第3話 感動の再会(とはいかない)③

 店は歩いて15分ほどのところにあるらしく、2人並んで歩く。


の僕は、斑鳩いかるが 結弦ゆづる大学4年の21歳。」


「俺は来渡らいと 勇希ゆうき大学2年の20歳」


「へ〜今世もなんだ。そして今世は2学年下なのか〜今までずっと同じ年だった人が年下なのちょっと不思議だよ」


「2歳なんて誤差だろ。年上ぶるなよ」


 二人で今世の自分について紹介しながら歩いていく。見た目や性別が変わってしまってもルカはどこまでもルカだった。話し方、笑い方、前世との共通点を見つけるたびに安心する。


「というかなんであんな感じの店でバイトしてたんだよ」


「ん?コンカフェで働いてる理由?それはバルドがオーナーだから。彼に頼まれてさ」


「バルド!?お前バルドにももう会ってるのか?」


「うん。というか君以外の皆会ってるよ。君が最後。皆君を探してた」


「…」


 今世の内に会えたらなとは思っていたがとっくに俺以外は集まっていたとは思わず驚いて固まっているとルカが俺の顔を覗き込む。


「もーそんな顔しないでよ。今日君に会えたことは皆んなに伝えてあるから。近々集まろうよ」


 そう言いながら俺の左手を取った。


「ねぇ、話は戻るんだけどさ、僕結構可愛いと思うんだよ。コンカフェの店長に働いてって頼みこまれる程度には」


「おぉ…」


 先ほどまで前世と変わらない様子だったのに、ルカの雰囲気がまた変わり始めた。今日何度も見せられるルカなのにルカじゃない雰囲気を俺は少し恐ろしく感じていた。


 ルカとはずっと一緒にいて、コイツのことは何でも知っている気になっていたのに、急に別人になってしまったようで。当然今世のルカの21年間の事は何も知らない。けれども今までのルカからあまりにもかけ離れた様子を見る度、この20年間探し続けたルカはどこにも居なかったのではないかと思わされてしまう。


「僕女の子になったんだよ?何か言うことない?」


 握られた左手の指にルカの指が絡まり、きゅっと握り込まれる。体も寄せられてピッタリと上半身がくっつけられた。


「っちょ急にどうした。言うことって何だよ」


 らしからぬ様子に思わず体を捩り、慌ててしまう。


「も〜何って君が言ったんじゃないか。忘れたの?」


 ルカが体を更に密着させて耳元で囁くように言った。唇が少し耳に障りこそばゆい。男友達のルカが跡形もなく消えてしまい混乱と動揺心臓がありえない音で脈を打っている。


「だから何を!!」


「君、言ったよね、お前が…」


 ルカの言葉が急に詰まった。ふと視線を下げてルカの方を見ると知らぬ間に右手まで取られていた。そしてこいつは手を掴んだまま俺の指を凝視して固まっている。そして絞り出すように声を出して俺に尋ねた。


「この指輪ってさ…。なんの指輪…?」


「え…?ペアリング、彼女との」


「彼女…?が?いるの…??」


 伏せていた顔をあげて信じられないものを見るように目を見開き、震え声で尋ねてくる。


「…?おう」


 ルカの質問に改めて返事をした。するとバチンと大きな音と共に頬に強い衝撃が走る。


 目の前の女に平手打ちをされたのだ。今日初めて会った女…もとい、前世の親友に。


「ライト…。君がそんなに自分の発言に責任を持てない人だとは思わなかったよ」


 ルカは目に涙をためて俺を睨みつけながら言った。


「言ったよね“お前が女だったら結婚してた”って!」


 金切り声で、今までのルカからは想像もできない様子だった。これはタチの悪い悪夢ではないかと思えてならない。しかし、頬の痛みが遅れて主張してきてこれが現実であることを伝えてくる。


 俺が…?親友のお前に女だったら結婚してたとか…?言ったのか…?必死に前世の記憶を掘り返すが全く身に覚えがない。


「もう、いい…」


 そう言いながら踵返し、ツカツカと俺を置いて歩いて言ってしまうルカの後ろを追いかける。


「ちょっと待てよ。焼き鳥行くんだろ」


 その一言にバッとこちらへ振り向きぼろぼろと涙をこぼしながら言った。


「行けるわけないだろ!こんな裏切りったらない!」


 そう言うなりルカ走り去ってしまった。こんなにも感情的になったルカは、前世では一度も見たことなく。呆然としてしまう。かつての親友とはいえど、知らない女としか思えない奴を追いかける勇気が俺には無かった。


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