第9話 お泊りにもついてくる
「それじゃ、二人ともまた後でね~」
学校に着くと、美月さんは二年の教室へ、俺と隼人は一年の教室に行った。
今日は金曜日。
今日を乗り切れば週末が待っている。よし、頑張ろう。
特に予定などがあるわけではないけど、学校に行く必要がないだけで学生の俺たちにとっては天国のような期間なのだ。
もしかしたら、美月さんとどこかに行くっていう予定ができる可能性もあるし……。
そんな妄想を考えていたのだが――。
「なあ、今週末って暇だったりする?」
隼人がそんなことを聞いて来た。
まあ、特に予定もないし、どこの誰よりも暇だけど。
「ああ、暇だよ。もしかして、遊びの誘いか?」
「遊びっていうか、今日、俺ん家に泊まりに来ないか?」
「え、いいのか?」
なんとお泊りの誘いだった。
暇な俺にとっては断る理由もない。
「ああ、珍しく今週末は練習も試合もないんだよ」
「そうなのか。それなら、行こうかな」
「よっしゃ、決まりな! 放課後に家から着替えだけ持って俺ん家に来てな!」
「おう、分かった」
突然、予定が出来た。
となると、放課後に美月さんの夕飯を作り置きしておかないとな。そうでもしないと、あの人はカップ麺で済ませようとしそうだし。
何も言わないのはマズいから、あとで連絡だけ入れておこう。
♢
放課後。
今日も今日とて頭を使う授業が盛りだくさんだったので、隼人は意識を保つので精一杯のようだ。
頭からプシュー、と煙が出ている幻覚さえ見える。
「隼人、大丈夫かー?」
「…………無理ぃ」
「おーい、しっかりしろ~。俺がお前ん家に行くまでには元気になっとけよ~?」
「お……おう……任せろぉ~」
「本当に大丈夫かよ」
隼人は任せろと言いながらもフラフラとした足取りで白目をむきそうな状態だった。
まあ、少し時間が経てば隼人も回復するだろう。
とりあえず、急いで家に帰って泊まる準備と、美月さんのご飯を作るか。
今日はカレー系統の料理は避けるつもりだ。
連日カレーは流石に飽きるだろうし。
♢
「よし、着いた」
家に着き、玄関のドアを開けると、何故か美月さんが腕を組みながら仁王立ちで待ち構えていた。
一体これは、どういう状況なのだろうか。
「えーっと、美月さん……?」
「私も行く」
「え……?」
「私も一緒に行く」
一緒に行く?
何のことだ、と思ったがすぐにハッとした。
もしかして、一緒に隼人の家――美月さんの実家に行くと言っているのか!
「一緒に行くって、もしかして美月さんの実家にですか?」
「そう。今日、泊るんでしょ?」
「まあ、はい」
「だったら、私も行くよ」
いや、なんでだよ。
「えーっと、作り置きなら用意しますから、その辺の心配はしなくてもいいんですよ?」
「そうじゃないよ。流星くんと一緒じゃなきゃ楽しくないし、寂しいのっ!」
「え、あ……そういうことですか……」
「うん。だから、一緒に行く」
そういうことだったか。
一人だと寂しいから俺と一緒に行く、と。
隼人も変な疑いはしないか。週末だから姉が帰ってきたとしか考えないよな。
それなら、問題はないだろう。
俺が作り置きを用意する手間が省けたし、むしろ良かったのかもしれない。
そうポジティブな考え方をするよう努めた。
「それじゃ、俺が着替えの用意したら行きますか」
「うんっ!」
明らかに上機嫌になった。
一人でいるのが、本当に苦手なのかもな。
また新たに美月さんの知らない一面を知ることが出来た。
急いで自分の部屋に行き、着替えを用意する。
(そういえば何泊するか、聞くの忘れてたな)
一泊か、二泊なのか分からなかったので、一応二泊分の着替えをバッグに詰めた。
「準備できましたよー」
「オッケー! それじゃ、行こうか!」
家中の電気がちゃんと消えているか確認をしてから、美月さんと共に家を出た。
「ふふふ~んっ♪」
美月さんはスキップをしながら鼻歌まで歌っている。
相当、上機嫌のようだ。
「嬉しそうですね」
「まあねっ。両親に流星くんのことを紹介するのが楽しみなの!」
「えっ……!? マジ……ですか?」
どうやら美月さんは両親に俺のことを紹介するらしい。
恐らく、今一緒に暮らしている同居人として紹介するのだろう。
そう考えると、急に緊張してきたんだけど。それに、両親に伝えたことによって隼人にバレたりしない……?
それが一番、不安だ。
「安心して。両親には仲の良い男友達とシェアハウスするってことは伝えているから」
「よく許可でましたね」
「んー、私の中の良い人なんだから大丈夫でしょってことで即オーケーでたよ」
多分、弟だけじゃなくて両親も美月さんに対して相当甘い。激甘でしょ。
普通ならもっと色々心配するでしょ。
弟と同じく両親も美月さんの言っていることが正しいみたいな考え方しているのかもしれないな。
そのお陰で俺は美月さんの一緒に暮らせているわけなんだけど。
「それなら良かったです……じゃなくて! 美月さんの両親に俺を紹介しちゃったら、隼人にバレちゃいません?」
「そこの心配をしてたのね。私の両親、私が絶対に言わないでって言うことは、絶対に言わないから。だから、安心していいよ」
「そう、ですか。それなら、安心ですね」
そんなことを話しているうちに気が付けば、目的地――美月さんの実家に辿り着いた。
家の外では、隼人が満面の笑みで手を振りながら待っていた。
二人で来たのに気づくと、隼人は一瞬、眉間にしわを寄せたが、美月さんが穏やかな笑顔を向けるとすぐに普段通りの隼人に戻った。
恐るべし姉の力。
――――――――――
【あとがき】
どうも、作者です。
数日前から体調を崩していましたが、熱は下がり、鼻水も止まりました!
残すは喉の痛みのみ!
皆さんも体調管理には十分お気を付けください。
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