第24話 小川の光と少しの成長

# 第24章 小川の光と、少しの成長

小川沿いの道は、ゆるやかな朝日を浴びてきらきらと光っていた。


「……気持ちいいな。こういう依頼も悪くない」


アキトは深呼吸しながら、

指定された“水辺の薬草”を探して歩き始めた。


草の影からは水滴が光り、

小さな魚影が泳ぐ。


(今日は、戦闘も採集も、自分のペースでやれる……

魔術の練習にも丁度いいはず)


足元の土は柔らかく、

小川のせせらぎが静かに耳へ届く。


アキトは地図を広げながら薬草を探した。


「えっと……葉が丸くて、茎が赤い……

あ、これかな?」


しゃがみ込み、根元から丁寧に摘み取る。


柔らかい香りが広がった。


「おお……これだ。意外と簡単に見つかるな」


最初の薬草をポーチへしまったとき――


草むらがガサッと揺れた。


「……ん?」


ぴょこっ。


丸い耳が飛び出した。


「ホロネズミ……!」


小型魔物ホロネズミ

小さいけれど、素早い。


アキトは棒を構えながら一歩下がる。


「ちょっとだけ……戦闘練習させてもらうよ!」


ネズミがすばやく突っ込んでくる。


アキトは呼吸を整え、

胸の奥で“火のイメージ”を膨らませた。


(昨日より……もっと集中して……)


「火……熱……灯れ!」


《ファイアボルト》


小さな火球が一直線に飛び、

ホロネズミの足元で爆ぜた。


ネズミは驚いて跳ね、ふらりと倒れる。


「……いけた!」


昨日よりも“狙いが安定”している。

魔力の流れが掴みやすくなっていた。


ホロネズミの体から小さな“白い毛”が落ちている。


リオの説明を思い出す。


(これ、魔術触媒で需要あるんだよな……

確か1束で3Gくらい……!)


丁寧に拾ってポーチへ。


(魔法の精度、少し上がってる……

レベル5の効果、ちゃんと出てるんだ)


アキトは気を良くして採集を再開した。


──しばらくして、小川の近くに見慣れない光が見えた。


「……あれ?」


水面近くの石の影が

淡い青色に光脈のような模様を浮かべている。


手を伸ばすと、

石がふわっと温かさを返した。


「……光石? いや……魔力石……?」


小型の魔力石の欠片ミナライト片

──水属性の魔術触媒として使われる、そこそこ貴重な石だ。


「これ……街なら10G以上で売れるやつだ……!」


アキトは驚きながらも石をしっかり包んでしまい込む。


薬草もそこそこ集まり、

ホロネズミの素材、

そしてミナライト片まで手に入った。


帰り道、小川の水面がさらりと揺れる。


(……今日だけで結構成長できた気がする……

魔術も、採集も、戦闘も……)


アキトは笑顔で空を見上げた。


新しい一歩を、確かに踏み出せている。


「よし……ギルドに戻ろう!」

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