記憶喪失の記憶を求めて

うたたねちゃん

第0章 初めての記憶干渉

光暦2017年 5月20日 土曜日


 少女が目を覚ますと、そこは森の中だった。

 腰には二振りの短刀。

薄い金色の髪が、背中まで静かに流れている。

「……私は……誰?」

 声に出してみて、はじめて気づいた。

思い出そうとしても、何一つ浮かばない。

 少女は立ち上がり、森の中を歩き始めた。

 太陽の光は木々に遮られ、小鳥の声と獣の気配だけが満ちている。

 やがて、小さな広場に出た。

 その中央で、ひとつのクリスタルが宙に浮いていた。

「……なに、あれ……」

 理由は分からない。

 それでも少女は、引き寄せられるように手を伸ばしていた。

 触れた瞬間、視界が白に染まる。


 声が、聞こえた。

男性と、女性の声。

「……サクラ……」

 反応しようとしたその瞬間

光は消え、森の静けさが戻っていた。

クリスタルも、もうそこにはなかった

「……サクラ……」

 それが自分の名前だと、なぜか分かった。

「……私は……記憶喪失……」

 少女、サクラは、再び歩き出す。


自分が何者なのかを探す旅へ。

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