第37話 水属性の痕跡──鑑定士の見解
ギルド奥の静かな部屋。
そこへ年配の鑑定士が現れた。
白い手袋をはめ、アキトの核を慎重に観察する。
「ふむ……確かに大きい。
だが……大きいだけではないな」
鑑定士は核の表面に手を当てた。
ぴくり、と核が小さく反応する。
「これは……水属性の魔力だ。
水を“外部から吸った”痕跡がある」
アキトの背筋に電流が走る。
「やっぱり……水で……大きく……?」
鑑定士は頷いた。
「スライムは液体を取り込んで成長する。
特に“魔力を帯びた水”を浴びると、
核まで一気に膨張するのだ」
受付嬢が息を呑む。
「でも、こんなに魔力反応が残るなんて……
これ、本気で水属性の魔術を当てたってことですか?」
アキトは小さく答える。
「……当てた、というか……
霧みたいなのが飛んで……それで……」
鑑定士は目を丸くした。
「初級者が……?
水属性はそもそも稀少だ。
火より発動が難しく、形が不安定。
霧になっただけでも十分才能がある」
アキトは自分の手を見る。
(……霧でも……水扱いになるのか)
鑑定士はさらに続けた。
「そして……この核。
水の影響で魔力量が2.5倍になっている。
通常スライムとは別物と言っていい」
受付嬢がアキトの方を見る。
「本当に……昨日、これをひとりで?」
アキトは照れくさく頷いた。
空気が、少し変わる。
「……才能あるかもしれんな、若いの」
鑑定士のその一言は、
アキトの胸の奥に静かに残った。
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