自己肯定感

@omuro1

第1話

僕は、自己肯定感が低い。


それは、恥でも欠点でもない。

むしろ、これは誇りに近い。


かつての僕は、限界まで走り続けていた。

どちらに向かえばいいのか分からず、届くかどうかも分からない何かへ、ただ必死で手を伸ばしていた。


長い年月を注いだはずなのに、振り返ると驚くほど何も残っていなかった。

掴んだと思った瞬間でさえ、手のひらは空っぽのままだった。


それでも、忘れられない時間がある。

成功の影に触れたくて、息を切らしながら駆け抜けた、あの暗闇を。

報われなくても、何度倒れても、立ち上がるしかなかった、あの日々を。


自分を追い込むことでしか前に進めないと信じていた。

疲れて膝をつくたび、「まだいける」と言い聞かせ、心の声を蔑ろにしていた。

無茶だった、と今なら分かる。

それでも、あの焦りがなかったら、世界はもっと狭いままだっただろう。


結局、望んだものは得られなかった。

誰にも見せられない敗北の数々が、自分の奥底にゆっくりと沈んでいった。

もはや、この澱みこそが、僕なのかもしれない。


自分を高く評価できなくてもいい。

今だって、どこへ向かえばいいか分からない。


それでも僕は、今日もゆっくりと歩いている。

たとえ遅くても、足を止める理由にはならないのだから。

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