第5話 依頼未達成と再挑戦

# 第5章 依頼未達成と再挑戦

ギルドに戻ると、アキトはすぐに受付嬢のセリアのもとへ向かった。講習のときと同じ穏やかな笑みで迎えてくれる。その顔を見た瞬間、緊張が少しだけ和らいだ。


「おかえりなさい。スライム討伐、どうでした?」


「一応……倒せました。魔術でも、最後はなんとか」


そう言って胸を張りかけたアキトだったが、セリアは首をかしげる。


「では……証拠の魔核は?」


「……まかく?」


「えっ……持ってきてませんか?」


セリアの表情がほんの少しだけ曇る。


「討伐依頼は、倒した“証拠”が必要なんです。スライムの場合は、体が溶けると中心から魔核が残ります。それを持ち帰っていただかないと……」


「……え、えぇぇぇぇ……!? そんなの……聞いてない……!」


「講習の資料に、ちょっとだけ書いてありましたよ?」


「うそ……全然読んでなかった……!」


アキトは頭を抱えた。

初めての依頼、達成したと思ったのに。


セリアは苦笑しながら言う。


「アキトさん……気持ちは分かります。最初は皆さん、忘れるんです。ですが……このままでは“討伐完了”と言えません」


「つまり……」


「ええ。もう一度、討伐に向かっていただく必要があります」


アキトは深いため息をついた。


だが、不思議とやる気は消えていなかった。

魔術で倒せた。

成長を感じた。

なら、もう一度くらいどうということはない。


「……分かりました。行ってきます」


「今度は魔核を忘れないでくださいね。ちゃんと回収しないと達成になりませんから」


セリアは真剣だが優しい声で送り出す。


アキトは拳を握りしめた。


「よし……今度こそ完璧に倒す。魔核も持ってくる」


陽は少し傾き始めている。

だが、まだ明るい。

アキトは同じ草原へ走り出した。


初依頼の再挑戦。

ほんの小さなつまずきだが、それは確かに彼を前へ押し出していた。

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