小話2~砂に沈む街後日譚~
ラクダに塩を与えながら、みのりは大きなあくびをした。
ドレイクが見ていないだろうと、隠しもせず、大きな口を開けた。それを、見られていた。みのりは驚いて、慌てて隠すが、もう遅かった。ドレイクはフッと笑って、ラクダの為の干し草を地面に置いてやる。そういえば、とみのりがドレイクに聞く
「この子の名前は何ていうの?」
「名前はない。」
「え、名前、ないの?」
確かに大量に家畜を飼っていたら、そんなこともあるだろうが、たった一頭の相棒のラクダに名前が要らないなんてこと、あるのかしら。みのりは不思議に思った。
「すぐに居なくなる生き物に名前は付けないことにしている。」
みのりは、ドレイクの闇深い一面に驚いた。
「こいつはリベルタに来てから2代目のラクダだ。前のは、魔物との戦闘で足がダメになった。」
「そっか。それで引退させたのね。」
みのりの言葉にドレイクがなんとも言い難い顔をする。みのりは、何か変なことを言っただろうか。
「みのり、砂漠で歩けなくなったラクダは、処分される。」
「処分・・・?」
俺が殺した、とドレイクは言った。みのりはドレイクの腕をぎゅっと抱きしめる。ドレイクが迷子の子供のように見えた。名前を付けてなくても、覚えているじゃない、とみのりは泣きそうになった。寂しそうなこの男が、すこしでも寂しくなくなるといいな、とみのりはドレイクの腕を抱きしめ願った。
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