第18話 優柔不断な皇太子

……くそ! 酷い目にあった!


体は泥だらけになり、お腹はまだ少し痛い。


周りにはクスクス笑われるし、それが屈辱的で仕方がない。


でも皇太子のイメージとして、それを叱るわけにはいかない。


「本当に、何が一体どうなってるんだ?」


俺の知ってるアルヴィスは、いつだって俺に突っかかってきた。

事あるごとに雑種だとか、貴様には皇太子の地位は相応しくないとか。

それを見て、俺は尚更のこと皇太子として踏ん張って行かねばと思った。


「それなのに、ここに来て急に継承権レースから降りると……ましてや、継承権を放棄するとまで言ったとか」


父上から聞いたが、それがユリアのためにだとか。

俺の知るアルヴィスはそんなことしない。

きっと、何か他の狙いがあるはず。


「あいつは傲岸不遜で、他人のことなんかどうでもいいと思ってるはず。現に俺のことも見下してたし、平民や他の貴族も下に見てた」


だから、話を聞いた時は信じられなかった。

そもそも、どうしてユリアを助けたんだろう?

やっぱり、俺に対する嫌がらせなのか?


「そりゃ、俺だって流石に奴隷は可哀想だと思ったけど……」


そんなつもりはなかったのに、あれよあれよと話が進んだ。

止めようかとも思ったけど、レイラの反対があったし。

それこそ、止めたら別れるとまで言われたっけ。


「まあ、レイラからしたら虐められたし仕方ないけど」


レイラを虐めたのは事実だと思うし。

いつも何を考えてるのかわからないし、言い訳も特にしなかった。

まるで人形のようで、俺はあんまり好きじゃなかった。


「だから婚約破棄をしたのに……」


さっきの様子はなんだろう?

めちゃくちゃ微笑んでるし、雰囲気も全然違う。

幼少期から一緒だけど、あんなに笑ったりしたのは見たことない。


「俺の前でもあんなだったら……って何を言ってるんだろう」


俺はレイラを選んで婚約破棄をしたんだ。

成績優秀で無口で人形みたいに整ったユリアではなく、明るくて一緒にいて楽しいレイラを。

後ろを歩くのではなく、対等に並んで歩けるレイラを。

ただ、そのレイラも最近は機嫌が悪い。


「ユリアがアルヴィスに買われたことが気に食わなかったみたいだ」


会うたびに、ユリアをグフタフ卿に渡すように言われたけど。

個人的には、そんなことはしなくていいと思ってる。


「って、今はそうじゃなくて……ダメだ、頭がこんがらがってくる」


一体、アルヴィスはどうしてしまったのだろう。


アルヴィスの狙いがわからず、俺は立ち尽くすのだった。

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