第2話 天真爛漫な猫耳の少女
翌日、サクラは昨日と同じく討伐依頼を受けて、城門前へ向かった。今日の任務はスライム3体の討伐だった。
城門前でスライム3体を発見して、サクラは、ぎこちない構えで剣を構えた。
遠くから、轟音が聞こえた。目を凝らしてみると、遠くで、猫耳の少女が大きいハンマーを振り下ろして、スライムを一撃で潰していた。
サクラは奇妙なものを見る目でしばらく様子を眺めていたが、すぐに視線をスライムへ戻した。
猫耳の少女が、一息ついて周囲を見渡すと、サクラを発見した。
「何してるのニャ?」
猫耳の少女には、あまりに倒すのに時間がかかっているサクラが疑問に思えた。
「まさか、スライムで国を乗っ取る気かニャ?」
猫耳の少女はそう思って、サクラを止めることにした。
サクラは慎重に距離を取って、切りかかろうとしたその時、上空から大きな影が落ちてきた。猫耳と尻尾をつけた小柄な少女がハンマーを振り下ろして、サクラとスライムの間に入ってくると、スライムは、衝撃と風圧で飛んでいってしまった。
サクラは驚きと同時に、剣を構え直した。
「君、スライムで国支配しようとしてるニャ?」
サクラには、何を言っているのかさっぱり理解できていなかった。
「え?そんなわけな…」
「そんなの私が許さないニャ!」
猫耳の少女は、サクラの言葉を遮りながら、敵と判断して、ハンマーで攻撃を仕掛けてきた。
何度も振り下ろされるたび、サクラはぎりぎりのタイミングで避けて、後ろへ飛び退いた。
「当たれニャ!」
少女が叫んだ。
「え、無理」
とあっさり返した。
少女は怒りを露わにして、ハンマーを頭上に掲げた。舞い上がって、振り下ろす瞬間、力強く声を上げた。
「堕天龍・槌!」
気づいた時には目の前まで飛んできていた。
「…っ?!」
サクラは間一髪で避けた。少しでも遅れていたら、天に召されていただろう。
少女は無言で2度目の攻撃を仕掛けたが、サクラは冷静に避けた。白いパネルを開いて、スキルの存在を確認すると、すぐに念じた。気づけば剣が少女の首筋ギリギリに迫って、少女はその場で気絶した。
サクラは息を整えて、倒れた少女を抱えた。
サクラは、何か忘れている気がしたが、気にしないことにした。
2人は酒場へ戻ってきた。受付のカウンターには、猫耳の受付嬢がいて、サクラの抱えてる猫耳の少女を確認すると、近くのテーブルへ誘導した。猫耳の受付嬢は、深く頭を下げて、静かに言った。
「本日は、私の姉を連れ戻してくれて、ありがとうございますニャ」
どうやらこの猫耳の少女は、依頼を受注した後、期間内に依頼完了の報告をしなかったため、行方不明という扱いになっていたらしい。
しばらくして少女が目を覚ましたが、まだサクラを悪い人だと思っていた。猫耳の受付嬢と一緒に説得を続けると、猫耳の少女は謝って、何でも言うことを聞くと約束した。
「自分の記憶を探す旅に同行してほしい」
サクラはそう頼むと、
「そんなことでいいのかニャ?もちろんニャ!」
猫耳の少女は快く承諾して、耳を揺らして、しっぽを振っていた。
猫耳の受付嬢はそのやり取りを見守りながら、どこか寂しげな表情を浮かべていた。
夜、3人は酒場の日替わり定食でナポリタンを食べた。食事を終えて宿へ戻ってきた。
2人は寝る前に改めて自己紹介をした。
「私はサクラ。さっきも言ったように、記憶喪失」
猫耳の少女も笑顔を崩さずに自己紹介をした。
「私は、カカオ村から来た、イザベラ・ココナッツ!それで、今日一緒に夜ご飯食べた時にいたのは、私の妹のアリア・ココナッツだニャ!よろしくニャ!」
サクラとイザベラは軽く笑い合った。
静かに夜が更けて、2人は眠りについた。
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