第2話

 クリスマスなんて大ッ嫌いだ!


 男の子は街を歩きながら思いました。

 街灯が灯り、建物の窓からはオレンジ色の暖かそうな光がもれ、街はすっかり夜の顔をしていました。

 男の子はポケットに手を突っ込んでとぼとぼと歩いていました。特に当てがあるわけではありません。ただ、家に居たくなかったから飛び出てきたのです。


 ぐうっとお腹の虫が鳴きました。 


 朝から大したものを食べていないから仕方ないのです。

 ふと見るとそこはケーキ屋の窓でした。ガラス越しに大きな、そしてとても美味しそうなクリスマスケーキが置いてありました。

 三段ケーキで、一番下の段は大人一抱えぐらいの大きさです。真っ白なクリームがまるで積もった雪のようでした。そして、二段目はチョコレートです。所々、クリームか砂糖でアイシングされています。雪の中にそびえる山をイメージしているのでしょうか?

 そして、三段目、一番上には家の形をしたスポンジケーキと人の形の砂糖菓子が置かれていました。真っ赤の色合いからきっとサンタクロースなのでしょう。

 男の子はお腹がまたぐうっと、さっきより大きく鳴りました。知らず知らずに顔が窓ガラスにぐっと押し付けられています。

 見ているとお店の人がやって来てそのケーキを丁寧に箱に詰めはじめました。ケーキがすっかり箱におさまってしまうと、お店の人は箱を持って行ってしまいました。

 男の子はもっとケーキを見ていたかったからとても残念でした。

 名残惜しそうに窓のところでぼうっとしているとチリンとベルの音とともにケーキ屋のドアが開き、黒いスーツを着た男の人が出てきました。

 男の人はさっきのケーキの箱を大事そうに抱えながら男の子の横を通りすぎていきます。

 そして、男の人は道端に止めてあった大きな車に乗り込むとそのまま行ってしまいました。おそらく、さっきのケーキはどこかのお金持ちのクリスマスパーティーのテーブルにでも置かれるのでしょう。


 男の子は、つまらなさそうにちぇっと小さな舌打ちをすると、また当てもなく歩き始めました。

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