第19話 調査完了


光苔の奥へと続く通路を見つめながら、アキトとリオはしばし立ち止まった。


風の音は弱まり、代わりに“魔力の揺れ”が濃くなる。


「……ここから先は、初心者の調査範囲外だな」


リオの言葉に、アキトも深く頷いた。


「今回は……ここまでにしよう。俺たち、まだ強くないし」


「判断できるのは強さだぞ、アキト」


二人は光苔に背を向け、洞窟を後にした。


(……いつかまた来る。もっと強くなって)


──洞窟出口。


外気が肌に触れた瞬間、二人は大きく息を吐いた。


「うわ……生き返る……!」


「よし、街に戻るか!」


歩き出したアキトだったが、ふと計算が頭をよぎる。


(……あ。今の所持金、4Gしかない……

今日、宿に泊まれない……!)


アキトはリオに振り向いた。


「リオ、帰る前に……スライム倒していい?」


リオは豪快に笑った。


「もちろん! 俺も手伝う!」


──草原。

疲れてはいたが、スライムなら今のアキトにも余裕がある。


ぷるん……


「火……熱……灯れ!」


《ファイアボルト》


魔核が転がるたびに内ポーチへ放り込む。


結局、帰り道で **スライム5匹** を討伐した。


(魔核5個……換金すれば20G!)


──ギルド。


二人が戻ると、セリアが驚いた顔で迎えた。


「おかえりなさい! 本当に……無事でよかった……!」


アキトは調査依頼書と痕跡録音タグを差し出す。

セリアが魔導装置にかけると、青い文字が映し出された。


《風鳴き洞・調査範囲内の魔力痕確認 依頼達成》


「はい、調査完了です。こちら報酬40Gになります」


小袋がテーブルに置かれる。


アキトは続いて、洞窟で拾った素材を並べた。


・洞ウサギの柔毛 ×2(1G ×2) = 2G

・小突起 ×1(2G) = 2G

・洞窟ドレイクの牙 ×2(4G ×2) = 8G

・洞窟ドレイクの爪 ×1(3G) = 3G

・薄皮膜 ×1(7G) = 7G


合計:**22G**


最後に、スライム魔核5個。


5個 × 4G = **20G**


セリアがトータルを丁寧にまとめる。


「では……

調査報酬40G

素材売却22G

スライム魔核20G

合計82Gになります」


「82G……!!」


リオがアキトの背中を叩く。


「やったじゃねぇかアキト! 今日はめちゃくちゃ稼いだぞ!」


アキトは顔が自然にほころんだ。


(82G……!

今までで一番多い……)


セリアが微笑む。


「アキトさんの今の所持金は、以前の4Gと合わせて《86G》ですね」


アキトは深くうなずいた。


「これで……今日も宿に泊まれる……!」


「はい。どうかゆっくり休んでくださいね。

今日のおふたりは、とてもよく頑張りました」


アキトは心からの感謝を込めて頭を下げた。


「……ありがとうございます!」


夕日が差す帰り道、リオが笑う。


「なあアキト、今日はご馳走だな!」


「うん……今日は絶対、贅沢していい日だ!」


二人は並んで歩き出す。


明日へ進むために、

そして初心者から抜け出すために。

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