第37話 一章エピローグ

「って、ことでお疲れー♪」


 ギルドカフェのテーブル席で、玲奈の音頭に合わせて俺達はそれぞれビールとジンジャーエールで乾杯をした。


「――っぱはぁー、スカッとした後は、やっぱコッチよね!」


 仕事終わりに一杯いくように玲奈は良い飲みっぷりだった。


「玲奈、はしたないわ」


「良いじゃない別に。沙耶だってスカッとしたでしょ?」


「まあ、否定はしないけど」


 小さく笑って沙耶も一口飲んだ。


 ダンジョンで『ワイルドウルフ』への制裁の後、彼等を引っ張って地上に帰還した。


 そのままギルドに引き渡したので、今頃は裏で取り調べを受けている筈だ。


 殺人未遂の現行犯、恐喝、名誉棄損等々が重なり、情状酌量の余地も無い。罪状はそれなりに重いものとなるだろう。


 また、『フェアリー』もギルドから今回の『私刑』に対して、厳重注意を受けた訳だが、玲奈には些細な事だった。


 何故なら、それ以上に良い事があったからだ。


「それに、さっきのライブ配信で私達も遂に動画サイトの日間ランキングで一位よ? 登録者数もグングン増えてるんだもの、機嫌も良くなるわ」


 配信冒険者にとって、サイトのランキングに載る事が目標の一つでもある。


 そしてこの大バズりで『フェアリー』についた噂の払拭となる筈だ。


 アンチや荒らしが完全に無くなる事は無いだろうが、安易に二人に近づく不埒者は少なくなるだろう。


「でも、玲奈の機嫌が良いのはそれだけじゃないでしょ?」


 つまみに頼んでいた唐揚げを摘まんでいると、自身へのご褒美のジャンボなパフェをつつきながら沙耶は小さく笑った。


「何よ? 沢山ギフト貰ったって事? 確かにあれはウハウハね」


 玲奈も上機嫌でパフェを味わっていると、沙耶はクリームを一すくいしながら。


「先生が私達の為に本気で怒ってくれたからでしょ」


「ん?」


「ん゛っ、ごほごほっ――。べ、別にそんなことないですけど!?」


 沙耶の言葉に、俺が目を丸くすると、玲奈は咽りながらも抗議する。


「なんだ。そうだったのか」


「だから、違うって言ってるじゃない!」


 俺はテーブル端の紙ナプキンを取り、玲奈に渡す。


 軽口を言いながらも、思い返すと少し気が滅入った。


「――けど、あれは少し自分でも意外だったよ」


 自嘲が漏れる。


「この歳になると、感情に流されて怒るなんて中々無い事だったが、あの時は歯止めが利かなくなる所だった。――アイツの言う通り、実際大人げないな」


 俺も『ワイルドウルフ』の三人に少しばかりお灸を据えてやるつもりでいた。


 玲奈と沙耶を守る為の戦いの筈だった。


 だが、最後は自分の怒りをぶつけただけだった。


 良い大人のする事では無いだろう。


「――別にそんな事、無いんじゃない?」


 玲奈がポツリと呟いた。


「誰かの為にそんなに怒るって事は――それだけ、大事だってことでしょ」


 そう続ける彼女と一瞬目があって、プイと視線を逸らされる。


 ――その顔には赤みが差していた。


「ね? たまには大人げないのも良いんじゃないかしら」


 沙耶の微笑み。


「そうか。そうかもしれないな」


 それだけ、彼女達の存在が俺の中で、大きくなった証拠なのだろう。


「ともあれ、二人が無事で本当に良かったよ」


「――っ。はい! もう、この話は終わりよ! お、わ、り!」


 俺が小さく笑うと、玲奈は顔の熱を冷ます様にジンジャーエールを飲み干した。


「ほら! それより、次の動画の企画を考えるわよ!」


「え、もうか? ついさっきまで大立ち回りだったんだ、流石にしばらく休みで良いんじゃないか?」


 眉を顰める俺に、玲奈はビシッと指を突き付ける。


「何言ってるの、全然休んでる暇なんか無いわ!」


 そして、ウィンクをして見せた。


「たった一回の人生なのよ? 思いっ切り、楽しまなくっちゃ!」

 



◇あとがき◇

明けましておめでとうございます。


そして、ここまで、お付き合い頂きありがとうございます。

これで一章は完結となりました。

楽しんで貰えたなら幸いです。


また二章も続けて行きたいと思います。

更新は一章よりも、ゆっくりになると思いますが引き続き、お付き合いして貰えたら嬉しいです。

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