第37話 戦いのご褒美
即興だが、上手く行ってよかった。
氷魔法そのものでダメージを与えられないなら、体の中に直接叩き込めば良いと思った。
故に刀に氷を纏い、切り口から凍らせたというわけだ。
ふふふ、カッコつけられたと思い振り向くと……推しの顔が目の前に。
「御主人様! ご無事ですか!? 怪我は!?」
「な、な、なっ——(ァァァァ! 抱きつかれてるゥゥ!?)」
あまりの衝撃に、アルヴィスらしい台詞が出てこない。
胸に当たる柔らかな感触、髪からする良い匂い、女性特有の男の本能を刺激する香り。
その全てが、俺とアルヴィスをダメにする。
「……わ、私ったら、すみません」
「ふ、ふんっ、無用な心配だ(お、落ち着け、俺)」
「そうですよね、御主人様は凄いですから」
「ふっ、愚問だな(よし! 何とか体裁保てたぞ!)」
全身を奮い立たせ、どうにか膝から崩れ落ちるのを防ぐ。
抱きつかれた衝撃もそうだが、ほとんど魔力と体力が空だ。
しかしアルヴィスの矜持として、ここで倒れるわけにはいかない……いや、俺としても推しにかっこいいところを見せたいので倒れられない。
その後、騎士やアーノルド達からも賞賛を受ける。
「アルヴィス殿下! お見事でございます!」
「ええ! まさか、単独でゴブリンジェネラルを倒してしまうとは!」
「中々に手強かったが、俺の敵ではない(超ギリギリだったけどね!)」
「凄いですな。ゴブリンジェネラルといえば鋼等級の魔物、それを涼しい顔で……」
「ん? 鋼等級の魔物? ……無知ですまないが、説明を頼む」
「いえ、それは当然のことかと。冒険者や騎士でない限りは習うことはありませんので」
そして一人の騎士が報告に行ってる間に、もう一人から説明を受ける。
魔物や魔獣にはランクがあり、貨幣と同じく上から『白銀、金、銀、鋼、銅、鉄、石』と等級があるとか。
鋼等級の魔物とは中級の魔物に位置し、中堅冒険者数名や正騎士数名であたる魔物だとか。
つまり、まだ卒業もしていない生徒が一人で戦う相手ではないということだ。
……道理で強いわけだ! 危うく死ぬところだった!
「そ、そうか……(こわっ……)」
「しかし、本当に戦闘経験がないのですか?」
「いや、実は多少はあってな。きっと、そのおかげもあるのだろう」
「殿下が戦闘……それは……いえ」
「察しが良くて良い、それ以上は詮索しない方がお主のためだ」
確かに魔物は初めてだが、教会の刺客とは二度やり合った。
しかし、あの刺客達はゴブリンジェネラルより弱いということか。
いや、そもそも奴らは戦闘能力より隠密性を重視するか。
流石に使徒クラスになると話は別だろうが……早く鍛えなければな。
「はっ、畏まりました。それにしてもアルヴィス殿下なら、お望みならすぐにでも優秀な騎士や冒険者に……いや、これは不敬でした」
「いや、構わん。騎士や冒険者にも高名な者は沢山いる、その者らに例えられるのは悪い気はしない。何より、其奴らのお陰で治安が保たれているのだ」
俺は皇帝の継承権レースから降りる。
それはつまり、他の何かしらの職に就かねばならない。
あの兄上やユリアを追い込んだ娘に従うのが嫌なので騎士とか領主は勘弁だ。
そうなると、割と冒険者というのは有力候補だ。
ただのニートでは、推しを養えないではないか。
……いっそのこと、ユリアの騎士になるか?
ユリアのために新しい家を建て、そこの騎士として雇われる……悪くない。
「なんと……我々のことを下に見ない……これは皆にも知らせなければ」
「うん? 良くわからないが、時間があるなら冒険者の仕事や騎士について教えてくれ」
「はっ! 私でよろしけば何なりと!」
「うむ、良きに計らえ」
そうして、待っている間に話を聞くことに。
ただ、何故か……それを遠巻きに眺める二人が、俺をキラキラした目で見ていた。
それを見て、ユリアは『ウンウン』と強く頷くのだった。
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