第13話 報酬とレベル4、次の依頼
ギルドに戻ると、朝の光が差し込む受付にセリアが立っていた。
アキトを見ると、ほっとしたように微笑む。
「おかえりなさい、アキトさん。無事に戻られて良かったです」
アキトは胸元の内ポーチから魔核を取り出し、机に置いた。
「今回は……全部、自分で持って帰れました」
セリアは魔核を一つずつ丁寧に確認し、頷く。
「六個、確かに受け取りました。よく頑張りましたね」
セリアは小さな袋を取り出し、アキトに手渡した。
「スライム一匹につき4G、合計で《24G》になります」
袋は軽い。
だが、昨日よりも確かに重みを感じた。
アキトはUIの端に光る文字に気づき、そっと確認する。
《LEVEL UP》
LV:3 → 4
HP:20 → 22
MP:5 → 6
「……セリアさん、レベルが上がりました」
セリアは嬉しそうに微笑む。
「おめでとうございます。自力でレベル4まで行ける新人は、そう多くありませんよ」
少し誇らしい気持ちが胸に広がる。
「……これで、少しは強くなれましたか?」
「ええ。体力も魔力も、着実に増えています。
ですが――まだ油断は禁物ですね」
そう言って、セリアは机の引き出しから**銀色の小さなタグ**を取り出した。
四角形で、硬貨より少し重い。
中央に魔導石の欠片が埋め込まれている。
「アキトさん。次の依頼では、これを持って行ってください」
「これは……?」
「“痕跡録音タグ”と呼ばれるものです。
魔物の気配を一定時間、記録する道具です」
タグを軽く振ると、内部の魔導石が青く光る。
「例えばウルフの縄張り付近でこれをかざせば……
その場に残る『ウルフの魔力痕』が自動で取り込まれます。
戻ってきたとき、私たちがそのデータを確認することで、
“本当に追い払った”という証明になります」
アキトは驚いた。
「なるほど……だから、“討伐じゃなくても”確認できるんですね」
「はい。初心者の方が危険な魔物に深追いしなくて済むように、
ギルドが用意した安全対策です」
セリアはもう一枚の紙――依頼書を差し出した。
『草原外れのウルフの追い払い(報酬:30G)』
「ウルフ……狼ですよね?」
「ええ。でも討伐ではなく“追い払い”です。
大きな音を出したり、魔術で威嚇すれば逃げる個体も多いです。
レベル4のアキトさんなら、決して無謀ではありません」
アキトはタグを手に載せ、ぎゅっと握った。
「……これを使えば、俺でも“やった証拠”が残せるんですよね」
「もちろんです。
あなたが安全に帰ってくることが、いちばん大事なんですから」
その言葉に背中を押されるようにして、
アキトは依頼書とタグを内ポーチへしまった。
「……挑戦してみます。
怖いけど……進みたいんです」
セリアは柔らかく微笑む。
「ええ。アキトさんなら、きっとできますよ。
どうか無事で戻ってきてください」
アキトは頷き、ギルドを後にした。
次の一歩へ向かうために。
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