便利な道具は透明になってしまう、かもしれない

 いやあ、なかなか大変ですね。

 このAI関係のタグではもう書くことはないだろうってことで終了にして、妄想をさらに膨らませた駄文は近況ノート「AI不使用という生活の難しさ」 https://kakuyomu.jp/users/Nerd/news/822139839798693236 で書いたんですが、ルールの詳細な説明でこれはこれで問題な規定になってしまうというか……。


 【重要】作品投稿に生成AIを利用している方へ、推奨タグ利用のお願い https://kakuyomu.jp/info/entry/geneai_tag に 2025/11/20 追記がありました。引用します。


――――――


「AI補助利用」の適用範疇に関して、以下を参考にご判断ください。

・作品執筆作業の一環において、作者が意識的に生成AIツールを利用した場合の適用を想定しています。

・検索サービスほか、日常で利用しているツールのAIによる補助機能は該当しません。

・ドキュメントソフトの自動校正機能を用いて執筆した作品は該当しません。


――――――


 これ結構厄介な問題が出てきます。ここに二人の人間を登場させましょう。とりあえずアリスとボブでいっか。どうでもいいので。

 アリスは執筆者、ボブはコンピューターエンジニアです。アリスはボブがプログラムを書けることを知っていますが、具体的な方法は専門知識がないので把握できていません。

 アリスは普段執筆をしていて、質の良い校正ツールがないことに困っていました。ここでプログラムを書けるボブにチャット通話で相談します。


――――――


「世の中にいい校正ツールがなくて困ってるの。ボブ、あなた作れない?」

「んー……まあできると思うよ」

「できるの! じゃあそれにこんな機能も付けて。複数にサイトに掲載しているから面倒なことが多いのよね。なのでテキストの編集と保存、ルビとか傍点とかも表示できて、各小説サイト向けのテキストに変換して投稿できるようなツールがいいなあ」

「まーできると思うよ。できないところはゴメンっていうけど、編集と校正は確実にできると思う。あとはやれるところまでやってみるね」

 ボブの言葉にアリスはうれしくなって声がワントーン上がります。

「アリス、小さい子じゃないんだからもう少しこう落ち着こうよ」

 ボブはあきれ返りながら通話を切りました。


「さて、と」

 ボブはキーボードを前に唸ります。

「一から正規表現で校正プログラム組むのは面倒だな……。それに抜けも多くなりそうだし……。よしGeminiのAPI叩いて『校正して』って投げるだけのラッパーにしちゃえ。ツールもまあ適当にやっちゃえばできるだろ」

 カタカタとプロトタイプを作り上げ、結果に満足したボブは二週間ほど寝かせてからアリスにメールを送ります。

 アリスはボブからのメールを受信、そこにはURLが記されており、アリスはワクワクしながらタップします。

 画面はシンプルなテキストエディタで、左右に分かれたテキストエリアがありました。

 アリスはシンプルなつくりにちょっと落胆しつつも左側にテキストを入力します。

 改行を押すと、右側のテキストエリアに今入力したテキストのタイプミスや複雑な表現などの問題点がずらずらと並べられ、修正案が複数候補に現れます。

「え、すごくないこれ?」

 さらに続けて文章を打ち込んでいくと、右側の修正案は洗練されていきます。

「ボブこれすっごいわね!」

 アリスはボブに通話をつないで興奮した声で告げます。

「まあね」

「これ、すごいプログラムだけどよく二週間でできたわね?」

「僕天才だから。じゃ、これでいい?」

「満足よ!」

 アリスはほくほくしながら執筆作業に戻りました。


――――――


 幸せそうですね。でもこのツール、裏はGeminiです。ばりっばりの生成AI。

 ボブは作者なので生成AIが作り上げたテキストだと知っています。ある程度プロンプトで抑制しているでしょうが、最終的には本筋にまで割り込んでくるのは生成AIの性質上やむを得ないところです。

 Self-Attention Mechanismは距離も影響を受けます。過去を忘れてしまうというのは生成AIの特徴なのです。いずれ生成AIは自らの役割を徐々に忘れ、校正のテキストの中に自分の考えを混ぜ込み始めてしまうでしょう。

 一方アリスは校正ツールだと思って使っています。そのため意識としては生成AIを使っていません。さらには日常使いのツールにちょっと便利な機能はAI機能でも該当しない、と主張できるでしょう。

 実際にはバリバリの生成AIであるGemini Proが動いていても、外見からはわからないのです。

 このあたりは近況ノートで書いたネタそのものです。便利な道具として透明になって存在するAI。

 これ、なかなか難しい問題だと思うんですよね、やっぱり。

 補助利用タグについては「ネタとして貼り付けOk、そもそもAI利用しているとみなしません」くらいにしておいたほうがいいのかも。

 あれだ。

 保険的にセルフレイティングしとけ、みたいな使い方がみんな平和になるのかもしれません。

 ただこの使い方だと検索には使えなくなりますね。とはいえこの「AI補助利用」タグで検索するシーンって思いつかないんで、いいかなーとかそんなことを考える僕なのでした。

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