第12話 アリアの狂愛

 朝起きると、イザベラが隣で寝ていた。

 「まったく…まだ寝てるの?まあ、いいけどさ…」

 サクラはイザベラが起きないようにしながら、ベッドから体を起こして着替え始めた。

 「うぅ…」

 遠くから呻き声が聞こえた。

 「どうしたのー?イザベラー?」

 サクラは振り返らず、着替えながらイザベラの状況を確認しようとした。

 「んにゃぁぁ…」

 サクラは着替え終わって、イザベラの近くに来た。

 「頭痛いニャ…」

 サクラはすぐに二日酔いだと判断した。

 「じゃあ、今日はどこにも出かけられないね」

 サクラは薬を買いに行こうとすると、腕を掴まれた。

 「これから薬買いに行くから、大人しく待ってて?」

 「いやニャ…離れたくないニャ…」

 「すぐ戻るから…」

 サクラは内心嬉しくはあったが、さすがに心配が勝って、説得を続けた。

 「私も行く…ニャ…」

 「薬買いに行くだけだから…」

 頑張って説得をして、薬を買いに出かけた。

 確か北東の方に薬屋があったはずだと思って、サクラは北東の方へ向かった。

 白いパネルを開いて、新都ローズ内のマップを開くと、薬屋と右上の方に書いてあったため、そっちに向かって歩き出した。

 日が当たらない通路を歩くと、薬のマークを見つけたため、そこに入った。

 「いらっしゃいませ」

 「すみません。二日酔いに効く薬はありますか?」

 「少々お待ちくださいね」

 店員は頭痛薬関連の場所まで歩いて、頭痛薬を確認させた。

 サクラはそれを確認して、頭痛薬に効くことも確認して、買うことにした。

 サクラは600アークで支払いをして、店を出た。

 来た道を急いで帰ろうとすると、中央の噴水にアリアがいた。

 サクラは無視をしようとしたが、良心が痛むため、声をかけてしまった。

 「あれ?アリアさん?どうしてこんなところに?」

 「あ、サクラさん、ちょうど良かったです。今からお姉ちゃんは私のものって証明しますニャ!」

 その声には、わずかにだが、殺気も感じた。

 「そ、そんなことしなくても、イザベラはアリアのこと見てくれてるよ…?」

 「そういう問題じゃないんですニャ。お姉ちゃんの興味を引く人は近くにいて欲しくないんですニャ。本当は旅仲間になって欲しいって言われた時、お姉ちゃんが本当に遠い存在になっちゃうんじゃないかって不安になったんですニャ…」

 だからあの時悲しい顔をしていたのかとサクラは納得した。

 「安心して…」

 「安心できませんニャ!」

 早くしないと、このままではイザベラの頭痛が増してしまうかもしれないと思った。

 「ごめんね、早くこの薬をイザベラに届けないといけないから、話は後にしてくれない?」

 サクラは店で買った薬を見せて、状況を察してもらおうとした。

 「分かりましたニャ。ではまた後ほど」

 サクラは急いで宿に戻った。

 宿に戻ると、イザベラは大人しく寝ていた。

 「ただいま」

 「おかえりにゃ…」

 いつものイザベラとは違って、すごく元気がなさそうで、サクラは不安になった。

 「あ、水…」

 「…」

 サクラは念のため確認をした。

 「私の水筒の水でもいい?」

 「うん…」

 「口付けだよ…?」

 「問題ないニャ…」

 サクラは白いパネルの収納機能から水筒を召喚して、イザベラに薬と一緒に渡した。

 イザベラは薬を口に含みながら、水筒の水をごくごく飲んだ。

 「はぁ…サクラの口付け美味しいにゃぁ」

 サクラは不意に飛んできた思いがけない発言に噎せてしまった。

 「だ、大丈夫かにゃ?!」

 「う!うん!大丈夫、げほっ!」

 しばらくして、噎せが収まった。

 「あ、そうそう、アリアに話があるって言われて、待たせてるから、少し行ってくるね」

 「…分かったニャ。私はもう少し寝るニャ」

 サクラは宿を出て行った。

 「サクラ…無事でありますように…」

 イザベラは回復に努めた。

 宿を出ると、アリアが待っていた。

 「さあ、話の続きをしましょう」

 アリアに招かれるままに城門前まで来た。

 「お姉ちゃんは渡しませんニャ!」

 アリアは双剣を逆手持ちで構えた。

 「イザベラは私が大切にするから、ね?だから落ち着いて?」

 「大切な人が取られようとしてるのに、落ち着けるわけないですニャ!」

 サクラは半ば説得には諦め状態だった。

 「お姉ちゃんをかけた決闘をしましょう」

 アリアは白いパネルを操作して、模擬戦の承認をしに来た。

 サクラはここで否定したら、イザベラはもう近くには来ないと思った。そのため、迷わず承認を押して、アリアと同じように、双剣を逆手持ちで構えた。

 数秒後、戦いの幕が開かれた。

 「勝負!」

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