第36話 氷刀

ァァァァァ!? 無理無理無理!


なんだこの強さは!? めちゃくちゃ逃げたい!


だが、今更逃げるなどダサすぎる!


何より、推しに応援されて引き下がれるか!


「ガァァァァァァ!」


「ちっ! しつこい——アイスロード」


「ガァァ!」


「転ばそうとしたが、これもダメか……威力もそうだが、貯める時間がないのも問題だ」


俺の氷魔法は発展途上であり、アルヴィス自体も才能にかまけて努力をしてこなかった。

動きはセバスの扱きのおかげでどうにかなってるが、魔法の鍛錬は自己流だ。

故に大技を打つには時間がかかる上に、成功するかはわからない。


「だが、やってみるしかあるまい」


「ガァァ!」


敵の攻撃を避けつつ、魔法をイメージしていく。

あの腕力にも押し負けない強さを。

太く、鋭いモノを。


「御主人様! 危ない!」


「ガァァァァァァ!」


「しまっ——ガハッ」


魔法に集中しすぎた。

咄嗟に後ろに下がったが、腹に拳が入ったようだ。

ごろごろと転がりつつも、何とか体勢を立て直す。


「くっ……」


「御主人様!?」


「くるでない!(ええい! 何を推しに心配させてるのだ!)」


「ガァァ……!」


「調子にのるなよ、凍て貫け氷の槍——アイスランス」


「ガァ!?」


相手は再び腕で振り払うが折れたようだ……どうにか、腕を一本破壊はできたか。

しかし、決定打にかける。

くそっ、こんなことなら真面目に鍛錬をやるべきだった。

アルヴィスのスペックなら、本来ならこの程度の敵に苦戦しない。


「ガ……ガァァァァァァァア!」


「……完全に怒り狂ったか」


腹の傷を回復させつつ、頭をフル回転させる。

魔力消耗が激しく、このままだとこっちが先に魔力が尽きるかもしれん。

何より、これ以上推しに情けない姿は見せられん。

その時、折れた相手の腕から血が出てるのが目に入る。

あれならば、斬ることは可能か。


「……そうか、試してみるのも一興か」


「ガァァァァ!」


俺は鞘に手を当てて腰を低くする。

イメージは氷の刃、凍てつく氷。

敵をギリギリまで引きつけ、魔力を高める。


「御主人様!」


「心配するな、氷刀——雪月花」


「ガァ!?」


俺は敵の右腕が届く前に一歩踏み込み居合切りをし、傷ついた左腕を切断する。

敵の腕は吹き飛んだが、それでも奴は不敵な笑みを浮かべていた。

これくらいでは死なないとでもいうように。


「どうした? かかってくるがいい」


「ガァァァァ!」


「動いたな——チェックメイト」


「ガァァ? ……ガ、ガ、ガ、……」


腕の切り口から氷が発動して体全体を覆っていく。


そして……全身が凍り、静かに砕け散るのだった。

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