N極的存在とS極的存在
困惑するチャーリーをよそに、船乗りは言った。
「いいか、宇宙飛行士の
「はあ……。SとMじゃなくて、SとNなんだな。いちおう聞くが、人間はどっちなんだ?」
「超S極的存在に決まってんだろ」
もう片割れがMだったら人間はたいへんサディスティックな存在ということになる。なるほど、環境破壊をして回る人間に相応しい照合かもしれない。だが残念ながら、相方はN。Nが
「まあまあ。まずは一緒にN極とS極を考えようじゃないですか。これは船乗りがもっとも詳しい」
「そうなのか?」
チャーリーが目をまばたかせれば、「Yes」と船乗りが
「その偉大な発見をしたのは、ある船乗りだったんだ」
遠い遠い
「ストップ。
「船乗りだって色んなのがいる。船乗りは生まれながらに母なる大地の多くを覆う海に生きる人間だ。考え事だってするだろうよ」
きっぱりと言い切る船乗りに、チャーリーは口をつぐむ。確かに、宇宙飛行士にだって呪詛返しの研究家がいるのだから、
「……わかった。話を続けてくれ」
「ああ、もちろんだとも」
するとどういうことだ!
彼は必ず同じ方角へ頭を向けた状態で目を覚ますのだ。薄い毛は必ず頭と同じ方向へ逆立っている。その方角は船乗りたちの道しるべ、
これがN極因子(以降、N極と省略する)の発見である。N極のNは「なんということだ!」のNである。
「え。
「そうだ。「なんということだ!」のNだ。そしてそのN極の象徴
「ん。待て。おれはつい先日まで、
「そう。あんたは世にも珍しい、N極的存在の人間なのさ。だからきっと、この事態を解決し得るゆいいつの存在でもあるんだろうが――とりあえず、話を戻そう」
ふう、と息をついてから船乗りは続ける。
「ちなみに磁石はこのふたつの因子を同時に揃えた稀有な物質の総称なのだが、N極的存在は、高い心的エントロピーを好むんだ」
「なんだって?それって……」
驚きで言葉を詰まらせたチャーリーに応じたのは、武器商人だ。
「そう。銃と一緒なんですよ。
つまり――S極的船乗りがN極的
N極的存在とS極的存在の惹かれ合う力は絶大だ。
重力は宇宙のなかで存在する力のなかでは最弱とされるが、確かに最弱である。N極とS極の惹かれ合う力に振り切られてしまうのだから。惹かれ合い過ぎて、時おり船乗りが道間違えを起こしてしまうくらいだ。
船乗りは決して北へ行きたいというわけではなく、
今度は船乗りが言葉をつぐ。
「水底で潜伏していた船乗りよりはN極的で、
纏めるとこういうことである。
N極的存在である銃がS極的存在である人間へ向かう。
S極的人間の頭が銃になり、銃ゾンビになる。
S極的(ちょっとN極)銃ゾンビをN極的存在である
N極的存在であるクラーケンがS極的(ちょっとN極)銃ゾンビを出迎え、陸地ごとばくりと食う。
この連鎖によって何が起きたのか。武器商人はその結果へ眼差しを向ける。
「ミスター・チャーリー。これがその結果です。生き残っているのはもはや海と銃ゾンビとクラーケン、そして我々のようなほんの少しの人間だけということですよ」
水面にはゆらゆらとクラーケンの影がひしめき、わずかな陸地には銃頭のゾンビがうろついている。
そしてZになる 花野井あす @asu_hana
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