第1章 再び記憶を求めて   第1話 初めての討伐

 光歴2025年 5月26日 月曜日

 新都ローズという、最近新しく、白いパネルを最大限活用する国という名目で建国された国にいた。

 サクラは、酒場ギルドの建物内でスライムの討伐依頼を受けた。これまで防衛のために軽く抜いただけだった剣を、自分の意志で握るのは初めてだった。それまでは、お使いなどの依頼を受けていた。

 「…よし、やるしかない」

 サクラは酒場ギルドを出て、外に出た。城門前まで続く街道には、商人や通行人の声、馬車のきしむ音が響いていた。

 城門前に到着すると、スライムが1体、姿を現した。透明なゼリー状の体が光る。サクラは深呼吸して、ぎこちない構えのまま剣を振った。斬撃はスライムに届いたが、一撃が浅くて、すぐに体は元の形に戻った。

 「ちっ…やっぱり簡単にはいかないか」

 小さく舌打ちをしながらも、冷静に観察した。スライムの体の奥に小さな核があることに気づいた。

 そこへ剣を突き刺すと、スライムは爆散して、半透明の液体が飛び散った。服や髪にもかかって、思わず嫌悪感を示してしまった。

 「うわっ、最悪…!」

 サクラは、戦闘の過酷さを肌で感じながら、液体を集めて納品用に確保した。

 任務を終えて、ギルドへ報告に戻ると、報酬を受け取って、安堵の息を吐いて、酒場を後にした。

 まだ16時と早いため、夕食には少し早かった。街をぶらぶら歩きながら、商人や旅人の噂話に耳を傾けた。

 「聞いたか?超級ハンターが、超級クエストの竜討伐に挑んで、ぎりぎりまで追い詰められたんだってさ」

 「そしたらその瞬間、どこからか現れた小柄なフードの子が、短剣一振りで竜を無傷のまま瞬殺したらしいぞ」

 「それに、猫のしっぽが少しはみ出てたって話も聞いたことがある」

 サクラは小さく笑みを浮かべた。

 「すごすぎる…」

 自分はまだまだだ、と胸の奥で実感した。信じられない話だと思いながらも、どこかワクワクする気持ちも湧いた。噂を頭の片隅に流しつつ、自分の足元に集中し直した。

 5時になって、空腹が我慢できなくなった。今日は特別、初討伐記念として酒場でローストビーフを注文した。香ばしい肉の香り、柔らかさ、噛みしめるごとに広がる旨味。

 サクラは1200アークを支払って店を出た。

 街灯が周囲を淡く照らしていた。

 宿へ着いて、今日の経験を振り返って、初めて自分の意思で戦ったことの重みを胸に刻んで、サクラはベッドに横たわった。

 こうして、彼女の討伐者としての一歩目が、刻まれたのだった。

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