第16話 風鳴き洞と新たな同行者
# 第16章 風鳴き洞と、新たな同行者
ギルドの掲示板に貼られた紙をじっと見つめながら、アキトは唾を飲み込んだ。
『草原西の“風鳴き洞”調査依頼(報酬:40G)
※初心者可・危険度低』
「……洞窟か」
スライム、ウルフ。
次は“場所”の依頼だ。
胸が少し高鳴る。
依頼書をそっと剥がし、受付へと向かった。
「セリアさん、この依頼……受けたいです」
セリアは紙を受け取り、目を通すと、優しく微笑んだ。
「風鳴き洞……初心者でも行ける場所ですが、気をつけるポイントがいくつかあります」
「気をつける……ポイント?」
セリアは軽く頷き、指を折りながら説明を始めた。
「まず、“洞窟内は風が一定に吹いている”という点です。
風向きが変わらないので、迷いにくい反面……
音が反響して、魔物の位置が分かりにくくなります」
「音が……?」
「洞窟内の風が“鳴く”ように響くんです。
それが名前の由来ですが、初心者の方には少し怖く感じるかもしれません」
アキトの背筋に、ひやりとした感覚が走る。
「でも危険度は低い、と書いてありますよね?」
「ええ。出てくる魔物は弱い小型種です。
ただ、暗い場所や音に慣れていないと、焦ってしまう方が多くて」
(たしかに暗いのはまだ慣れてない……)
そんな不安を読んだように、セリアはそっと優しい声で続けた。
「大丈夫。レベル4のアキトさんなら問題ありません。
それに――」
その時だった。
後ろから声が飛んできた。
「おーい、その依頼受けるのか?」
振り返ると、昨夜の宿で話した青年――リオがいた。
今日も軽い装備に杖を背負っている。
「リオ……さん?」
「風鳴き洞か。あそこ、ちょっと音のせいでビビるんだよな。
初心者だと、ひとりじゃ不安なんじゃないか?」
アキトは苦笑いしながら返す。
「正直……不安です」
リオはにやりと笑った。
「なら俺も行くわ。回復魔術があると安心だろ?」
「え……いいんですか?」
「もちろん。俺も経験積みたいしな。
初心者同士、手を組むのはよくあることだ」
セリアが嬉しそうに頷く。
「お二人なら、きっと無事に戻ってこられます。
アキトさん、リオさん……どうか気をつけてくださいね」
アキトは深く息を吸い、リオの方へ向き直った。
「……よろしくお願いします、リオさん」
「おう。じゃあ行くか、相棒」
アキトはわずかに笑った。
相棒――
そんなふうに呼ばれたのは、初めてだった。
胸の中に、小さな勇気が生まれる。
二人は依頼書を内ポーチにしまい、
ギルドを後にして、草原の西へと歩き出した。
風鳴き洞。
新しい冒険が待っている。
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