第6話 リベルタの崩壊※
その日は突然訪れた。
夕食を済ませ、いつも通り風呂を済ませたみのりは、自室でゆったりと過ごしていた。今日は小さな砂嵐が吹き、洗濯物は砂まみれになってしまった。明日は干せるだろうかと、窓から外を見やる。この居住区には街灯がなく、各家のランプの灯りが小さく揺れている。今夜は月も出ているので、いつもより少し明るく感じられた。
その時、不意に地面がわずかに揺れた気がした。
ドレイクが「入るぞ」という声とともに、彼がみのりの部屋に入ってきた。半年間共に暮らして初めてのことだった。みのりは驚いたが、ドレイクの厳しい表情を見て、ただ事ではないと察した。
「すぐに街を出る。これに着替えろ。必要なものがあれば、この袋に入れて持ってこい。」
ドレイクは旅支度の服と小さな革の袋を差し出し、すぐに出て行った。「は、はいっ」ドレイクに気圧され、突然のことで焦たが、何とか返事をする。迷っている時間はなかった。
チェストを開け、ドレイクがくれた羽ペン、羊皮紙、インク瓶を袋に入れた。そして、かすかに血の跡が残る白いサテンのリボンを丁寧に畳んだ。奴隷の身であるみのりにとって、それ以上のものは何もなかった。麻の奴隷服を脱ぎ捨て、ドレイクに渡された旅装に着替える。革のパンツに生成りのシャツ、そして丈夫そうな外套を羽織った。厚底のブーツは大きすぎたため、足に布を巻いて履いた。
リビングに行くと、テーブルには大きなカーキ色の布リュックと、水がたっぷり入っていそうな革の水筒が四つ並んでいた。リュックからは毛布がはみ出している。ほどなく廊下からドレイクがマントを羽織って現れた。帯剣した姿は初めて見た。鋭いまなざしにみのりは体が硬直する。何が起こっているのか分からない不安と、怒りを滲ませるドレイクの威圧感に押しつぶされそうだった。
硬直したみのりに気づき、ドレイクは少し表情を和らげて頭を撫でる。
「大丈夫だ。荷物はこれだけで足りるか?」
「はい、これで全部です。」
優しい声に、みのりはほっと息を吐き、革袋を差し出した。ドレイクはそれを受け取り、リュックに詰めて背負う。急いで街を離れなければならないのだろう。みのりは足を引っ張らないようにと、もう一度ブーツの紐を確かめた。次の瞬間、ドレイクの腕に抱えられていた。
「えっ!」
「時間がない。少しの間だけ辛抱してくれ。」
ドレイクはみのりを抱えて家を飛び出した。住宅街の細い路地を軽快に駆け抜ける。みのりは大通りに出ないことを不思議に思った。どうやら、街を出る最短ルートではなく、どこかに寄るつもりらしい。
見知らぬ細い道を抜けると、やがて演習場のような広場に出た。寂れた厩舎と木組みの見張り台があり、その下には明かりのついた小屋がくっついている。
ドレイクは迷わず厩舎へ向かった。中にはラクダがいた。みのりは厩舎の前で下ろされ、待つように促される。ドレイクは一頭のラクダを引き出し、干し草の束も抱えて戻ってきた。
みのりにとって、動物園以外で見るのは初めてのラクダだった。日本で見たフタコブラクダではなくヒトコブで、驚くほど長いまつげと黒曜石のような目が月明かりに輝いていた。ひづめは小さいが足は太くしっかりしている。荷物やドレイク、そしてみのりを乗せて歩けるのかと不安になる。
見張り台から駆けてくる物音と誰かの問いかけが聞こえた。
「外周部隊のドレイクだ。」
「ドレイク隊長!?どうされたのですか?」
階級が下の隊員らしい。ドレイクはすぐにラクダを座らせ、鞍を据え、荷物を両脇に均等にかける。干し草はお尻の上にどっかり載せ、紐で固定した。最後に手綱を確認しながら、
「嫌な予感がする。俺はここを離れる。お前たちもすぐに避難した方がいい。」
と告げた。説明にはなっていない気もしたが、みのりはそれ以上聞けなかった。すでにラクダに乗せられていたのだ。木製の鞍の持ち手を掴み、驚きつつも身を任せる。ドレイクもラクダに飛び乗り、背は思ったより高く、自然と隊員たちを見下ろす形になった。隊員は戸惑いながらも敬礼し、二人を見送った。
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ラクダの速さは想像以上だった。外周部隊の駐屯地を抜け、大通りに出ると、ドレイクは手綱を引き、さらに速度を上げて走った。
夜の街は静まり返り、建物は暗い影を落としている。映画のゾンビを思い浮かべた瞬間、ラクダは急加速した。慣性で後ろに引かれそうになりながら、みのりは背をドレイクに預ける。厚い革の胸当て越しにも、彼の温もりを感じた。
砂漠は過酷で寒暖差が激しい。今はまだ春になる前の寒い時期で、昼は40℃近くまで上がっても夜は氷点下に冷え込む。みのりが外套を締め直すと、ドレイクは自分のマントをかけてくれた。普段なら気恥ずかしい距離も、緊迫した状況では気にならず、みのりは背中を預けた。
街を離れて砂漠に入ってもラクダの速度は落ちなかった。砂の上を滑るように進み、月明かりに照らされた砂丘の稜線に沿って進む。どのくらい走っただろう。ドレイクは速度を緩め、振り返って遠くの街を見た。みのりも一緒に振り返ると、はるか遠くにリベルタの街が見えた。沈まない街リベルタ。
そんな遠くにと思った次の瞬間、ドーン!ドーン!!と、大きな音とともに街が舞い上がった砂塵に包まれた。
砂嵐の柱が一本、二本、三本と増え、やがて街の四方を囲み、中心へと収束する。隣り合う砂嵐が融合し、大きな砂嵐へと成長し、街全体を覆った。
天へ届く一本の砂柱は雷鳴を含み、光を放つ。まるで神の裁きのようだった。「ああ…そんな…」と、つぶやぎながら、みのりはいつの間にか涙を流していた。水の無駄だと分かっていながらも、涙は止まらなかった。二人は砂嵐に飲まれた街を静かに見つめていた。
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俄かに明るくなったオレンジ色の空に魔獣除けの煙が紫色に立ち昇る。
薪がパチパチと燃える音が響いていた。その周りには天幕が張られ、隣に座り込んだラクダがいた。みのりは毛布に包まれ、うとうとしていた。夜が明けようとしている。
空が明るくなると、ドレイクはサーベルを抜き、身構える。みのりは何が起きているのか分からなかったが、声をかけると、
「な、何?」
「下がっていろ」
ドレイクが鋭く言った。砂の下から一匹の小さな魔物が砂から立ち上がる。砂漠に住む魔物、砂虫(サンドワーム)だ。
「ここは奴らの巣だったらしい。」
ドレイクが説明している間に、砂虫が覚醒した。くねくねとミミズのような体をくねらせ、牙をむいている。ドレイクは小さな砂虫をサーベルで貫く。超音波のような叫び声をあげ、砂虫は果てた。しかし呼応するように、目の前の砂山が盛り上がる。
──違う、大型の砂虫(サンドワーム)だ!あっちにも!・・・たくさんいる!
みのりは恐怖と共に戦いの現実を受け入れた。
ドレイクがラクダの尻を叩き、どこかへ逃がす。そして、みのりを背に庇い、大型の砂虫に対峙する。
砂虫は先端に口があった。口の周囲は牙で囲まれ、牙が口の摺動に合わせてうねうねと動く。目は退化したようだが、しっかりとみのり達を捕えて襲い掛かってくる。
──気持ち悪い・・・
目を背けることも出来ず、みのりはドレイクの服を掴もうと手を伸ばす。はっとして、それを我慢した。ドレイクの邪魔になってはいけない。
ドレイクは地を蹴ると、砂虫に向かって飛ぶ。
空中で、砂虫に切り掛かる。砂虫は頭を落とされたが、苦しそうにその体をうねらせた。ドレイクはそれに巻き込まれないよう、みのりを抱えて、離れた。
みのりを安全なところに下ろすと、向かってくる他の砂虫を次々と切り付けた。
やがて、すべての砂虫の動きが止まり、萎れたように、干からびた。
「ドレイク様、すごい。」
みのりはドレイクの腕の中で、ぱちぱちと手を叩いた。
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太陽が上がり切った空を見上げ、ドレイクが「そろそろ行こう」と声をかけた。
みのりは両手で包むように持っていた銅製のコップの中の、すっかり温くなったお茶を最後の一滴まで飲み干す。
「どこへ行くんですか?」
ラクダによじ登りながら、みのりは尋ねた。
先ほど荷物をまとめようとしたが、何一つ役に立てなかった。ようやく持てた革袋の水筒はふにゃふにゃして、どう頑張ってもラクダの脇に吊り下げることができない。その間にもドレイクは無駄のない動きで荷物をまとめ、毛布をリュックに詰め、手際よく括り付けていた。
みのりの背後に回り、水筒を固定し、最後にラクダの尻の方に干し草を積んでいく。
みのりはせめて自分の力でラクダに乗ろうとしたが、結局ドレイクが軽々と抱き上げてくれた。苦笑する彼に、みのりは照れくさそうに頷いた。
「街へ戻ろうと思う。……いいだろうか?」
ドレイクの問いに、みのりはきょとんとする。
「見たくないものを、見せることになるかも知れない」
その言葉にみのりの胸がざわついた。
街──リベルタは、皆避難して無事だと思っていた。沈まない街と言われていたではないか。だが、ドレイクには確信に近い予感があった。リベルタはもう終わりだと。
そして、それは現実だった。
街へ戻ったみのりの目に飛び込んできたのは、がれきと砂に埋もれ、無残な姿をさらすリベルタだった。かつて高くそびえていた外郭の壁は倒れ、家々は地盤沈下で屋根だけをわずかにのぞかせている。人々の暮らしの気配など、そこには何一つ残っていなかった。
「……流砂だ」
ドレイクの静かな声が重く響いた。
「りゅ、うさって……なんですか? みんなは? 街は……!?
沈まないはずでしょ!? 何度でも復活するって言ってたじゃない!」
みのりは叫んだ。ドレイクは悲しげに目を伏せ、首を振る。
「ミリィ」
彼が労わるように名前を呼んだ瞬間、みのりはがれきの山へと駆け出した。
「パン屋のおじさんが、アルクが……街の、奴隷の皆が……!」
叫びながら砂を掘り返す。がれきが指先に当たり、血がにじんでも構わなかった。無駄だとわかっていても、心が納得できなかった。
「ミリィ、もういい……」
「助けを呼べば……!」
「無理だ。リベルタは……沈んだ」
「沈んだ先で誰か助けを待ってるかも……!」
必死に縋るみのりに、ドレイクが声を荒げる。
「ミリィ!!」
その声で、みのりは我に返った。
「ドレイク様!ドレイク様なら……助けられるでしょう……!?」
言ってしまった。
ドレイクの目が曇る。みのりの言葉が、彼の心を深く傷つけたのが分かった。後悔が一気に押し寄せる。戻らない言葉に、手を震わせながら口を押さえる。
───
その後も旅は続いた。
昼は前へ、夜は火のそばで眠る。ドレイクは眠らず火を見張っていることが多く、みのりは申し訳なさで胸が痛んだ。
この過酷な旅で、みのりは何一つ役に立てない。無力な自分に歯がゆさを感じる。ドレイクが夜ごと星を読みながら進む方向を決めているのを見て、どこかの街を目指しているのだと知った。
けれど、みのりの体は限界を迎えていた。寒暖差、慣れない食事、疲労……。
ふらりと体が傾いた。ラクダから落ちる直前、ドレイクが抱きとめてくれた。みのりの体は熱く、意識はすぐに遠のいた。
───
目が覚めたとき、洞窟の中にいた。天井の裂け目から差し込む光が、昼であることを示している。
不安が押し寄せる。ドレイクは……いない? まさか、置いて行かれた?
「ドレイクさま……?ドレイク様!?」
反響する声だけが虚しく返ってくる。
(そんな置いて行かれた!?まさか…!)
洞窟を出ると、ラクダがいた。置いて行かれてなどいないと知り、はぁ、とその場にしゃがみこむ。だが、それでもドレイクの不在は不安だった。そのまま、ラクダの首にしがみつきながら、外でドレイクを待った。やがて眠ってしまったみのりは、肩を揺すられて目を覚ます。
「ミリィ!返事をしてくれ!」
必死な声。すぐ近くにドレイクがいる。みのりはわずかに目を開ける。
「ドレイク……ご、ごめんなさい……迷惑……かけて……」
「違う、違うんだ……俺が、お前の体調を気遣えなかった。すまない……」
かすれた声で、ドレイクがみのりを抱きしめる。みのりは再び眠りに落ちた。
夢と現のあいだで、何度も水を飲まされ、口に運ばれるパンがゆを受け入れる。
やがて、みのりの耳に聞こえるのは、何度も優しく名前を呼ぶ声。
「みのり、水を飲みなさい」
「みのり、これを食べて」
「みのり、熱が下がったようだ。もう少しの辛抱だよ」
そう。ドレイクが、ずっと「みのり」と呼んでいる。ミリィじゃない。
不思議に思いながらも、考える力は戻らない。
ある夜、薪の火を前にうとうとするみのりに、ドレイクが後ろからそっと腕を回して支えた。
「みのり。眠いのか」
みのりは小さく頷いた。彼の背中のぬくもりと、薪の炎の熱が心地よい。
ふと気づく。起きてからずっと、ドレイクは自分の本当の名前を呼んでいた。
「ドレイクさま、どうして私の名前……?」
途中で口ごもる。偽名を名乗ったわけではない。でも、訂正しなかったのも事実だ。
ドレイクは少し間をおいて、柔らかい毛布を引き寄せ、みのりをその上に寝かせた。さらに毛布をかけ、背中をそっととん、と叩く。
「お前が寝ている時に、怒ったんだよ。ミリィじゃない、みのりだってね」
まったく覚えていない。でも、たしかに──そんな自分も居たかもしれない。
黙っていたことを謝ろうかと悩むみのりに、ドレイクがそっと言った。
「謝る必要はない。本当の名前を教えてくれて、ありがとう」
「ど、どういたしまして……」
自分でも驚くほど、頬が熱い。この男、私にすごく甘い。
嬉しくて、恥ずかしくて、みのりは火の揺らめきの向こうに視線をそらした。
幾日かドレイクの看病を受けると、みのりは歩き回れるほどに回復した。
やがて、ドレイクは言う。
「敬語はもういらない。みのり、奴隷は……やめていい」
王都にいる魔法使いが言語魔法を解除できること、首輪を外せば奴隷と見做されることがないこと。元々この国では奴隷が違法なこと。すべてを丁寧に説明してくれた。
「もう、いいんだ」
──そう言って、ドレイクは彼女の頭を撫でた。
…
その日の夜、ドレイクの様子が変わる。
「……花狂いが来た」
声はかすれ、戸惑いと抑制に満ちていた。みのりはそれが何かを思い出す。発情期の狂気、理性を奪う衝動。
「今は抑えられてるが、近づかないでくれ」
けれど、距離は日に日に広がる。最初は一歩、やがて別の天幕へとまで。
そんなある日、風の向きが変わった。
──ドレイクが突然、近くに現れた。
「……匂いがする。お前と俺の、血の混ざった匂い」
理性の限界に来ていたのだろう。ドレイクはただ、みのりの肩を抱き、震える声で言う。
「すまない……我慢できそうにない」
みのりは短く頷いた。彼の体温と吐息を感じながら、唇が触れる。
月明かりの下、優しく交わされたキス。ぎこちなく、けれど心からのものだった。
ドレイクは毛布の上に彼女を寝かせると、そのまま抱きしめた。
「痛くしない。お前が嫌なら、すぐ止める」
いいよ、とみのりが頷いたのを皮切りに、ドレイクはみのりの首筋を舐めた。
恐怖はなく、不思議な安心感があった。
「ひ、うぅっ」
初めての感触にみのりはおののく。ドレイクはゆっくりと毛布の上にみのりの体を横たえる。雲で隠れていた月が出て、ドレイクの顔が照らされる。よかった、優しいいつもの顔だ。みのりはほっと息を吐くと、ドレイクの首筋に腕を回し、キスをねだる。
ちゅ、ちゅ、と軽いキスをする。
きもちいい。好きな人とのキスって気持ちいいのね。みのりは夢中になった。キスをしていると、下半身が疼くような、股を擦りつけたいような不思議な感覚に襲われる。どうしちゃったのかしら、と心配になる。
長いキスを終えると、ドレイクの鼻先がまた首筋に当てられる。すんすん、と匂いを嗅いでいる。鼻息が首筋に当たってくすぐったい。みのりは思わず笑った。
「くすぐったい…」
「いい匂いだ」
ドレイクは答えになっていない返答をする。くんくん、と匂いを嗅ぐ場所が、肩から胸、腹と降りていく。くすぐったいと身をよじるみのりの股のあたりで、止まる。念入りに匂いを嗅ぐドレイクの喉が突然、ぐるる、と鳴った。ふんふん、と鼻息も荒くなる。
そこで、あ、とみのりは気づいた。
「ご、ごめんなさい。ドレイク、私、いま出来ない。あの日だった・・・!」
ああ、とドレイクが鼻面を股に押し付ける。
「え!?ドレイク!?」
当然やめてくれると思っていたみのりは声を上げた。あっという間に、ズボンを脱がされ、下着もはぎとられる。挟んでいたリボンを見つけられたときは、恥ずかしくて死にそうだった。
「これは・・・?」
ドレイクがリボンを指でつまみ上げて言った。みのりは恥ずかしさに顔を手で覆う。
「月のものが始まっちゃって・・・。言いづらくて・・・」
すん、とドレイクがリボンに鼻を近づけ匂いを嗅ぐ。
「そんなの、嗅がないで!」
みのりは思わずリボンを奪い返そうと手を伸ばす。しかしそれは空を切った。
「これのせいか・・・」
ドレイクは独り言のようにつぶやいて、みのりの太ももを持ち上げた。あ、と思った時にはドレイクの肩に両足をかけて転がされていた。抵抗する間もなく、股の間に顔を埋められる。
「え?ドレイク?」
何を、と言う前に、ドレイクの舌がみのりの蜜口に這わされる。そのままべろべろと舐められた。時おり、萌芽を舐められ、意図せず甘い声が出る。
「ぁ、あ、あ、あ・・」
始めの内慣れなかった感覚は少しずつ気持ち良さが芽生え、その内熱のようなものが生まれる。お腹の奥が疼く。初めて感じる快感にみのりは戸惑っていた。声も、どうだしていいのか分からない。間違っていないといいけど、気持ちいいということは伝えたい。けれど、それを上回る恥ずかしさもあり、訳が分からない状態になっている。
「ふっ・・・」
時おり掠める快感に漏らすのは吐息だけに留まる。
一通り、舐め回すとドレイクはみのりに毛布を掛け、荷物の中から小さな布を渡して、どこかへ行ってしまった。みのりは快感の渦にのまれて、まだ動けない。
──なんだろう
渡された布を広げる。おそらく生理用品の布だ。
柔らかく給水性の良さそうな清潔な布。みのりはのそのそと体を起こすと、パンツを履いて、間にそれを挟んだ。一通り衣服を整える。
──ドレイク、どこに行ったの?そういえば、リボンもない?どこだろう。
……
明け方、ドレイクが戻ってくる。
「おかえり、ドレイク」
「ただいま。……無理をさせてしまったか?」
彼の問いに、みのりはほのかに頬を染め、首を振った。
けれど──
みのりはまだ知らなかった。
その夜、ドレイクが密かに“決意”を固めていたことを。
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