第3話 告白
「・・・ㇲ‐ㇵ‐、ㇲ‐ㇵ‐、、ㇲ‐ッ」
「、ジリリリリリ!!!」
「!?」
パチッ
「ハァー、、、フ〜」
朝か・・・。
目覚まし時計を止めたら、次に聞こえるのは、
「鷹斗ーーー!、いい加減起きなさーーい!!」
そう、姉、沙也加(さやか)による第二の目覚まし時計だ。
これは、起きない限り止まらない。
「・・・・起きるか。」
そうして僕は、今日も日常を繰り返す。
ご飯を食べ、顔を洗い、歯磨きをして、学校の準備をする。
そして、
「行ってらっしゃい、鷹斗。」
「ほら、鷹斗、母さんからお弁当・・・行ってらっしゃい。」
「鷹斗、今度の日曜も釣りに行くぞ、行ってらっしゃい。」
「うん・・・・・・・・行ってきます。」
・・・・今日も、言ってしまった。
あれから、平川さんとはまだ一度も会えていない。
いつも通り週に一度、学校をサボって橋の下に来ていたが、
そこには人の影すらなかった。
(実は、俺みたいに頻繁にサボる人ではないのか。)
もしかしたら、彼女が学校をサボったのは、あの日だけなのかもしれない。
そもそも、学校をサボらないのは良いことなのに、それを否定するのはおかしい。
そうだ、彼女は自分なんかとは違う。
そう・・・・・心に留めるようにした。
「今日は、休もう。」
なんだか、気分がどん底だ。
学校に行きたくない。
別に、学校で嫌なことがあるわけではない。
友達だっているし、良い先生だっている。
しかし、一歩、一歩と学校の方角へ歩こうとすればするほど、
足に一つ、一つと重りを乗せられたような感覚になり、次第には止まってゆく。
前を向こうとすると、顎にも重りをのせられ、自然と口角が下がっていき、
まるで前方のなにかを睨みつけているようになる。
最終的には、振り返って歩いていく。
そして、強張っていた体の力を吐き出す代わりに、
罪悪感や虚無感が混ざった感情を吸い込む。
・・・とても疲弊する。
「・・・・・少し、ここで休もう。」
いつもの橋の下に来た僕は、無意識のうちに彼女を探していた。
自分を知っている人には会いたくないが、彼女には会いたかった。
・・・ただ、寂しかった。
「・・・・・・・久しぶりね。」
「!?・・・平川さん?」
「そうよ、三週間ぶりかしらって、
え・・・・・なぜ、泣いてるの?」
「え、泣いてなんか、あれ、なんで、なんで、涙が、」
気づくと僕は、涙を流していた。
寂しい気持ちになると、時々涙が流れる。
しかし、よりにもよって、平川さんがいたなんて・・・。
人前で泣くのは嫌だけど、特に、彼女には見られたくなかった。
「・・・・・大丈夫?」
「ええ、大丈夫です。ご心配おかけして、すみませんでした。」
涙を服の袖で拭って、顔に笑顔を浮かべた。
「そう・・・なら良かった。
・・・元気だった?この三週間。」
「あ、えっとー、はい!元気でした!」
「学校は?休んでたの?」
「・・・大体、週に一回くらいは、
こうやって、橋の下に来ていました。」
「そう・・・私もよ。」
「え・・・そうだったんですか?
でも、一回も会ってないですよね?」
「入れ違いになっていたのよね、きっと。」
「・・・そうですね」
二人の間を、ドライな冬風が通る。
「あ、そうだ。カバンにつけていたキーホルダー、
これ、落としましたよね?」
「?!・・・なんでそれを?」
「三週間前のあの日、平川さんが帰ったあとに、橋の下で見つけました。
多分、走って帰っていたから、その拍子に落ちたんだt」
「ありがとぅ!」
バシッ
彼女は、勢いよく自分の手からキーホルダーを奪い取り、体ごと向かい側に向いた。
(そんなに大事なものだったんだ。・・・・・あれ、耳の先が赤くなってる。)
胸に手を当て、一呼吸した彼女は、キーホルダーを胸に押し当てながら、
視線だけをこちらに向かせた。
「ハァ・・・そういえばあなた、一回も私に連絡していないわよね。」
「え、あ、はい、・・・・すみません。」
「別に謝らなくていいわよ。」
「すみません。」
「ほら、また・・・フフッ。」
前にもこのような会話があった気がする。
少し、懐かしく感じる。
「それで話戻すけど、あなた、本当に一回も連絡していないわよね。」
「え、はい、してません。」
「ふ~ん・・・・・なんで?」
「なんで・・・と言われても、いつ連絡すれば良いかなと
迷ってたら、その・・・・タイミングを逃しちゃって。」
「ふ〜〜ん、そうなんだ~。」
何なのだろう。連絡をしていないのは確かだが、それは別に悪いことではないし、
連絡するという約束などもしていない。
なぜ、彼女は拗ね気味な態度をとるのだろうか。
「・・・・・・・」
「私は・・・・・・・
結構待ってたんだけどなぁ。」
「・・・・・え?」
いきなりの告白で驚いた。
・・・そうだったんだ。
彼女は、目線をそらしながら少し俯いたまま、唇を尖らせている。
「・・・・君、覚えてる?私が君に、最初に話しかけた時のこと。
何て言おうとしていたか、わかる?」
「・・・・・いえ。」
「まあ、そうだろうね。わかるはずないよね・・・」
「何て言うつもりだったのか、聞いても良い?」
「・・・・・・・」
彼女は、俯きながら、唇を噛み締めた。
その瞬間、ドスンと重い空気が二人の周りを支配する。
彼女は、直立不動のまま、動かないでいた。
・・・聞かないほうが良かったな。
そう思った僕は、彼女に謝ろうと思い、重たい空気をすぐに吸い込んだ。
しかし、もう遅く、彼女の重い唇は、すでに開きかけていた。
「・・・・あの時、私は
君も寂しいの?って・・・言いたかったのよ。」
体が跳ね上がるほど、嬉しかった。
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