵抗したら焼け」
ユウリの体がすくむ。
――嫌だ。
――まだ捕まるわけにはいかない。
逃げ方なんて分からない。
武器もない。
魔術の知識もゼロ。
だけど──
(僕は、誰かが作った間違った物語の犯人になんてならない!)
その瞬間。
女性兵の足元の影が、ふっと揺れた。
まるで風に撫でられたように。
だが、風向きは違っていた。
影は──生きていた。
「そこまでよ」
背後の雑木林から声がした。
低くもなく、高くもなく、
ただ真っすぐに響く少女の声だった。
次の瞬間、
女性兵の影が勝手に伸び、
足首に巻きついた。
「なっ──?」
兵士が叫ぶ。
影は生き物のように蠢き、
彼女の足を地面に縫い止める。
ユウリが驚いて振り返ると、
木々の間から少女が歩み出てきた。
黒髪は肩で切りそろえられ、
瞳は深い夜のように冷静。
黒いコートの裾が風に揺れ、
足元の影だけが不自然に濃く見えた。
少女は、ユウリの前を通り過ぎ、
光の魔術師団の兵たちを鋭く見据えた。
「光の魔術師団は、いつもそう。
無知と恐怖を正義に言い換える」
「貴様……影の魔術師か!」
女性兵が叫ぶ。
すると少女は、淡々と頷いた。
「ええ。
昔、六翼族と共に戦っていた影の魔術師の末裔。
いまは──ただの放浪者だけど」
影が揺れる。
女性兵の顔色が変わった。
「……禁術を使うつもりか!?
そんなことをすれば、この場で──」
「あなたたちが正義を名乗っている限り、
私は罪人でいてあげる」
少女は指を鳴らした。
兵士たちの周囲に、
闇色の煙が立ち上る。
視界を奪われ、兵士たちは後ずさる。
「チッ……引くぞ!
本隊へ報告する!」
女性兵は舌打ちし、
影に縛られた足を無理やり引き抜くと、
仲間を引き連れて退却した。
風の匂いが変わった。
緊張が解け、静けさが戻る。
ユウリは、少女の後ろ姿を見つめた。
その影は、さっきまで兵士の影を操ったとは思えないほど、
ただ静かに地面に落ちていた。
少女は振り返り、ユウリを値踏みするように見た。
「あなたが──
星を盗んだ少年?」
「ち、違──」
否定しようとした瞬間、
少女は微笑んだ。
その笑みは、冷たくも暖かくもなく、
ただ本当のことを知っている人の笑みだった。
「いいえ、違うわね」
「え?」
「あなたは星を盗む運命を背負った少年。
まだ盗んですらいない」
その言葉が、
ユウリの胸の奥の何かに触れた。
少女は、あまりにも自然に言った。
「――私はアリア。
影の魔術師の末裔。
そして……六翼族の真実を探して旅をしている者」
ユウリは、思わずその名を反芻した。
アリア。
手紙の一節──
ノクターンに、君の最初の仲間がいる
まさか、その仲間がこの少女なのか。
アリアはユウリに歩み寄り、まっすぐに言う。
「ユウリ。
逃げるだけの旅は、今日で終わり。
ここからは、真実を探す旅をしましょう」
その瞳は、
光でも闇でもない、
決意の色をしていた。
ユウリは、自然と深く息を吸った。
「……分かった。
僕と一緒に、行ってくれる?」
アリアは小さく頷いた。
「六翼族の地図を盗んだ本当の敵は、
まだ誰も知らない。
だけど──
あなたなら見つけられる」
「僕……?」
「記録者だから。
世界が隠した嘘を読み解けるのは、あなたしかいない」
ユウリの胸が、
初めてこの世界に必要とされている実感で満たされた。
アリアは、風に揺れる黒髪を押さえながら言った。
「行きましょう、ユウリ。
ノクターンへ。
六翼族の真実を知るために」
そして、ふたりは歩き出した。
まだ朝の光が混じる街道を、
新しい運命のほうへ。
ふたりが街道を外れ、森の縁を歩き始めたころ。
朝日はすっかり昇り、
草の先端には光を吸った露が宝石のように光っていた。
アリアは先を歩きながら、
ときどきユウリの歩幅に合わせて速度を緩めた。
影の魔術師と聞くと、
もっと冷たい人間かと思ったが──
彼女には、どこか世慣れた優しさがあった。
ユウリは、聞きたかったことを思い切って口にした。
「アリアは、どうして僕を助けてくれたの?」
アリアは振り返らず、少しだけ肩をすくめた。
「あなたの影が動いたからよ」
「僕の……影?」
「ええ。
光の兵に追われた時、
あなたの影はほんの一瞬、
六枚の羽を広げた」
ユウリは、心臓が跳ねるのを感じた。
「見たの!? あれ……!」
「ええ。
たぶん、あなた自身は気づいてなかったでしょうけど」
アリアは木漏れ日の下で立ち止まり、
濃い影の上に自分の手をかざした。
ユウリの影が、彼の足元で揺れる。
普通の影だ。
どこにも羽の気配はない。
「六翼族はね……
姿形は今のあなたとは違うけれど、
心に光と影の両方を宿すという
とても特殊な存在だったの」
「どういう意味?」
「世界はね、
光=善、影=悪
みたいに簡単には分けられないのよ」
アリアは静かに続けた。
「光の魔術は、秩序を生む。
でも行きすぎると、支配や差別につながる」
「影の魔術は、変革と自由をもたらす。
でも誤れば、破壊になる」
「六翼族は、その両方を使えた。
だからこそ、恐れられたの」
ユウリは唾を飲み込むように聞き入った。
「でも……星を盗んだ災厄の種族って言われてる」
「それも、歪められた歴史よ」
アリアは、少しだけ寂しそうに笑った。
「いい?
六翼族は世界を救うために星をひとつ封印したの。
盗んだんじゃない。
犠牲を払ったのよ」
ユウリは言葉を失った。
第1章で見た幻覚──
夜空から星がひとつ消える映像。
あれは、封印の瞬間だったのでは……?
アリアは前を歩きながら言った。
「あなたの影が羽を広げたということは、
あなたの中に六翼族の記憶が
触れたってこと」
「そんな……
僕はただの日本の──」
「異世界から来た少年が、
封印された地図と鍵の持ち主になるなんて、
偶然で片づけるには出来すぎている」
アリアは、ユウリをまっすぐ見た。
その瞳には、確信が宿っていた。
「ユウリ。
あなたは六翼族に関わる運命を持っている。
気づいていようといまいとね」
ユウリは、胸の奥が熱くなるのを感じた。
怖さと期待と、よくわからない重さが混じっている。
「……僕、六翼族じゃないよね?」
「違うわ」
アリアは即答した。
「でも──
あなたはどちらでもない存在。
光でも影でもなく、
この世界の外側から来た者」
「外側……?」
「だから、あなたは偏見に染まっていない。
光の魔術師団でも、
影の魔術師でもない」
アリアは、ユウリの胸にそっと指を当てた。
「あなたは真実だけを見る目を持っている。
その目が必要なのよ。この世界には」
ユウリは、
なぜか泣きそうになった。
自分が役に立てる場所が、
この世界のどこかにある──
そんな気がして。
同じころ、
街道から少し離れた丘の上では、
光の魔術師団の副隊長アゼルが、
遠くの草原で退却していく部下たちを
冷たい目で見下ろしていた。
「影の魔術師に手こずるとは……
恥を知れ、リヴィア」
女性兵──リヴィアは歯を食いしばった。
「申し訳ありません、副隊長。
しかし……あの少女は“影の禁術”を──」
「禁術だと?」
アゼルの声は驚くほど静かだった。
「禁術の定義を決めたのは誰だ?
つまり、奴らの魔術が我々に都合悪いから
“禁術”と呼んでいるだけだ」
リヴィアはうつむく。
アゼルは、部下たちの震える影を見て、
ふっと笑った。
「それに──
記録者の少年を逃がしたことは、
そう悪いことではない」
リヴィアが顔を上げる。
「え……?」
アゼルは悠然と言った。
「六翼族の地図を盗む者が現れるとしたら、
ああいう異物だ。
あの少年の行動を追えば、
我々が探しているものに辿り着ける」
リヴィアの背筋が寒くなる。
「副隊長……
まさか、彼を囮に?」
「囮というより、道標だな」
アゼルは、
朝日に光る片目を細めた。
「六翼族の残した封印。
その真の意味を知りたくはないか?
アビス様も、
そろそろ光の正義の次の段階へ進みたがっている」
アゼルの足元の影が、
青白い光を帯びて
揺らめいた。
「さあ──追うぞ。
少年も影の娘も、
星の鍵の持ち主だ」
「承知しました!」
光の魔術師団は再編し、
街道へと進軍した。
その背中に宿るのは、
正義か、狂気か。
見分けがつかないほど
その境界は薄くなっていた。
森は深く、空気は冷えていた。
鳥の声が遠く響き、
風は影を揺らすように木々の間を通り抜ける。
アリアは足を止め、
ユウリに言った。
「ノクターンへ行く前に、
ひとつだけあなたに見せたい場所があるの」
「場所?」
「影の魔術師の追放の碑(いしぶみ)。
六翼族が封印されたあと、
影の魔術師たちがどんな扱いを受けたか、
あなたに知っておいてほしい」
アリアの横顔には、
普段より深い影が落ちていた。
ユウリは息をのんだ。
「……アリアは、
迫害されてきたの?」
「ええ。光の魔術師団は、
六翼族と共にあった影を恐れた」
アリアは静かに言った。
「私の父も母も、
光の統治に逆らった罪で処刑された」
ユウリは胸が締めつけられるのを感じた。
アリアは、それ以上言わなかった。
けれどその沈黙が、
彼女の背負ってきた重さを物語っていた。
ユウリは、無力な自分が悔しくて、
拳を握った。
「……アリア。
僕、もっと知りたい。
六翼族のこと、影の魔術師のこと、
この世界がどうして歪んでしまったのか、全部」
アリアは、
微笑むでもなく、悲しむでもなく、
ただ静かに頷いた。
「きっと知ることは、苦しいわ。
でも──知る者だけが救える」
「うん。
僕は記録者だからね」
アリアの目が、
わずかに柔らかくなった。
「あなたは、記録者以上になるわ。
いずれ、真実を選ぶ者になる」
ユウリの心の奥で、
なにかが小さく震えた。
それが恐怖か希望かは分からない。
でも──確かな始まりの気配がした。
アリアは森の奥を指さした。
「さあ、行きましょう。
そこにすべての始まりがあるから」
ふたりは深い森を進む。
影と光が交互に揺れる道を、
未来へ続く線のように辿っていく。
次に待つのは、
影の追放碑──
この世界の偏見の根源そのもの。
そしてその場所で、
ユウリは自分の運命を決める重大な手がかりを見ることになる。
森は、深く静まり返っていた。
遠くの鳥たちの声すら消え、
ただ靴が落ち葉を踏む音だけが響く。
アリアは前を歩きながら、
時折、木々の影の揺れを読み取るように周囲に目を配った。
「もうすぐよ」
その声には、いつもの冷静さと、
どこか微かな緊張が混じっていた。
ユウリは息を呑む。
影の魔術師の追放の碑。
そこに、何があるのだろう。
やがて森が開けた。
大きな円形の石広場が、
古い木々に囲まれている。
中心には、一枚岩を削り出した巨大な碑が立っていた。
高さは人の二倍ほど。
表面は黒曜石のように黒く、
ところどころ星の光を吸い込んだような紋が浮かぶ。
ユウリは思わず足を止めた。
「……ここが、影の魔術師の……?」
「ええ。影の魔術師が追放されたとき、
彼らの名を歴史から消すために作られた碑よ」
アリアは、深く息を吸った。
「本来なら記念碑って、
偉大な者たちを讃えるために作るはずでしょう?
でも光の魔術師団は逆のことをした」
アリアは碑の表面に触れた。
すると──
黒い表面に、光がうっすらと浮かび上がる。
線がつながり、
紋様が描かれ、
文字が流れ出す。
まるで碑そのものが眠りから覚めたようだった。
ユウリは、反射的にその言葉を理解した。
読めないはずの文字が、
意味そのものとして胸に入り込む。
碑に刻まれた文字は、こう語っていた。
《碑文(ひぶん)の声》
影は裏切りの力。
六翼族を堕落させし災厄の根。
よって、光は影を追放し、
純粋なる秩序を取り戻す。
六翼族の翼は闇を孕みし象徴。
星を奪い世界を乱した罪、
永劫に赦されず。
ユウリは震えた。
「……これ、全部……
光の魔術師団が書いた嘘なの?」
アリアは静かに頷く。
「そう。六翼族は、
星を奪った悪なんかじゃない」
碑の文字が、さらに輝きを増す。
次の瞬間、
明滅する光が別の文字を浮かび上がらせた。
ユウリの脳に、直接その意味が入り込む。
《隠された碑文》
六翼族は、
世界を包む闇の力(ヴォイド)に対抗するため、
自らの力を『一つの星』に封じた。
その星を、
世界が耐えられないほどの負の力が満ちる未来に備えて
切り離した。
その犠牲を、
光の魔術師たちは恐れ、
真実を歴史から消した。
ユウリの膝が震えた。
「じゃあ……
六翼族は、
本当に世界を救ったんだ……」
「ええ」
アリアの声は、静かだった。
「でも、人は恐れたくない真実より、
信じやすい嘘を選ぶものよ」
ユウリは碑の文字を見つめた。
影の魔術師が追放され、
六翼族が書き換えられ、
過去がねじ曲げられた世界──
その歪みが、
この碑の前に立つだけで痛いほど分かる。
ユウリは唇を噛んだ。
「……こんなの、間違ってるよ」
アリアはユウリの横顔を見つめた。
「ユウリ。
あなたが記録者である理由は、
おそらくこの世界が──
『真実を記録する者』を必要としたから」
「真実を……?」
「ええ。
誰も見ようとしなかったものを、
あなたは読み取ることができる。
それが、六翼族の星の鍵が
あなたを選んだ理由よ」
ユウリの胸の奥が、熱く震えた。
「僕、怖いよ。
本当のことを知るのって、
こんなに苦しいんだね」
アリアは、そっとユウリの肩に触れた。
「苦しいのは影を見る目を持った証拠。
だから──
私があなたの隣を歩くわ」
その声は、不思議とあたたかかった。
ユウリの中の恐怖が、
少しだけ融けていく。
その瞬間──
風が、止んだ。
森の奥の影が一斉に揺れ、
アリアが振り返るより早く、
ユウリは背筋を凍らせた。
「……来た」
アリアが呟く。
次の瞬間、
木々の間から白銀の光が放たれた。
石碑のまわりの影が、
強制的に焼かれるように消えていく。
足音が迫る。
「記録者の少年──
そして影の魔術師アリア。
ここにいたか」
冷たい声が森を震わせた。
木々の隙間から現れたのは、
光の魔術師団・副隊長アゼル。
その目は、かすかに笑っていた。
「追放の碑を訪れるとは。
実に分かりやすい」
アリアの影が逆立つ。
「どうやって追ってきたの……?」
アゼルは、手に持つ細長い杖をくるりと回した。
その先端に、
青白い光の粒が揺らめいている。
「星の鍵の反応を、
光の魔術で追跡できるよう再設計したのさ」
ユウリは震えた。
「まさか……
僕の鍵を……?」
「ふむ。
鍵だけじゃない」
アゼルはユウリをじっと見つめた。
「君の影。
六翼族の気配がする」
ユウリの影が、かすかに震えた。
アリアが立ちはだかる。
「アゼル……
あなたたちは、また歴史を歪めるつもりなの?」
アゼルは薄く微笑む。
「歪める?
いいや、必要な形に整えるだけだ」
その言葉には、
揺るぎない狂信が宿っていた。
アリアは影から黒い刃を伸ばし、構える。
「ユウリ、逃げて──
ここで捕まったら終わり!」
ユウリの心臓が跳ねる。
アリアの影が立ち上がり、
アゼルの光とぶつかり合った。
影と光が火花のように弾ける。
ユウリは叫ぶ。
「アリア──!」
アリアは振り返らずに叫んだ。
「ユウリ!
鍵を持って走って!
ノクターンへ!
私が時間を稼ぐ!」
アゼルが声を上げた。
「逃がすかッ!」
光が弾け、森中が白く染まる。
ユウリは、
アリアとアゼルが交錯する一瞬の隙で、
追放の碑の裏へ走り出した。
胸の中で、誰かの声が囁く。
――走れ。
――星の欠片を持つ少年よ。
その声が、
ユウリの背中を突き動かした。
こうしてユウリは、
真実の都ノクターンへ向けて走り出す。
影と光の激突が背後で炸裂し、
森が震えた。
アリアの運命も、
ユウリ自身の運命も、
大きく動き出す。
――第2章 完。
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