第18話 黒を纏って

ギィィ…


ボス部屋の大扉を開け最奥に鎮座しているボスを確認する。見た目でわかる情報は大型な狼と言うことと黒を纏っている事から黒魔法の類を使うと言う事だろう。


「デカすぎじゃね?」


巨狼は日本の大型犬と言うよりは神話に登場する神狼フェンリルを彷彿とさせる程の巨体だ。その爪は鋭く簡単に人間を八つ裂きにするほどの力を有している。


「ガゥゥゥ!」

「警戒してんのか?ならその間に鑑定眼使うけどな」


名前 ───

種族 堕ちた亜神狼フォールウルフェン

レベル 71

スキル 爪術A 牙術A 咆哮S 黒魔法B 影魔法B 風魔法D 怪力A 鉄壁C 疾風A 聴覚強化A 自然治癒E 空間把握C 軽体B 物理攻撃半減 黒魔法耐性 

固有スキル 縮地 堕トス者

称号 堕落者


色々と禍々しい称号と固有スキルだな…堕トス者?デバフ系と考えた方が良さそうか、他にも黒魔法と咆哮とか能力低下デバフ好きすぎじゃね?!それに何だよ物理攻撃半減って…俺対策か?!そうなのかぁ?!


「魔法で攻めるしか無いみたいだなッ!」

「ワオオォォォォンンッッ!!」

「クッソ…」


先制攻撃を仕掛けようとした蓮兎に反応しすぐさま咆哮スキルでデバフを掛ける。咆哮でできた隙を見逃すほど甘い相手では無く固有スキル縮地を使い距離を詰めてくる。


シュンッ


「っ?!瞬間移動か何かかよッ?!」

「ガウワッ!」


ゴキッと骨の折れる音が鳴り響き蓮兎は巨狼の一撃を喰らい壁に衝突すし、大きくひび割れさせることになる。


(何が起きた?瞬間移動…いや空間魔法は所持していなかったから固有スキルの影響か?日本とは違って純粋なテクニックでは無くただの化け物スキルと考えた方が良さそうだな)


ちなみに高速思考の効果で思考している時間は1秒にも満たない高速で行われている為戦闘に支障は無い。


「ちっ、咆哮と黒魔法を混ぜて発動したな?デバフの量が凄いことになってんぞ」


状態 防御力低下 攻撃力低下 敏捷力低下 怯え


「グルルルル…」

「そんな警戒すんなって、怪我人だぜ?ほらっ、コレやるから元気出せ」


蓮兎は巨狼に向かって丸い何かを投げる。だが巨狼は警戒を解かず爪で弾こうとするが──


ボンッ


爪と丸い何かが衝突する前に爆発。魔力を込めただけの粗悪品な為爆発の威力は粗末な物だが仕組まれていた細かい破片が飛び散り四散し煙のような役割を果たしていた。


「隙みっけ!」


蓮兎は壁を蹴り上げ、そのまま加速。空中でも固有スキル天歩を使用して即座に巨狼に接近する。


「ガッ?!」


ギィンッ!


呪刀首狩りで首に全力攻撃をするが物理攻撃半減のスキルの影響かその刃は弾かれてしまう。


ドゴォンッ!


「大体予想ついてたし良いか」

「ガウッ…」


刃が弾かれたと分かるとすぐにEランク風魔法の衝撃波インパクトを魔導王のスキルで超過させた威力で放つ。魔力を普段の5倍込めているので消費量は多いがその分単発の威力を増した一撃は巨狼を怯ませるほどの威力だ。


「怯んだならコレが使えるよなぁ?!」

「ガウ──ッ!」


ガガガガッ!


使用したのは短剣に神怒カムイ大地切り裂く鋭刃グラウンドリーヴ狂風纏う剣テンペストエッジを施した連撃連撃連撃!竜を切り裂くほどの威力を有した猛攻は巨狼が距離を取るまで続いた。


付与した効果は大地切り裂く鋭刃グラウンドリーヴが切れ味の増加、狂風纏う剣テンペストエッジがチェンソーのように風を纏わせ連撃判定を喰らわせる技、つまりは喰らった相手は肉が裂け、その傷口に更なる追撃を与えられる地獄が完成する。


「ははっ!どうだ連撃も良いだろぉ?!」

『連撃は連撃だが高火力の連撃じゃ話が違うだろ』

「ガゥゥゥ…」


シュッ!


すっかり弱った巨狼は固有スキルを使い距離を取るが蓮兎が瞬きの間には眼中に迫り再び夥しいほどの量の斬撃を食らわせる。斬撃は固有スキルの斬止を使い一度放った攻撃を空中に留めさせ再び連撃を浴びせる。


「連撃の最中に斬止使えるな!一度で二度の判定があるとかお得じゃ無いかッ!」

『…完全に狂ってんな、まぁ俺としては良いことなんだが』


蓮兎の目は完全に悪魔の目だ。目の前の弱き者を虐めるのに夢中になり他のことなど何も気にしていない。


「ガオォン!」

「あ?今から何を──ッ?!」


急に蓮兎を襲ったのは激しい頭痛だ。頭が割れ脳が今にもぐちゃくぢゃに潰れそうなほどの痛みが頭、胴、腕や足と伝播して行く。


「かはっ!痛、痛い…わ、割れる」


ピコンッ


条件を満たしました!スキル「苦痛耐性」を獲得!


ピコンッ


条件を満たしました!称号「生き地獄」を獲得!


ピコンッ


条件を満たしました!スキル「精神攻撃耐性」を獲得!


痛みや苦痛が条件のスキル、称号の獲得条件を一気に満たし新たな力として加わる。だが今はそんなことがどうでも良いほどに激しい痛みが全身を襲っている。


(何だこの痛み?!耐性など関係ないほどに辛い…全身が一気に骨折した方がまだマシだぞ?!いっそ死んだ方が楽なんじゃ──)

『馬鹿が!相手の策略にハマるんじゃねぇよ』

「んなの分かってるけど…」


おそらく固有スキルの堕トス者の効果だろうが…あぁ〜!それにしても痛い痛い痛い!思考が出来ない…


「ワォォォン!」

「黙れよッ!」


苦し紛れに放った風刃ウィンドは巨狼の頬を掠るのみでダメージに期待はできない。そして巨狼は仲間の餓狼ウルフを召喚し堕トス者の効果で味方の強化をする。


「ガゥワァ?!」

(味方に使う場合も痛みはあるのか…ん?ならデカ狼も頭痛の中戦ってんのか?)

「ははっ!そこだけ尊敬してやんよ」

「ガウッ!」


頭の痛みにも多少慣れてきたがまだまだキツイ…できるとして短期決算しか勝算無いだろうな。まだ短剣に付与したバフは消えてないが火力求めるなら首狩りにバフ集中させて首切るか!


大地切り裂く鋭刃グラウンドリーヴ狂風纏う剣テンペストエッジ


唸る呪刀は肉を切り裂く事しか考えておらず絶えず呪詛が鳴り響く。


「今まで使う機会なかったがお前に使ってやるよ!呪刀こいつの呪い」

「ガゥゥゥ!」


この一撃を外せば負けるのは確定か…まぁ当てれば良いだけの話だがなッ!身体能力を上げるバフ全開してから神怒カムイでさらに火力を上げる!


「カウガァッ!」

「断ち切れ!神怒カムイ!」


グウゥンッ! ストンッ


巨狼の首は断ち切られ地に落ちる。今も絶えず黒を纏っているが時期に消えることだろう。


「やったか?!」

『それフラグとか言うやつなんじゃ?』

「…つい」


「まさかな」と思いながら蓮兎は後ろを振り向く。そうすると餓狼ウルフ達が我があるじの巨狼に群がりその頭部に黒を集めていた。


「ガゥゥゥ…」

「嘘つけ、絶対嘘だ信じないぞ」


そんな言葉は虚しく頭だけになった巨狼が黒のオーラを使い浮き上がる。これでは神狼フェンリルと言うよりも幽霊の方が近いだろう。


(幸いな事に堕トス者の効果はもう無いみたいだしもうひと勝負くらいできるか?いやでからできない関係無くしないと死ぬんだが…)

「はぁ…やってやるよ、第三形態はすんなよ?」


笑みをこぼしながら第二回戦の開戦だ。何故微笑んでいるのかはあえて伏せておく事にしよう。


「そろそろ剣の耐久値が少ないんだ!だから短期決戦な?」

「ガ…ウゥ──」

「あぁそうだ、使うって宣言したからな呪いやるよ」


発動したのは斬進。その名の通り傷口を深く侵食するように傷が深く刻まれていく。


「ガァッ?!」

「キツイだろ、それ」

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