第22話 村で聞いた噂と、帰り道の影


荷馬車は森を抜け、小さな木柵の村──リナ村へと到着した。


「ここが目的地、リナ村じゃ」


村人たちが駆け寄ってきて、ハークの木材を次々と受け取っていく。


「助かりました!」

「今日必要だったんです!」


アキトとリオも荷下ろしを手伝い、

村はにわかに活気づいた。


その時、村の古老らしき老人が近づいてきた。


「お前さんら、冒険者か」


「はい! ギルドから護衛で来ました」


古老は北を見つめながら、ゆっくり口を開く。


「……最近、このあたりでも“魔力の揺れ”を感じるんじゃよ。

風鳴き洞の奥……昔とは違う」


アキトは思わず息をのんだ。


(やっぱり……洞窟の奥、変なんだ……)


リオも頷く。


「昨日、俺たちも妙な光苔を見ました」


古老はアキトをじっと見る。


「坊主、レベルはいくつじゃ」


「……4です」


古老の目がわずかに細くなる。


「ほう……なら無理はするな。

お前さんは“魔力が薄い”」


アキトの心臓がどくりと跳ねた。


(……やっぱり……)


だが古老は優しく続ける。


「薄い魔力ほど、伸び代が大きい。

焦るんじゃないぞ」


胸に温かさと不安が入り混じったまま、

帰路についた。


──草原への帰り道。


夕日が赤く染まり始めた頃、

リオが急に手を上げた。


「……アキト、止まれ。前に何かいる」


道の先に黒い塊がゆらりと揺れる。


「魔物……?」


「気をつけろ」


塊は突然跳ね上がった。


「グルルッ!!」


影属性の小型獣影獣(シャドウパピィ)


アキトは棒を構える。


「ハークさん、馬車の中へ!」


影獣が飛びかかる。

アキトは直感的に詠唱に入っていた。


「火……熱……灯れ!!」


《ファイアボルト》


火の粒が影獣の胸に直撃し、

黒い霧になって消える。


──ポトッ。


残ったのは黒い結晶、**影核**。


リオが拾って頷く。


「影核(シャドウコア)。**6G**くらいになるな」


アキトは丁寧にポーチへしまい込む。


その瞬間、視界の端にウインドウ。


***

《LEVEL UP》

現在レベル:5

HP +2

MP +1

魔力適性 微上昇

***


「レベル……5……!」


「よっしゃ! いいぞアキト!」


──そのまま歩き出したところで、

草むらからぷるん、と音がした。


「アキト、もう一匹!」


「よし……スライムなら!」


スライムは全部で**3匹**現れた。


①《ファイアボルト》

②棒で突く

③もう一度ファイアボルト


魔核が3つ転がった。


「スライムの魔核は**1個4G**だから……これで**12G**だな!」


アキトは小さくガッツポーズした。


(影核6G+スライム核12G……!)


──街に戻る頃には夜が深く、

ギルドの灯りが温かく光っていた。


セリアがほっとしたように笑う。


「おかえりなさい、お二人とも!」


護衛報酬 **45G**

影核 **6G**

スライム魔核(4G×3) **12G**


セリアが計算しながら袋を渡してくれる。


「合計……**63G**になります!」


アキトは深く息をついた。


(元の残金21G

+ 63G

= **84G**)


「……今日も宿に泊まれる……!」


リオが笑って肩を叩く。


「最高の日じゃねぇか! メシ行こうぜアキト!」


アキトは笑って頷いた。


(レベル5……

そして素材もちゃんと拾って稼げた……)


確かな成長を感じながら、

アキトはリオと宿へ向かった。

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