第14話 六本木
2018年 12月24日
あたしが、初めて六本木に行った日。
その日は、2ヶ月前に仲良くなった同い年のDJの女の子が招待してくれて
1人で六本木のクラブに行った。
箱自体は大きく、客数も多く、客層自体は当時20歳だったあたしからしたら上に見えた。
次の日は、その仲良くなったDJの子から「明日は渋谷で回すから、おいでよ」
と、言われ、渋谷の道玄坂上にあるクラブに行った。
そこであたしは、"ヒロくん"と出会った。
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程なくして、ヒロくんはよく六本木にいるという話を本人から聞いた。
"六本木"という響きが当時のあたしには刺激的で、洗礼を受けていた。
よく六本木に用事を作って出入りをした。
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2020年の春、"ヒロくん"とちょっとした口論になった。
その時に、
「俺ら、渋谷じゃなくて、六本木で出会ってたら違ったかもね」
と、言った。
それは、渋谷にあるバーにあたしが出入りしていて、"ヒロくん"と"あたし"という関係値のことで、ヒロくんも渋谷のバーに行きづらくなったという意味も含んだ形だった。
それを言われたのは、三宿の交差点だった。
今でも覚えてる。3月なのに、その日は風が冷たかった。
そして"ヒロくん"が何度も口に出してた
「"永遠"なんてないからね」
の意味も、今となってはなんとなく分かった気がする。
その時には、もう遅かったかもしれないけど。
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六本木という街が、どういう街で。
少し歩いた"西麻布"や"麻布十番"という街がどういう街で。
"渋谷"がどういう街で。
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まだ20代前半のあたしは、"六本木"に取り憑かれてただけで、
呪いのように、六本木に見合うような仕事ができる大人になりたいと何処かで目標めがけてて。
コロナ禍も、孤独の中、とにかく目の前にある仕事で精一杯結果を残すことしか興味が無かったと思う。
それも全て不純な動機で"六本木に見合う大人"になりたかっただけだった。
そうしてあたしは、気づいたら24歳、25歳、26歳と年を重ねて。
気付かぬうちに、仕事に没頭し、憧れの"六本木"の手前で、
病気になってしまった。
療養を兼ねて、地元に戻る頃には
"六本木"という目標なんて、ほんとちっぽけなものだったんだと、気づいた。
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