第10話 もう一つのストーリー

今俺はオルグス大迷宮4層を攻略中だ。レベルは35まで上昇!モンスターの種類に違いはほぼ無いが新しく一角兎キラービットと言うのが追加された。初撃は速いがそれ以外は別にどうと言うこともない雑魚だが──


「美味い!」

『早く祠壊して実体化させろ!俺も肉食いたい!」


肉が兎に角美味い!餓狼ウルフの肉は暴食の味覚強化や美味しく感じる効果があっても獣臭さや肉の硬さが気になったが一角兎カラービットの肉は、噛んだ瞬間に肉汁が溢れ出てきて肉の柔らかさも極上だ。兎肉は淡白で鶏肉てきな感じとか日本だと言われてたけどここのはジューシーだな…やっぱ動き回るからか?


「暴食の味覚強化もあるからかさらに美味く感じるな」

『──せろッ!俺に肉を食わせろッ!』

「実体化できるまで待てろって暴食グラフェル


ちなみに暴食グラフェルとは暴食の名前だ。本当はグラトニーにしようと思ったけど『その名は嫌だ』と言われたからグラトニーと悪魔を表すトイフェルを合わせてグラフェルになった。安直だろ?ちなみに名付けをしたわけでは無くただのあだ名的な感じなので魔力消費は無い。


ゴクンッ


「この階層もモンスター全滅したか?今回もあっけなかったな」

『今のお前はスキルだけならSランク冒険者と同等かそれ以上なんだぞ?それは加護と称号でさらに上がってるし突然だ』


そう言えば加護と称号にはステータスの上昇とスキル効果が付与されていた。特にセットするなどは無く常時発動しているらしい、ステータスに表示されるのは数ある中で選んで付けるって暴食グラフェルが言ってた。ちなみに今の俺の称号には攻撃力+20とスキル大食いが付いている。加護は全ステータス100アップでこれから上昇値が上がったりスキルが付くこともあるそうだ。


「もうレベルも上がらなそうだし10層までささっと攻略するか」

『そうだ!そして俺に肉を食わせろ!』

「仰せのままにっと」


その場から立ち上がり次の階層まで歩き出す。そう言えば鏡花達は今どの層にいるのだろう?俺より上…は無いか、なら2層くらいか?快の固有スキルのためにも少し残しとくんだったな…まぁモンスターは時間経過で少し経つと再出現リポップするし大丈夫か!


◇オルグス大迷宮2層 鏡花パーティ◇


この集団パーティは前衛が切山灯火きりやまとうか前田暑司まえだあつし、中衛が菜明夢明さいめいゆあ華氏海斗きしかいと、後衛が咲良希鏡花(さくらぎきょうか)、関柄快せきがらかい王野裕人おうやひろとの7人パーティだ。


「全然モンスター出てこないね」


ダンジョンを歩きながら鏡花が話す。この所モンスターが出現したのは3時間前の2匹くらいだったからだ。


「もしかして蓮兎がやったんじゃ?」

「確かに!てことは無事ってことだよね、良かった…」


快の言葉に鏡花は激しく賛同し胸に手を当てて小さく「良かった…」と囁いた。だがそれに賛同しない夢明は「あの陰キャができるはずないでしょ、きっとあのデカいゴブリンが倒したのよ!」と反対した。


「まぁまぁ2人とも落ち着いて、俺は蓮兎君がやったと思うぞ?切山はどうだ?」


その言い争いを見兼ねた暑司は2人の仲裁に入る。


「私も蓮兎がやったと思うぞ?同じ中学の鏡花なら分かると思うが剣道の腕前は凄かったからな、きっと頑張ってくれてるはずだ」

「ぼ、僕は別にどっちでも…」


海斗君は気が弱いのかな?私が話しかけてあげないと!でも蓮兎君は嫌がってたような…でも普通に話しかけてくれてたし…もしかして私結構好かれてる?!えへへ♪


「ガルルルッ!」

「そう言ってたら来ちゃったか…よし!1回いがみ合いやめて戦おう!」


数は3体か…いつもみたいに私がバフ、快君がデバフを掛けて切山さんと暑司君が前衛で攻撃!夢明さんと海斗君は──


「わ、私華奢だから槍持たないから無理〜」

「ぼ、僕生き物を殺すなんて…うぷっ」


夢明さんはぶりっ子って言うのかな?それで戦わなくて海斗君は怖がりだから戦えないし…やっぱ私達が頑張るしかないか!


精霊の煌めきフェアリーグロウ

防御低下アンチアーマー


身体能力を上げるDランク白魔法精霊な煌めきフェアリーグロウとEランク黒魔法防御低下アンチアーマーで支援を開始する。


「壱の太刀、一閃!」


キュインッ


切山灯火の固有スキル刀神とうしんの効果は主に3つ。1つは刀剣類を使う際の大幅補正。2つは刀剣類の性能強化。3つは自身が設定した最大12の型に技を設定してその技の使用時に技に応じた強化だ。


バギッ


「浅い…」

「ガウッ!」


灯火さんは初めの戦いとこれまでの戦いで武器の消耗が激しい…固有スキルでの補正があっても元の武器性能が0に等しいと意味無いし!剣が折れてる今は私が支えないとッ!


白の爆風ホワイトブラスト!」

「キャウンッ?!」

「ガルワッ!」


まずい1匹こっちに来る!魔法使用時のわずかな反動で動けない今は避けられない…


ギンッ!


「任せろ!」

「暑司君?!」


暑司君がシールドバッシュを決めて私を助けてくれた。流石大盾使い!でも今のは危なかったし気をつけないとな。反省反省!


「関柄!あれを使ってくれ!」

「あんま使いたく無いんだけどなッ!百鬼夜行!」



切山灯火に言われて発動したのは固有スキルの百鬼夜行だ。死んだ者の遺体を使って百鬼を操ることができるスキル、だがその消費魔力は凄まじく遺体を媒体にする関係で現在従えてるのは餓狼ウルフ7体のみ、そしてその7体を召喚するのに使う魔力と黒魔法の使用を考えると召喚は10分が限度だ。


「ガルルル?」

「ガウアッ!」


同族に襲われた餓狼ウルフは何が起きたか理解できずに死に絶えた。そしてその者達はその命絶えた後も新たな主人に永劫に使えることになるであろうことも知らずに。


「はぁはぁ…魔力消費やっぱ凄いな」

「3人とも凄かったよ!私はどじっちゃったしね」

「そんなことないさ、鏡花は頑張ってたよ」


そんなことを話しながら鏡花達のパーティは3層に到達した。そして少し経つと大量の餓狼ウルフの遺体と焚き火の跡が見つかる。


「これって…蓮兎君の?」

「は?いやあんな奴がこんなことできるはず…」

「ここにメモがあるぞ」


地面に刻まれた文字にはこう書いてあった「もしかしたらもう俺より上の階層にいるかもだけど一応メモ残しとく。餓狼ウルフを殲滅したから次の階層に進むね、餓狼ウルフは不味いから血抜きしたほうが良い!スキルにそんなのがあったから試してみて!あと必要かわからないけど武器を用意したから使えそうだったら使ってね」と。


「これを1人で?」

「殲滅したってこの階層のモンスターを?」

「確かに錬金術師だったよな?」


ゴクンッ


「「「「「「悪魔だ」」」」」

「神だ!」


6人の言葉が揃う中1人は破損した武器の代わりがあることに喜び感謝する。よほど刀が好きなのだろう。


「この刀スキルまで付いてるぞ?!それにランクもEランクだ!今までがFだから強くなってる」


名前 餓狼刀

分類 刀剣

ランク E

スキル 餓狼特攻 風纏 軽量化

攻撃力 310

防御力 247

耐久力 3408/3408


「こんなの惚れてしまうぞ!」

「ふぇ?!切山さん?!」


◇オルグス大迷宮5層 蓮兎&暴食グラフェル


「はっくしゅん!」

『風邪か?』

「う〜ん…誰か俺の噂してんのか?」

『非モテ童貞のお前の話するやついるかよ』

「うるせぇ」


ふざけ合いながら俺達は順調に攻略し現在5階層の中間地点だ。このまま行けば4日後には10層までたどり着くかもしれないな。

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