第12話 闇の世界の仲間たち

 只今の時間は14:30。

 今日の授業はすべて終わった。


 現在の残存HPは19。

 今日はこれから15:30と16:30に、2HPずつ計4HP消費されるがまったく問題ない。

 優木さんのおかげでHPが結構貯まったのだ。

 なんなら明日の貯金すらあるぐらいだ。

 これで明日もつつがなく生きて行けそうだな。



「ゆ、優木さん、また明日!」

「うん、さようなら」

 若干緊張しながら隣の席の優木さんと挨拶し、


「田中君、気をつけて帰るんだよ!」

「ありがとう、高野さん。また明日ね」

 と、高野さんに挨拶を返した。


 九条さんは、もう教室から出て行ってしまったようだ。

 さて、では帰るとしますか。



 俺はご機嫌な気分で校門を出ると、

「お待ちなさい!」

 と、背後から大声で呼び止められた。

 慌てて振り向くと、そこには激怒したご様子の九条さんの姿があった。


 九条さんが、背後からガシッと腕を掴んでくる。

「どうして帰ろうとしているの?」

 九条さんが恐ろしい顔で俺を睨んでるんですけど……


 そうだった。

 昼休み、九条さんが『放課後、校舎裏に来て』と言い終わる前に、俺は『それじゃあ遅いんだ!』って言葉を被せちゃったんだった。


 俺の心の中では、なんとなくウヤムヤになってたけど、九条さんは俺と放課後に会うつもりでいてくれたんだな。

 優木さんといい感じに話せて舞い上がっていたため、すっかり忘れていた。


 俺の方から闇のミサを開こうとか言っておいたくせに、ホント申し訳ない。

 九条さんってば、真剣に俺のことを心配してくれてたのに……


 だって優木さんと喋って舞い上がっちゃって…… って、これ、さっきも言ったな。

 いかん、舞い上がるのもほどほどにせねばならない。


「ゴメン、忘れてた訳じゃないんだ!」

 本当はすっかり忘れていたクセに、全身全霊で言い訳の言葉を口にするが、九条さんはひと言も喋ってくれない。


 九条さんはもう一度学校の敷地内に戻り、無言で校舎裏を目指して歩き続ける。

 もちろん俺も、黙って後をついて行く



 目的地に到着すると、そこには一人の女子と一人の男子が並んで立っていた。

 どうやら九条さんを待っているようだ。


「さあ、我がにえを連れて来たわ」

 物騒なことを言いながら、九条さんが二人の前に俺を突き出した。


 二人の顔をよく見てみると——


 女子は初めて見る顔だ。たぶん他のクラスの人なんだろう。


 男子の方はというと——


 なんと、ウチのクラスの最上位カーストに属すると思われるイケメン男子じゃないか。


「なに驚いた顔してんだよ」

 イケメン男子が不機嫌そうにつぶやく。


「いや…… クラスでふたりが話してるとこ、一度も見たことなかったから」

 事実、九条さんとこのイケメンは別のグループに所属していると思う。


 男がニヤリと笑いながらつぶやいた。

「契約なんだよ」


「え?」


「太陽が出でし時間ときには、決して言葉を交わさぬこと。これがそこにいる九条薫子と交わした闇の契約なんだ」


 なんと! このイケメン男子は隠れ中二病で、しかも九条さんとは闇友ヤミトモだったのか!


 いや、まあそれはいいとして……

 俺は素朴な疑問をぶつけてみた。


「『太陽が出でし時間ときときには、決して言葉を交わさぬこと』って言ったけど…… まだ太陽が出てるよ?」


「夕方はギリでOKなんだ」

 なるほど、そういう設定だったのか……

 これ以上追求するのは、やめておいてあげよう。


「それでお前は九条薫子と、どういう関係なんだ?」

 というイケメンの問いに、


「前世からの宿縁ありし者よ」

 と、九条さんが俺の代わりに答えた。

 なんだよ、さっきはにえ呼ばわりしたくせに。


「ということは薫子、お前ついにアニマジュメッラを見つけたのか!?」

 なんだ? なんて言ったんだ、このイケメンは?


 そんな俺の表情を察したイケメンが、

「ああ悪い。ソウルメイトをイタリア語では、アニマジュメッラと言うんだ」

 と、説明してくれたが……


 わざわざ英語をイタリア語にする必要あるのか?

 二度手間だと思うぞ?


「まだ、そこまでの関係じゃないわ。この男から闇のミサの開催を提案されただけよ」


 そう言った九条さんに対し、イケメンは笑いをこらえながらうなずいた。

 もうひとりの女子はと言うと、とても嫌そうな顔をしてうつむいた。


 この子はきっと、『うわぁ、メンドクサイことになってきた』と思っているのだろう。

 巻き込んじゃって、本当に申し訳ない。


 ここで、イケメンが半笑いのまま、また口を開く。

「よくわかったよ——」

 なんでよくわかるんだ? 俺にはよくわからないが、とりあえず続きを聞こう。

「——そういうことなら、まずは自己紹介させてもらおうか」


 ちょうどいい。俺、クラスで自己紹介してた時は保健室で寝てたから、コイツの名前を知らないんだ。なんだよ、結構思いやりのあるヤツじゃないか。


「俺の名前は、アッボンディオ・アルベルジェッテ——」


 前言撤回だ。どうやらコイツは、あまり思いやりのあるヤツではないようだ。

 どう考えても、こんな名前覚えられないよ。


「——闇の住人にはそう呼ばれているが、教室では高柳純也と名乗っている。お前、クラスで自己紹介した時、教室にいなかっただろ? これを機会に覚えてくれたら嬉しいよ。あ、でも教室で『よう! アッボンディオ!』とか呼ぶんじゃないぞ?」


 もう一度、前言を撤回させてもらおう。

 イケメン改め高柳は意外といいヤツで、ちゃんと常識を持ち合わせているようだ。

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