創作にとってややこしいことになりそうなお話

ナード

Google検索、便利ですね

 みんな使うよね。

 でもね、カクヨムのこの「【重要】作品投稿に生成AIを利用している方へ、推奨タグ利用のお願い」https://kakuyomu.jp/info/entry/geneai_tag に従う場合、Google検索した資料を使ったら「AI補助利用」になる可能性があるんです。

 なぜそうなのかを少し語っていきましょう。


 生成AIは大雑把にはTransformerとSelf-Attention Mechanismという発明から生まれています。

 AIはテキストをそのまま理解していません。入力されたテキストをトークンという扱いやすいマーカーに置き換え、Transformerに投入します。

 Transformerは連続情報を扱うことができないので、それぞれのトークンの相対位置を埋め込んだベクトルを埋め込みます。このベクトルを見ることでトークンの距離がわかる=文章のつながりがわかるようになります。

 次にSelf-Attention Mechanismがそのトークンの距離からどれだけ注意を払うべきかを計算することで、テキストの中に出てきた単語の意味をより深く考えます。

 例えば「bank」という単語は「銀行」ですが「土手」という意味もあります。なのでこの単語だけでは意味が確定しませんが、注意を払うべき単語に「save」「money」があるなら土手ではなく銀行を意味していると分かります。

 文脈から単語の意味を明確にする、そういう機能がSelf-Attention Mechanismです。偉大な発明ですね。


 で、Google検索においては入力された検索ワードの文脈の理解にこのTransformer+Self-Attention Mechanismが使われています。

 このコンポーネントはBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)という名前です。いやあいいバクロニムですね。挙動きちんと表してます(詳しくは検索してみるとわかります)。

 余談ではありますがGPTはこのBERTの4か月前に誕生しているのですが、この二つがほぼ同時期に生まれたのは「Attention Is All You Need」というarXiv論文(https://arxiv.org/abs/1706.03762 2017年6月12日)が起点になっているからです。


 さてこのBERTを抜けて出たトークン+ベクトルはそのままでは検索結果になりません。これを解決するためにあるのがMUM/RankBrainなど複数のコンポーネントになります。このコンポーネントを通過し、検索結果として作り上げられていくのです。

 そのなかでも特筆すべきものとしてMUM(Multitask Unified Model)を挙げておきましょう。MUMはマルチモーダルの生成可能なコンポーネントで、COVID-19ワクチン関連の情報で活躍していました。このラインに流れた場合、普通の生成AIとほぼ変わらない出力になります。

 まあ普段はMUMは動かないらしいので今までは杞憂だったんですけども、でも最近はSGE(Search Generative Experience)という存在が輝いてしまっています。

 Google検索すると最近AIによるまとめが出てくるでしょう? あれです。Generativeの名前の通り、生成AIなんですよあれ。

 SGEの出力無視すれば大丈夫じゃん、ではないんですよね。

 生成AIに依頼してウェブ検索をした場合、生成AIは要約テキストと、参考にしたURLを複数提示してきます。要約テキストを無視してURLを一つ一つ見て検討した場合とGoogle検索のSGEを無視してURLを確認した場合、その違いはどこですか?

 バックエンドの技術は同じ、挙動も同じ。出力に対する処理も同じで得られた結果も同じ。なのに一方だけ適用するのはちょっと不公平だと思いません?

 なのでGoogle検索を使用した結果できた作品にも「AI補助利用」タグをつけることになるんじゃないかなーというそんな妄想エッセイなわけです。


 でもあながち外れてはいないと思うんですよね。

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