第5話 ちょっと積極的な天宮愛莉(あまみやあいり)先輩
午後からの大学での講義を終え、僕はここ最近仲良くなった同級生の
「はぁ……」
「ん? どうした、圭? 気の抜けたため息なんかついて」
「(顔、近ぇよ!)」
コイツはいつも僕の肩へ手をまわし、顔を近づけてくる。
僕に
なので漢らしいゴツゴツした感じの顔面を、この距離感まで迫って毎回話をされるのは、正直ツラいと内心思っている。
「いや、ちょっとね……」
急に家族が増え、突然義妹と共同生活を送ることになった不安と期待を、この男に話すと絶対に面倒なことになる。
そう直感した僕は、自然と大吾から顔と視線を
「あ、わかった。彼女と
「いや、彼女とかいないし……」
コイツはその事実をわかっていてそれを聞いている。端的に言えば、
だがしかし。
この男も僕と一緒でモテないし、確か今まで彼女いたことないとか言ってたからそこまで怒りも
「おっと、これは失礼致し申した」
そう言うと大吾は席を立ち、同時に僕も強制的に席から引っ張り上げた。
「わっ!」
「んじゃ、早速みんなのトコ行こうぜ! 今日はたぶん、我らが憧れのミスコンファイナリスト、“
「あ、そうなんだ」
「なんだよ、釣れないなぁ。喜ばしいコトだろ?」
思ったような共感を得られず、少し
いかんせん、僕は大学デビュー組なもので。
高校までコミュ障だったこの性格はそう簡単には直らない。だから外で感情を表に出すという行為がまだ苦手なだけなんだ。
「まぁこれでも一応、
「わかりにくいわ!」
ポカっと軽く頭にツッコミを入れられた。
こういうノリが出来る大吾のあっけらかんとした性格は正直かなり憧れる。
ああ、ちなみに。
これからこの男と一緒に向かおうとしている先は、大学内にあるかなり広大な広場の一角だ。芝生が綺麗に狩り
「それじゃあ、行こうか。大吾」
「お前が仕切るな~」
個人的にはそこそこいい関係だとは思っている。彼が本心でどう思っているのかはわからないけど、一応友達と呼んでいい存在だと僕の中では勝手にそう理解している。
◇
そこに行けば、いつものメンバーが自然と集まる。
「お~大吾! おつかれ」
すでに集まっていたウチのひとり、スラっと背の高いモデルみたいな茶髪のイケメンが僕らに声をかけて来た。
「あ、おつかれっス。
軽く手を掲げ、それに答える大吾。
その
もちろん、このパイセンのことは僕も知っている。
歳は僕と大吾の二つ上。この“陽キャグループ”を取り仕切る、リーダー格の男だ。
濱家先輩はいわゆるヤリ●ンだ。
相当にモテる。女性関係の噂を途切れさせたことのないホンマモンの色男。
ちなみにこの集まり。
濱家先輩の個人サークルなのだそうが、目的は特にない。
ただなんとなしに、よくこの場所へ足を運ぶ者同士で気の合うヤツ等が勝手に仲良くなってできた集団だ。
まぁ僕みたいな陰キャがこんなキラキラグループに本来入れるワケないんだけどね。当然、ここの人たちと仲良くなるための扉を開いたのは大吾だ。
彼は女性にはまったくモテないが、男には何故か物凄くモテるんだ。
「大吾さん、来るの遅いっスよ」
「俺は真面目に講義を聞くタイプなの!」
ただ彼は、名前から察するとおりサッカーがとてもうまい。高校まではプロ間違いなしと言われた
高校3年のとある練習試合で選手生命を絶たれるほどの致命的なケガをして、将来を諦めた青年だ。その後、死に物狂いで勉強して本学へ一般入試で合格を決めた。
ちなみにこれは別に自慢じゃないんだけど。
僕らが通うこの大学、実は
僕は昔から勉強だけはそこそこできたので、少しランクは上だったが、受験時にかなり頑張ったらなんとか入学することできたんだ。
別に自慢じゃないよ。
うん。自慢じゃない。
「
「あ、ども……」
ここにいたメンバー最後の1人。
すでに
学内ではもはやアイドル級の扱い。今年は間違いなくその栄冠を授与されるだろうと言われている
そんな超絶美女が、なぜ僕らみたいなのとつるんでくれているかって?
それはこの陽キャグループのリーダー、
「おい
いや、ただ挨拶しただけじゃないか。
なんでちょっと不機嫌そうなんだよ。
「
「もうすぐなってくれるんだろ?」
「
この二人はしょっちゅうこんなやり取りをしているが、彼女が濱家先輩の
凄いモテる者同士で、しかも幼馴染だからいつくっついてもおかしくなさそうなんだけど、今のところその気配はなさそうだ。
まぁ表面上はってだけなのかもしれないが。
「今日はどうします? カラオケでも行っちゃいます?」
そんな中、富安が本日のサークル活動について提案を行った。
「おっ、カラオケいいね。ちょうど歌いたい気分だったんだよ。んじゃいつもんとこ予約しといて、
「ういーす」
元スポーツマンとイケメンは馬が合うと昔から相場が決まっている。
「
「そうね。私もちょっと歌いたい気分だったし。圭くんたちはどうする?」
持ち歌が全然合わないのでカラオケは嫌いだ。というより、そんなところへ行っていたら今日の夕飯の支度が間に合わない。
「オレはもちろん行くっス!」
大吾はノリノリだ。
「あ、僕はちょっと予定が……」
「えー、いいじゃない。一緒に行こうよ、
わっ! ちょっと、
手をいきなり引っ張らないでくださいって!
OPが、OPが当たってますって!!
それにほら、そんなことしたら……
「行かねーっつってんだからほっとけよ!」
さらに不機嫌マックスになる
まぁ、みんなもうわかってると思うけど。
僕はこのヤリチ●陽キャの彼が大嫌いである。
「そうですよ、
そしてこの夢破れた元スポーツマンの後輩もまぁまぁ苦手だ。
「お前の分まで俺が楽しんできてやるッ! 任せろッ!」
大吾はただのバカである。
「そっかー。それじゃあ今度、この埋め合わせに二人でどっか行っちゃう?」
「えっ!?」
まさかの上目
1000%冗談なのだが、それでも僕の心は一瞬ドキっとした。
「
さらに怒りマックスの
もうこれ、僕このメンバーから今日限りを持って追放されちゃうんじゃないか?
「あら。私、結構本気だったりするんだけど」
「あーそうですかッ!」
まぁ、それならそれで別にいいんですが。
もともと大吾の付き合いでここになんとなく来ているだけだし。
僕には、この居場所よりももっともっと大事な推しが、
「そ、それじゃあ、僕はこのへんで……」
そう言い残し、僕はそそくさとその場を小走りで後にした。
買い物もして帰らなきゃいけないしな。
時間は思いのほかあまりない。
それにしても……。
本当に大丈夫なんだろうか。
僕は、義妹とこれからふたりっきりで、本当に仲良くやっていけるんだろうか。
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