第四試合 武器力士vs念動力士
「第四試合開始」
土俵の周りにはいつの間にか防弾ガラスと土嚢が積み上げられていた。
行司・虚空之守も装束の上からEOD(爆発物処理班)用の防護服を着込み、マイクの代わりに拡声器を構えている。
「東ィ~! 危険すぎるジュネーヴ条約違反、弁慶ェ! 弁慶ェ!」
「西ィ~! 邪気眼系エリート、最鬼区八世ェ! 最鬼区八世ェ!」
カチャカチャと金属音を鳴らしながら弁慶が登場する。
その背中には、さっきまで無かったはずのガトリングガンが二門増設されていた。
「ヘイヘイヘイ! オレっちのステージへようこそ! 今日の弾幕は特別に濃いぜ?」
対する最鬼区八世は相変わらず地面から数センチ浮遊し、ポケットに手を突っ込んだまま冷ややかな視線を送る。
「やれやれ……。野蛮な猿が、鉄屑(オモチャ)を自慢しているね。僕の『不可視の
行司が防護バイザーを下ろして叫んだ。
「待ったなし! 実弾使用許可! はっけよォォォイ……のこったァ!!」
瞬間、弁慶の廻しが展開し、無数の銃口が露出した。
「喰らいなッ! 一分間に六〇〇〇発の『突っ張り(という名のフルオート射撃)』だァァ!」
ズババババババババババババッ!!
轟音と共に鉛の嵐が最鬼区八世を襲う。通常の生物ならミンチになる量だ。
だが、最鬼区八世はあくびを噛み殺しながら、片手をかざしただけだった。
「『ベクトル
キィィィィン!
数千発の弾丸が見えない壁に当たったかのように空中で静止し、そのまま向きを変えて弁慶へと殺到した。
「おっと! 反射(リフレクト)系かよ、厄介な!」
弁慶は腰のブースターを点火し、横方向へ緊急回避(サイドステップ)。自分自身が発射した弾丸の雨を潜り抜ける。
「なら、こいつはどうだい! 誘導性(ホーミング)の『塩撒き(クラスターミサイル)』だッ!」
シュババッ!
弁慶の背中のポッドが開き、小型ミサイルが乱れ飛ぶ。
それらはまるで意思を持つかのように、空中の最鬼区八世を包囲した。
「無駄だと言っているだろう。僕の演算能力は、君の単純な火器管制システム(FCS)を凌駕する」
最鬼区八世が眼帯の下の瞳をカッと見開く。
「落ちろ。『
グシャァッ!
空中のミサイルが、まるで見えない巨人の手で握りつぶされたように一斉に起爆。空中で花火のような爆炎が広がる。
「くっくっく、僕に触れることすらできない自分を呪うんだね。さあ、終わりだ。君を土俵の外へ『
最鬼区八世が指をパチンと鳴らすと、弁慶の体が青白い光に包まれた。念動力による強制排除だ。
しかし。
「ぬ……? 重い……!?」
最鬼区八世の眉間に皺が寄る。弁慶の体が浮かない。
「へっ、気づいたかい? オレっちの廻しは『四次元格納庫(インベントリ)』に繋がってるんだよ」
弁慶がニヤリと笑い、サングラスを押し上げた。
「中に入ってる武器弾薬の総重量は、国家予算三つ分だ。テメェの細腕(サイコパワー)で持ち上がる重さじゃねぇぞォ!!」
「ぐ、ぐぅぅ……ッ! 脳が、演算領域が……メモリ不足……!?」
最鬼区八世の鼻からツーッと鮮血が流れる。
無限の重量を持つ弁慶を動かそうとした反動で、彼の脳に過負荷(オーバーロード)がかかったのだ。
「チェックメイトだ、超能力ボーイ! 物理(チカラ)で解決させてもらうぜ!」
弁慶は動けない最鬼区八世の目の前に立ち、背負っていた巨大な円筒形の物体を地面に突き刺した。
それはミサイルでも銃でもない。ただの、とてつもなく巨大な『鉄塊』だった。
「とっておきだ! 質量兵器『弁慶の泣き所(パイルバンカー)』!!」
ドォォォォン!!
火薬の爆発力で打ち出された巨大な杭が最鬼区八世の『絶対領域サイキック・フィールド』を強引に貫通し、その華奢な体を水平に弾き飛ばした。
「僕の……計算……外……だァァァァッ!」
最鬼区八世はきりもみ回転しながら場外へ飛び出し、実況席のモニターに頭から突っ込んで感電した。
硝煙の匂いが立ち込める中、行司が煤(すす)だらけの顔で叫ぶ。
「しょォォォ負ゥありィ!! 決まり手ェ、決まり手はァ!!」
「過剰火力(オーバー・キル)! 過剰火力ゥ!!」
「ふぅ、硝煙は男の香水(コロン)ってな。……あ、弾切れだ」
弁慶が体を揺すると、大量の薬莢がジャラジャラと土俵に降り注ぎ、それが金色の山を作った。彼は親指を立ててウィンクし、戦場と化した土俵を後にした。
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