第13話 メンヘラvsメンヘラ

 2人は中心で競り合っていた。

 「はぁ!」

 先にサクラが競り合っていない剣の方で、アリアに向かって突き刺した。

 アリアはそれを綺麗に流しながら、同じように剣を突き刺したが、サクラは流された剣をすぐに戻して、同じように流した。

 しばらくその攻防が続いたが、アリアは後ろに下がった。

 「そこっ!」

 着地をする前に、神速・虚殺で首を切ろうとしたが、アリアは空中で身を翻した。

 アリアは翻した勢いでそのままサクラを蹴り上げた。

 「ぐぁぁあ!」

 サクラは空中へ大きく飛ばされてしまった。

 アリアが飛び上がってきた。

 「お姉ちゃんは!」

 サクラは反射的に受身をとったが、蹴りは腹部に入り込んだ。

 「ぐふぁっ!」

 アリアはそのまま蹴り落とそうと、かかと落としをしようとしたため、サクラは腹部を押さえた。

 「私のもの!」

 サクラの顔面に入って、そのまま地面にたたき落とされてしまった。

 サクラは地面に落ちてすぐに体勢を立て直そうとしたが、その前にアリアが剣を振り下ろしながら落ちてきたため、サクラは剣で挟んで、致命傷を食い止めた。しかし、上に跨られていて、何もできなかった。

 「どうして私の愛の邪魔をするんですニャ?」

 「邪魔なんてしてるつもりないよ?」

 「それならお姉ちゃんはどうしてあんなにサクラのことばっかり見てるんですかニャ?それまでは私にベッタリだったのに!」

 剣の力がますます強くなった。

 「くっ!」

 しばらく耐えていると、急に剣から力が抜けた。

 「サクラさんが諦めるまで私は諦めませんニャ!」

 「ごめんね、私もイザベラに興味があるから、それはないかな」

 「重力過剰グラヴィティ

 すると、急に空気が重くなった。

 「ぐあっ!」

 不意に来たため、剣を落としてしまった。

 「ヒール」

 サクラは回復されて困惑した。

 「不死の呪い」

 「え?なんのつもり?」

 サクラは重力の影響で何もできないでいた。

 「痛覚過敏」

 アリアは剣を思いっきり腹部に突き刺した。

 「っぎゃぁぁぁ!!」

 本来、模擬戦という機能では、命の代わりに体力バーが設けられて、痛覚もなくなるはずだが、サクラは痛みを感じた。

 「どうして私の邪魔をするの!」

 「っあぁ!」

 何度も腹部に刺されたが、不死の呪いで体力が減らなかった。

 「私のイザベラを取るなぁ!」

 「ああぁぁあ!」

 サクラは何か発言をされる度に腹部を刺されまくった。

 しばらく刺されると、アリアの動きは止まった。

 「どうして私の恋の邪魔をするんですかニャ?」

 「さあ?どうしてだと思う?」

 「質問に質問で返すなっ!」

 サクラは前髪を掴まれて、強力な重力がかかってる中で引っ張り上げられてしまった。

 「ぎゃぁぁああ!!」

 涙が溢れてしまった。

 「諦めますニャ」

 「嫌だ!」

 ここで認めてしまったら、サクラ自身がイザベラのことを好きでいることを否定することになってしまうため、認めることはできなかった。



 城門近くにカグラが来た。

 「ん?サクラと…アリア?決闘中か?」

 カグラは城門入口で様子見をすることにした。

 遠くからイザベラも息を切らしながら走ってきた。

 サクラとアリアが城門前で何かやってるのを見ると、すぐに向かおうとしたが、カグラに止められた。

 「今は決闘中だ」

 イザベラは、サクラが滅多刺しにされてる光景を見て、すぐに否定した。

 「こんなの決闘じゃないニャ!」

 「まあ落ち着いて」

 イザベラはどう頑張ってもカグラに止められるだけと判断して、城門前で様子見をすることにした。



 サクラは滅多刺しにされていたが、不死の呪いで何度も再生しては再び刺されてを繰り返したが、アリアの言うことは否定していた。

 「もう飽きましたニャ」

 そう告げられると、不死の呪いのみ解除された。

 「さようなら」

 サクラは片目を思いっきり刺された。

 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 激しい痛みとともに、内側から不思議な力が込み上げてきた。

 突然、サクラから衝撃波が発せられて、アリアが飛ばされた。

 サクラは体を起こした。

 サクラには無のオーラが漂っていた。

 「アリアの愛は伝わった…けど、それはイザベラを傷つけてるだけ…一方的…」

 無表情でアリアに向かって言った。

 「うるさい!うるさいうるさい!」

 完全に我を失っていた。

 サクラは少し体を動かすと、アリアの目の前まで移動していた。

 「私がアリアの分まで愛してあげる」

 アリアは驚いて、無言で剣を振り上げて、サクラに向かって振り下ろしてきた。

 サクラはそれを綺麗に避けると同時に、回転した勢いで、アリアの首を切った。

 「大丈夫、なんとかなるから」

 アリアの体力バーが0になったため、「サクラの勝利」とアナウンスが鳴ると、2人の体は戦う前の状態に戻った。

 イザベラが走ってきた。

 「ちょっと!サクラ!アリア!どういうことニャ!」

 遅れてカグラも近くにやってきた。

 「ちょっと色々あってね…」

 「ん?」

 イザベラは困惑し続けた。

 すると、アリアは再び声を上げた。

 「やだ!やだやだ!お姉ちゃんは私のもの!私のお姉ちゃんを取らないで!」

 サクラに向かって剣を突き刺そうとしてきていた。サクラは、とっさの判断ができずそのまま刺されかけそうになっていたが、剣が弾かれる音が鳴った。

 イザベラが大剣でアリアの攻撃から守ってくれていた。

 「アリア、どうしたニャ?様子が変ニャ…」

 「あっ…お姉ちゃん…!」

 アリアは剣を落としてしまった。

 「ごめんなさいですニャ…」

 「許さないニャ」

 アリアは膝から崩れ落ちた。

 「そっか…」

 アリアはもう片方の剣を取り出して、自分の心臓に向けた。しかし、イザベラは腕を掴んで、投げ捨てた。

 「やめて!どうして止めるの!私にはもう何も残ってな…!」

 「あるニャ」

 イザベラはアリアを優しく抱きしめた。

 「ここに、妹として好きって気持ちがあるニャ!これは誰にも譲れない愛ニャ!」

 明るく微笑むイザベラに、アリアは思わず泣き崩れた。

 「うぅ…お姉ちゃん…」

 アリアはイザベラの胸に顔を埋めて泣いた。

 サクラとカグラも、その光景を温かく見守った。

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