第36話 異常な核


朝。

ギルドの扉が開くと同時に、アキトはすぐに受付へ向かった。


昨日の“巨大スライム核”を抱えたまま。


「いらっしゃい。……えっと、今日は素材の売却?」


受付嬢の女性が笑顔で声をかけてくれた。


アキトは袋を差し出す。


「これ……昨日、倒したやつです」


受付嬢は軽く受け取り──

次の瞬間、目を見開いた。


「ちょっ……!? え、これ……大きくない!?」


周囲の冒険者までちらちら振り向く。


アキトは肩をすくめる。


「ちょっと……水を当てたら……多分、その……」


「水!?」


受付嬢が固まる。


核を持ち上げ、光に透かす。


「密度が……おかしい。

普通のスライム核より……二段階は重いです。

これ……誰か鑑定士呼ばないと……!」


すぐさまギルド職員が数名集まってくる。


「新人が持ち込んだって?」

「これ、初級者が倒すサイズじゃねぇぞ……」

「核の魔力量が……上級スライム級だ」


アキトは居心地悪そうに立っていた。


(……そんなに変なのか、これ)


受付嬢が申し訳なさそうに微笑む。


「すみません、少しお時間いただけますか?

完全に……普通じゃない核なので……」


そう言って、特別室に回されることになった。


アキトの胸が静かにざわついた。


(……やっぱり、水のせい、か……?)

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