第2話 チュートリアルルーム
【ようこそ、チュートリアルルームへ。ここではアドラステアで活動するためのアバターを作成していただきます。目の前にパネルが現れますので、そちらで操作してください。なお、一度決定したアバターは二度と変えることができないので、慎重に作成してください】
気がつくと、真っ暗な空間にふわふわ浮かんでいる感じがした。頭の中で女性の機械的な声が聞こえたかと思うと、それがチュートリアルルームの説明だった。
説明が終わると目の前に明るいパネルが現れた。四角いパネルの上半分は何も書かれていないスペースで、下半分にはいくつかのタブが並んでいる。その一つの『種族』というのを押してみる。
『ベースとなる種族を選んでください』
・植物種
・動物種
・妖精種
・幻獣種
新しい説明とタブが現れた。なるほど、こうやってどんどん細かい種族を選んでいくのか。地球の生き物ベースの気がするが、幻獣種なんかもあるのか。僕の頭にはある動物が浮かんでいたので、それがあるのか試しに動物種を選んでみた。
・刺胞動物種
・軟体動物種
・節足動物種
・脊索動物種
おいおい、急に現実的になったな。よくわからないのもあるけど、軟体とか節足とかは辛うじてわかるぞ。たしか軟体はタコとかイカとかで、節足は昆虫とかムカデだよね。脊索動物は……脊椎動物か? よし、脊索動物を選んでみよう。
・魚種
・両生種
・爬虫種
・哺乳種
・頭索種
・尾索種
うん、下二つはわからない。ここは哺乳種を選んでおこう。
・食肉目種
・鯨偶蹄目種
ああ、なるほどね。僕が求めているのは食肉目種だろう。
・ネコ種
・マングース種
・ジャコウネコ種
・ハイエナ種
・キノボリジャコウネコ種
・イヌ種
・レッサーパンダ種
・
・
・
よし、あった。僕が狙っていたのは一番上、ネコ種だ!
ネコ種を選んだ後は、ライオンとかヒョウとか捨てがたいものもあったが、目標の種族が出るまで選び続け、ようやく求めていたものが現れた。
・マンチカン
これこれ! 僕が愛して止まない猫の中でも最高にかわいい猫、マンチカン! アバター作成画面では、身体は一番小さくして、薄い茶色のふわふわな毛並みにつぶらな瞳、そして何より特徴的な短い足を選んだ。
(できてしまった、最高にかわいい召喚獣が)
【続いて初期ステータスを決定してください】
ステータスポイント 10
名前
真名 ???
レベル 1
体力
魔力
攻撃力
防御力
敏捷
ほほう、なるほど。最初にあるステータスポイントを振り分けるのか。ん? 名前は入力出来るけど、真名っていうのはなんだろう? 灰色になってて選択出来ないな。
それにステータスは上に書かれている10ポイントを振り分けるのか。だとすると、レベルが上がる毎に毎回振り分ける形になりそうだな? そう考えると早いうちに物理特化にするか魔法特化にするか決めておかないとね。たぶん、バランスよく振り分けたら中途半端になる気がする。
(よし、こんな感じでいくか)
名前 ムギ
真名 ???
レベル 1
体力 1
魔力 0
攻撃力 5
防御力 0
魔攻力 0
魔防力 0
敏捷 4
まずはレベル1でも敵を倒せるように、攻撃力と敏捷に多く振ってみた。どうせ、体力や防御力は0でも5でも大して変わらないと判断してだ。本当は魔力とかにつぎ込みたかったけど、最初から魔法を使えるとはかぎらないから攻撃力を選択した。今後、魔法を覚える機会があれば、魔力関係を上げていきたいな。
ステータスを決めた僕は決定を選択する。
【女神の加護を確認しました。追加のポイントが付与されます】
ステータスポイント 10
なんと、ステータスを決定したかと思ったら追加のポイントをもらえました! ありがとう女神様! さっそく、このポイントも振り分ける。
名前 ムギ
真名 ???
レベル 1
体力 1
魔力 1
攻撃力 8
防御力 0
魔攻力 1
魔防力 1
敏捷 8
この1ポイントがどのくらいの強さになるのかわからないけど、二回分貰えたのは結構大きいんじゃないだろうか?
【初期ステータスを決定しました。それでは
ステータスを決めた直後、視界が暗転し、気がつけば明るい部屋の片隅にいた。
(ここが
まずはここがどういう場所なのか確認してみる。白い床に白い壁、半球状の空間は野球場くらいの広さがある。中央には噴水があり、その周りは緑の芝で覆われていた。
さらに周囲に目をやると犬や猫、狼といった見慣れた動物が歩いていたり、芝の上に寝そべったりしている。さらには、明らかに想像上の生物であるドラゴンやフェニックス、妖精っぽいものがを飛んでいるのが見えた。
全部で三十匹ぐらいはいるだろうか、この全てが僕と同じように転生して、アドステアで活動する召喚獣なのだろうか?
「ようこそ
僕が呆然と部屋の中を眺めていると、不意に横から声をかけられた。声のした方に振り向くと、一匹の白いウサギがちょこんと座っていた。
「あ、え、初めましてラビ……さん?」
「ラビでいいぴょん! まずは君の部屋に案内するぴょん! 色々聞きたいことがあると思うから、そこで聞くぴょん!」
そう言ってラビはぴょんぴょんと飛び跳ねて遠ざかっていく。僕は慌てて追いかけようとして、転んだ。今気がついたけど、やけに視線が低いし、四足歩行になっている。そうか、僕はマンチカンになったんだった。恐る恐る立ち上がり、今度はゆっくりと歩いてみた。
短い足でとてとてと歩く。向こうではラビが待ってくれているので、そこまで一生懸命歩いて行くと、段々と四足歩行に慣れていき到着する頃にはスムーズに歩けるようになっていた。
「ふふふ、なかなか上手だぴょん! さ、ついてくるぴょん!」
そう言ってまたぴょんぴょんと飛び跳ねて、壁についている扉へと向かっていく。四足歩行に慣れてきた僕は、今度は小走りでついていくことができた。
「ここが君の部屋だぴょん! あ、そういえば名前をきいてなかったぴょん。教えてくれるかぴょん?」
「ありがとうラビ。僕の名前は……ムギ。これからよろしくね」
一瞬、自分の名前を忘れてしまっていた。これからたくさん使うであろう名前だから、早く慣れないとね。
案内された部屋は、8畳くらいの四角い空間だった。部屋の隅には猫用の丸いベッドが用意されていて、それ以外は何もなかった。そういえば、この身体は食事も排泄もしなくていいって言ってたね。便利だけど慣れるまで大変そうだ。
それからラビにここのことやアドラステアのことを質問した。それによると、ここはレベルが10以下の召喚獣が住む部屋で、大体三十匹くらいが生活しているそうだ。だけど、地球からの転生者は僕だけみたいで、他はみんなここで誕生したという。
ただ、他に転生者がいないというわけではなく、もっとレベルの高い召喚獣が住む
それからアドラステアのことも聞いてみた。予想通り、魔法やスキルといった地球にはない不思議な力が存在し、そのせいで科学技術はそれほど発展していない。各地にダンジョンという魔物の巣があって、時折、そこから地上にも魔物が出てくることがあるようだ。
人々はその魔物と戦うために僕達を召喚するのだ。
「でも、全部が全部戦うためじゃないぴょん。時々、ペットとしてとか農作業の手伝いで召喚されることもあるぴょん!」
女神様もそんなことを言ってたけど、マンチカンの僕に手伝える農作業があるのか!?
この後しばらく、ここでのルールやアドラステアの歴史や文化、それに魔法やスキルのことを詳しく教えてもらいながら過ごすのであった。
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