第38話 宿敵?

その後、報告に行かせた騎士が戻ってきたので俺達も一度戻ることに。


魔獣は倒せてないが、緊急事態ということで仕方ない。


そして、キャンプ地に戻ると……何やら騒がしい。


生徒達が集まり、その中で一際目立つ女がいた。


「みんな見て見て! カイル皇太子様が大物を倒したわ!」


「よ、よせって、レイラ」


「ううん! 凄いことだもの! ねっ、ライドウさん!」


「……うむ、そうですな」


「いや、ライドウさんにも手伝ってもらったしさ」


「でもでも! トドメを刺したのはカイル様だもの!」


広場にはでかいイノシシが横たわり、その側にはカイル兄上とライドウ…そして、アレがそうなのか。

セミロングのサラサラな黒髪に可愛い系の容姿、華奢な身体つき身長も155程度か。

正しく、男子が守ってあげたくなるような姿だ……俺は断然ユリア派だがな!

それよりも興味がなかったから見たことなかったし、今でも会うのは避けていた。

何故なら、怒りを抑える自信はなかった故に。


「……ほう(……俺の推しをよくも)」


「ご、御主人様、私は平気ですから……皆が辛そうです」


「なに?」


周りを見れば、近くにいる騎士や生徒達が苦しそうに膝をついていた。

しまった、殺気が漏れすぎてしまったか。

すると、それを見た女が指を指してくる。


「あぁー! ひざまつかせてる! 可哀想!」


「レイラ! 辞めないか! ただ、そういうのは良くないぞ」


……落ち着け俺、ここでイメージを下げることは得策ではない。

軽く息を吸い、精神を落ち着かせる。

すると、周りの者達が立ち上がった。


「諸君よ、すまなかったな。少々、殺気立ってしまった」


「い、いえ! ……今、謝られたのか?」


「……アルヴィス殿下が?」


……これも過去の俺が悪い、それだけは認めなくてはいけない。

平穏に暮らす為にも、改善をしていかなくてな。


「ふんっ……怪我人がいるではないか——エリアヒール」


「「「なっ——!?」」」


詫びを含め、近くにいる騎士や生徒達にまとめて回復魔法を施す。

当然だが、皆が使えることに驚いている。


「これで良しと……」


「ふふ、御主人様らしいですね。治療する言い訳を作るだなんて」


「い、いや、俺は別にだな……(そんなつもりはないが、相手に対して推しが何も言わないなら良いか)」


ユリアは皇太子やレイラを見ても、特に何も反応していない。

もしかしたら、復讐の方向を変えたのかもしれんな。

だったら俺も、それに習うように努力せねば。


「な、何故、アルヴィスが回復魔法を!?」


「あれって教会に入るか私みたいに特殊な力がないと出来ないんじゃ……」


何やら、ピーチクパーチクとうるさい二人だ。

俺はそれらを無視して、案内に来た騎士に連れられて中央にいる指揮官の元に向かう。

すると、騎士達が一斉に膝をつく。


「アルヴィス殿下! 報告は聞きました! よくぞ、ゴブリンジェネラルを倒してくださいました!」


「「「お見事でございます!」」」


「顔を上げよ。なに、偉そうな奴がいたので遊んでやったに過ぎん。何より、俺の前で好き勝手はさせない(推しのために!)」


「なんと……ここには新兵も多く、アレを倒せるのは私かライドウくらいのものです。騎士はもちろん、生徒も危険に晒すことなく収めてくれたこと感謝いたします」


「そんなことはどうでも良い。それより、原因を探るのが仕事だろう」


「はっ、仰る通りです。皆の者! 編成を組んで調査に参るぞ!」


「待て! ……このことは生徒達には他言無用だ」


「……なんという心遣い……畏まりました」


騎士達が頷き、俺に敬礼をしてから動き出す。

振り返ると、それを睨んでいるレイラと苦笑いしている兄上がいた。

俺はそれを敢えて無視して、ユリアを伴って木陰に入る。

すると、ユリアが布を敷き座って太ももをポンポンした。


「ん?」


「どうぞ、御主人様」


「……仕方ない(……キタコレ!)」


俺はゆっくりと膝に頭を乗せる。

その視線の先では、デカイイノシシと兄上とレイラ、そしてそれを囲む生徒達がいた。

なるほど、自慢しているといったところか。

そしてふと上を向くと、膨れっ面をしたユリアがいた……はい! ご褒美です!


「どうした? やはり、奴らが気に入らないか?」


「いえ、それは割とどうでも良いです。ただ、御主人様は悔しくないのですか? 御主人様の方が、凄いことをしたのに……」


「何、わざわざ知らせることもあるまい」


俺はカッコつけたいが為に倒したに過ぎん。

兄上はあのまま持ち上げられ、皇位につけば良い。

あの女が妃になるか知らないが、俺が手を出さなければ破滅ルートは避けられるだろう。


「ふふ……お優しい方」


「ふんっ、なんのことだが(いや、本当にさっぱりわからん)」


「皆を不安にさせない為に……では私だけでもお褒めしますね」


すると、俺の頭を優しく撫でる。


それだけでイライラは何処かに行き、俺の心は安らぎを感じるのだった。

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