第11話 優木さんはラノベ好き
九条さんとの
とても教室に入りにくい。
みんながグループに分かれてご飯を食べている中、教室に戻って一人で弁当を食べる勇気がない。
もうちょっと人が減ってから、『俺、今まで用事があったんだ』という空気を
じゃあ、図書室にでも行って、時間を潰すかな。
♢♢♢♢♢
さて、そろそろ教室に戻ろうか。
そう思い、図書室から廊下に出た瞬間、優木さんとバッタリ出くわした。
周囲に友だちの姿はない。
優木さん一人きりだ。
驚いた表情を浮かべた優木さんだったが、意を決したように、
「ちょ、ちょっといいかな!?」
と、教室では聞いたことがない、ちょっぴり大きめの声をあげた。
そして、
もちろん俺も、緊張しながら彼女の後を追う。
目的地に到着した優木さんが、勢いよくこちらへ振り向いた。
なんだか顔が赤いような気が……
あれ?
ひょっとして俺、こここ告白されるのか!?
ついに俺にも、彼女が出来るのか!?
俺の心臓がとても激しくビートを刻む。
息が苦しくてたまらない。
そんなことを考えていると、優木さんのカワイイ唇が少し開くのが見えた。
唇のスキマから、美しい音が聞きえて来たと思ったら——
「た、田中くん、あのね……」
キタアアアーーー!
僕も優木さんのこと、カワイイと思いますよ!
さあ、どうぞ遠慮なく、続きの言葉をプリーズ!
「田中くんって、その…… め、『めがふら』が好きなの!?」
「……………………え?」
あれ? 俺今、告白…… されてないような……
「だって…… 高野さんに、『ぐーてん・だーまんこってす』って、言ってたから……」
「え? えっと…… 確かに俺、『めがふら』のファンだけど——」
「やっぱり!!!」
パッと、とびきりの笑顔を咲かせた優木さん。
「あのね、私も『めがふら』が大好きなの! だから、田中くんと『めがふら』の話が出来たら嬉しいなって、思ってたんだ!」
「え? でも、それなら教室ですればいいのでは……」
「……ほら、『めがふら』には、ちょっとエッチなシーンもあるから」
…………なるほど、そういうことだったのか。
ファンタスティアから来たと思われる原作者よ。
エロい描写については、もうちょっと配慮して欲しかったと俺は言いたいぞ。
まあ、表現の自由についての議論は置いておくとして、教室で優木さんが俺の方をチラチラ見てたのは、『めがふら』の話をするタイミングを探っていたのか。
でも、みんなの前で『めがふら』の話をして、ちょっとエッチな女の子だと思われるのも嫌なんだな。
それにしても——
なに告白されるかも、なんて期待してたんだよ、俺。
うわっ、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
とか思っていたら——
「あれ? 優木さん、どうしたの?」
なんだか優木さんの動きが止まったような……
「あああっっっ! これってもしや!」
「パンパカパーン! ご期待通りでーす!」
……やっぱり女神様のご登場のようだ。
「もしかして、またレベルアップしたんですか!?」
さっき九条さんと結構喋ったのに、また優木さんと話したから、HPのレベル限を超えたのか?
「え? レベルアップなんてしてないわよ?」
「じゃ、じゃあ、なんでわざわざ時間を止めてまで、また登場したんですか?」
「そんなの決まってるじゃない! カンタスがあまりにもオモシロかったからよ! アハハハハハ!!! カンタスったら、なに勘違いしてるんだか!!!」
「あの、ひょっとして…… 今のシーン、全部見てたんですか?」
「もちろんよ! カンタスってば、告白されると思って、プルプル震えちゃって。アンタ、自覚がなかったかも知れないけど、鼻息がスっごく荒かったんだから。なんかもう、『ムフーン! ムフーン!』って感じで…… プププ…… クックック…… アーハッハッハ!!! お、お腹痛いぃぃぃーーー!!!」
「うるさいですよ!!! レベルアップしてないんなら、わざわざ出て来なくていいじゃないですか!!! それに、俺はいたっていつも通りですからね!!!」
「顔を真っ赤にして、なに言ってんだか」
「こ、これは…… 火魔法を使ったからだよ!!!」
「……なに言ってんだか。まあいいわ。今回はちょっと『俺、コクられるんじゃね?』みたいに恥ずかしい勘違いしちゃったけど、これからもこの勢いで女の子たちにアタックして行くのよ、プププ……」
「……人をからかうほど暇があるなら、もうファンタスティアに帰ればいいじゃないですか」
「まあまあ、そんなこと言わずに。実は今回アンタの前に現れらのは、ひとこと言っておこうと思ったからなの。今まで伝えるのを忘れてたんだよね」
なんだか嫌な予感しかしないんだけど……
「女神であるアタシの存在や、アンタがファンタスティアからの転生者だってことは、絶対に喋っちゃダメだから」
「え、それはどうしてですか?」
「天界の規則で決まってるの。まあ、実際にそんな話をしたら、きっと頭のおかしいかわいそうな人だと思われるだけでしょうけどね」
「頭のおかしいかわいそうな人だと思われる原因を作ったのは、いったい誰でしょうね?」
「まあまあ、そう言わずに。それから、スキルは使ってもいいけど、その時は上手くゴマカシてね」
「どんな風にゴマカセば、いいんですか?」
「……それぐらい自分で考えなさいよ。言っとくけど、これはアタシがアンタに課した試練なんだからね」
あ、ちょっと女神様がイラっとした。
あんまり調子に乗ってると、俺、ヤバいことになるのかな。
それでは最低限、俺がどうしても聞きたかったことだけ質問することにしよう。
「あの、女神様。実は質問がありまして。レベルアップについてなんですけど——」
「なによ、アンタ。カンタスのくせに、一丁前にアタシに質問なんてするのね」
「いえ、とんでもありません! ワタクシは元ファンタスティアに臣民にして、聡明なる女神様に対して、その……」
「まあいいわ。今日は面白いものが見られたから、特別に教えてあげる」
チクショウ、なにが面白いものだ。
でも、ここは我慢だ。我慢しなければならないのだ。
何としても重要な情報を聞き出すのだ。
「レベルアップの条件は…… まあ、アタシが『これなら次のレベルに上げてもいい』と判断した時っていうことにしておくわ。そうじゃないと恋愛チキンのアンタなら、きっと次のレベルに上がらないよう女子との会話を抑えようとか、そんなショーモナイことを考えるでしょうから」
ウッ、図星だ。
「それじゃあ、これからも運命の人を探して人生の幸せを手に入れるよう、頑張りなさい」
そんな全くありがたくない言葉を残して、女神様は消えてしまった。
「田中君、大丈夫? なんだか息が荒いけど……」
あっ、優木さんが動いている。そして喋っている。更には俺を心配している。
時間停止が解除されたんだな。
「ひょっとして、まだ体調悪かった? ゴメンね、無理させて」
「いやいや、全然大丈夫だよ。あの俺、あんまり女子と喋ったことないから緊張しちゃって…… あ、しまった!」
クソっ、女神様め。
動揺して、変なこと言っちゃったじゃないか。
と思ったんだけど、優木さんは、
「ふふふ、実は私も男子とあんまり喋ったことないから、本当はちょっと緊張してるの」
と、言っちゃって下さったではないか!
ちょっとハニカミながら話す優木さんは、本当にかわいいな。
ぎこちないながらも2人でいろいろ話をしながら、俺たちは教室へと向かった。
どうやら優木さんは、『めがふら』以外のラノベも読むそうだ。
俺もラノベが好きだから、自然と会話が弾んだ…… ように俺は思っている。
ここで俺は勇気を出して、一歩踏み込んでみた。
「めがふらの話は二人だけの時にすることにして、エッチなシーンがないラノベの話は教室でも出来る…… かな?」
「そうだね」
少し恥ずかしそうに微笑んだ優木さん。
ここで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったため、俺たちは急いで教室へと向かった。
俺の心は幸せで満ちていた。
只今の所有HPは19。
元々10HPあったから、優木さんとは9回喋ったことになるんだけど……
体感的には、もっといっぱい話したつもりになっていた。
やっぱり女子との会話は難しいな。
でも、幸せな気分でいっぱいだから、今はこれでいいや。
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