第9話
その言葉はあまりにも衝撃過ぎた。
だが、今更引くに引けない。
「やあ……待っていたよ」
二人は変装などの準備を済ませ、花巻の居場所までたどり着いた。
暗く、月明かりだけが光源の部屋。
簡素でありながら、置いてある物は純金製やダイアモンドなどの宝石で装飾された物だけで豪華。
下にはきらびやかな薄い金を使ってライオンが描かれているが、その他の部分は赤色のカーペット。
天井にはダイアモンドでできたシャンデリア。
奥には花巻が座っている黒色で最高級の椅子とセットになっている、宝石があちこちに付けられたテーブル。
ある物はその四つだけだった。
だが、それにしても広すぎる。
まるでいつでも戦闘トレーニングができそうな部屋だ。
そして、肝心の花巻は身長がおよそ百七十センチメートル前半、白のスーツを着り、白く明らかに高級ブランド物の靴。
髪色は灰色で髪には少しウェーブをかけていてショートヘアー。
瞳の色も灰色で肉体は筋肉質だが、スリムな体型である。
コイツが那奈と東矢の復讐の相手。
二人は前に進んだ。
そして、花巻の目の前に立つ。
震えはない。
あるのは異常なまでの高揚感だけ。
早く、早く早く……殺してあげたい。
「ふっ……二人共、すごい目付きだね。まるで肉食獣だ。それでなぜ僕が“待っていたのか”、理由は聞かないの?」
確かに。
ま、少し考えたが、聞くことにした。
「じゃあ、教えて」
今にも噴火しそうな火山のような気持ちで問う那奈。
「マイノってやつ? アイツのせいで君達を殺すように命じていた地下警察から逃げ切れたみたいじゃないか? それで、次は僕の所に来るだろうなぁって思ってこうしてワインでも飲みながら待ってた。飲む? あ、まだお酒を飲める年じゃなかったか、残念、相当な値段するよ。このワイン」
確かにテーブルにはワインボトルと飲みかけのワイングラスが置かれていた。
だが、それよりも。
「地下警察に命じたってことは俺達を殺したかったんだな」
そういう事になる。
「そうそう。前まではこんな小娘一人と幽閉されたガキ一人、なんの力もないと思ってたけどさ、東矢くんが脱獄したって聞いて、あ、じゃあ殺しとこかぁって、なっちゃて、たまたま那奈ちゃんの所に行ったから、那奈ちゃんも殺そうかていう思考になったわけ。一応、言うけど。君達の両親を殺した理由は教えないよ。あ、君達の両親の断末魔。中々よくってさ……二人も聞いてみる?」
殺す。
確実に殺す。
那奈は頭の血管がブチって切れたような感覚を覚えながらテーブルを前に蹴り飛ばした。
しかし、花巻は消えていた。
違う、消えたのではない。
後ろに移動していたのだ。
すぐに二人は振り返り、花巻を見つめた。
「いい眼光だ。じゃ、お二人は両親を僕に殺されたことが分かったみたいだし、そろそろやりますか──殺しあいを」
すると花巻はスーツからスコープ付きの銃を取り出した。
「東矢!! サポートをお願い!!」
「分かった!!」
二人は黒いボックスをポケットから取り出し、武器に展開する。
那奈の武器は、那奈と同化し、東矢の武器の剣は花巻に向かっていった。
しかし。
「遅いよ」
ズトンと銃声が鳴り響く。
「東矢!? 何してるの!?」
『東矢くん!! どうしたの!?』
マイノの声も響き渡る。
その渦中の東矢は一瞬動かず、右足のふくらはぎを撃たれていた。
開花水の力があれば弾丸でも避けられ筈。
なのに避けなかった。
なぜだ?
しかし、答えはすぐに分かった。
いや、さっき気付けた筈なのに……。
『アイツ……開花水を飲んで能力が覚醒しているわ!! おそらく……スコープから覗かれると動けなくなるかもしれない!!』
「クソッ! 東矢、大丈夫!?」
「大丈夫……」
東矢が弱々しい声で答える。
さっき、すぐに背後に回ったのは偶然だったと思った。
だが、そこで気付けた。
二人と同じように開花水を飲んで超人になり、能力にも目覚めている事に。
「あらら、ばれちゃった」
花巻は能力が判明しても余裕というか、マイノの言葉を否定しなかった。
否定するか、飄々とした態度をとれば能力が確定せずにすんだものを。
花巻は余裕たっぷりだ。
それでも、マイノお陰で助かった。
もう二度と同じ轍は踏まなくて済む。
「くっ……花巻ぃ!!」
東矢が能力を使い、銃を花巻から取り上げる。
だが、花巻はスーツの内側を開いて見せる。
「なっ……!」
東矢が驚きの声をあげるのもその筈。
スーツの内側にはスコープ付きの銃が左右に三つずつ入っていたのだ。
東矢が同時に操れる武器は三つまで。
これでは……とても……。
「そういう能力の対策もしてるさ」
「……ツ! この野郎!!」
那奈はスコープに映らないように高速で部屋の右の壁、部屋の天井、部屋の左の壁といった感じで、高速のスピードで飛び移って行きながらついでに前へと進み、花巻の目の前までたどり着く。
「両親の仇!!」
そして、縦にした腕を九十度、半時計回りに回転させながら勢いをつけ、ストレートパンチを放つ。
しかし、動きが一瞬止まる。
「おっと、残念残念」
そして、額に銃口が向けられ、弾丸が放たれた。
「ッッ!!」
だが、弾丸が直撃するその前に動けるようになり、弾丸は額を上側にかすめた程度で済んだ。
そして、花巻に隙ができた。
「くたばれ!!」
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