第4話 親愛なる圭と美桜ちゃんへ
親愛なる
今、お母さんがこの筆をとっている頃にはもう、和彦さんは朝一番のフライトで、すでに日本を飛び立ってしまっていることでしょう。
少し悩みました。
和彦さんには、子供たちのことをお願いしますと言われていたから。
でもお母さん、決めました。
私、和彦さんの後を追って、一緒にアメリカへ行ってきます!
どうせなら、新婚旅行にしちゃおうと思ってね。
それなら一石二鳥でしょ? お母さん、ナイスアイディーア。
たぶん、最低でも1週間くらいはお家を空けることになると思うけど。
圭、あんた男の子なんだから、美桜ちゃんのことしっかり守ってあげるのよ。
生活費はPAIPAIで送金しておいたから。それ適当に使って、あとは自分でなんとかなさい。足りなくなったら言って。
アメリカなんて、学生時代以来だから楽しみ~。
絶対、野球見にいかなきゃね。
ドザーススタジアムで
あ、美桜ちゃんも少しの間だけど、圭のことよろしくね。
突然でほんとゴメンだけど。
女同士、好きな男にどうしても着いて行きたい、止められないこの気持ちを理解してくれるとお
もう私たちみんな家族になったんだから、仲良くやりなさいよ!
それじゃね!
アディオス!!
親愛なる
追伸
えっちなコトしちゃダメよ!
お母さん、いつでも見てるんだからねッ!!
◇
「う、ウソだろ……」
月曜日の朝――
今日の大学の講義は午後からだから、割と遅めの朝食を
中に目を通し、
「ふぁ……」
美桜も僕より少し遅れて部屋を出て下に降りて来たようだ。
まだ新しい環境に慣れていないのか。
クマと言えば……
義妹がいま身にまとっているチャーミングなパジャマには、デフォルメされた熊のキャラクターが至る所にプリントされている。
「(た、谷間が……)」
僕が見ているのはあくまでパジャマの熊だ。
決して、少しはだけた胸部の
「ねぇ。その手紙、なに?」
おっとイケない。
理性を取り戻せ、圭。
今はそれどころではないぞ。
「あ、いや……」
「私にも見せてよ」
「ちょっ」
中身を読まれることに少し抵抗感を覚えた僕は、義妹に手紙を取られないよう右手を伸ばして遠ざけたら、それを無理矢理奪い取ろうとした義妹とくんずほぐれつ。
一瞬、僕の腕が義妹のPAIPAIにフェザーのタッチをしてしまう。
その触れた柔らかさに僕の本能はざわついたが、理性がそれをなんとか黙らせ、そうこうしている内に、手紙は義妹によって強奪されてしまった。
彼女は至って冷静だった。
OPに
当然、彼女の瞳はどんどん見開いていき、身体がプルプルとわなつき始める。
「な、な……はぁぁぁぁぁ!?!?」
もはや混乱にも近い、ご近所に
まぁ、気持ちはよくわかるよ。うん。
大人しく驚いてはいるが、僕も内心は絶叫している。
「ほ、ホント自分勝手な母で、弱っちゃうよね~。あは、あはは……」
「あは、あはは……」
もはや二人で顔を見合わせて乾いた笑いを交わすしかなかった。
うん。でもやっぱりなんか……
めっちゃ気まずい。
ピンポーン
「はっ!」
急になったチャイムの音に反応し、ハッと我に返る表情になる美桜。
明らかに、なにかに焦りを感じている態度が見て取れる。
「今、何時!?」
「え、たぶん10時くらいじゃないかな」
「ヤバッ!」
その焦りは彼女の運動神経を
もの凄いスピードで玄関先まで走り去り、ガチャっと玄関の鍵と扉を開ける音が聞こえた。
どうやら義妹には、チャイムを鳴らした来訪者に心当たりがあるらしい。
「あ、出なくていいから! バイトの先輩が迎えに来ただけだから!」
ドタバタと一度ダイニングへ戻って来てそう言い残し、
やれやれ。
今日バイトの日だったのかよ。
なに余裕ぶっこいて10時まで寝てるんだ。
まったく。美桜は和彦さんと違って、その辺かなりテキトーなんだな。
それにしても、わざわざ新しい家まで迎えに来てくれるバイトの先輩とか……
めちゃくちゃいい人じゃないか!
よし。ここは兄として、しっかり義妹がお世話になっている人に挨拶しておかなくちゃいけないな。
「あ、どうも初めましてこんにちは。私はミチ……じゃなかった、美桜のバイトの先輩で、
「ご丁寧にどうも」
玄関先でスマホをいじりながら待っていたのは、割とカチッとしたパンツスーツで身を固めた、明らかに仕事が出来そうな、まさに“女史”といった感じのとても綺麗な女性だった。
「失礼ですが、
「あ、はい。一応、そうみたいです……」
とてもステキな女性ではあるのだが、なんか視線が思いのほか鋭くて、正直ちょっと苦手なタイプかもしれない。
てかこの人。
とてもバイトの先輩って雰囲気じゃないんですけど。
社員の人なんじゃないの?
「美桜、ワガママで大変でしょ?」
「あ、いや。全然、そんなこと……」
あると思います。
「うふふ。でもあの子、中身は本当にとっても優しくていい子だから。これから色々大変かもだけど、仲良くしてあげてね」
「はぁ……」
まるで本当の母親みたいな口ぶりで話してくる女史。
聞いてみてもいいかな?
「ところで、美桜ってなんのバイ……」
「おまたせ!」
僕の疑問がいま晴れることはどうやらないようだ。美桜が着替えと簡易な化粧を済ませて早々に戻って来てしまった。
いや、早すぎでしょ。
「遅いわよ。遅刻厳禁」
「ゴメ~ン! てか、出なくていいって言ったじゃん!」
少し呼吸を荒げながら、僕を
なんだよ。
僕はただ挨拶がしたかっただけだ。
「時間がないわ。行くわよ、美桜」
「はーい。あ、今日の夜ご飯はオムライスでいいから」
でいいから、ってなんだよ。
もう完全に僕が作ることが確定している言い草じゃないか。
てか、これから二人で同棲生活を送る件について、まだなんの話し合いしていないことが、僕としてはめちゃめちゃ気になっているのだが。
ったく。
まぁでも、兄として一応は頼られてるのって実感はあるし、正直あまり悪い気もしていないけどね。
「はいはい」
「じゃ、いってきまーす」
そしてなんだかんだ。
僕は昔から“妹”という属性に大変興味は持っていたので、血が繋がっていないとはいえ、彼女がこの家に来てくれたことを内心、とても嬉しく思っている節は正直あったんだ。
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