聖夜のさがしもの ~ わたしとボクとサンタの秘密
風風風虱
第1話
冬の弱々しい太陽がひっそりと沈もうとしていました。しかし、街の人たちがそれに気づくことはありません。何故って、その日は朝からどっしりとした雲が空をすっぽりと覆っていて一度も太陽が顔を出すことがなかったからです。
そして、もう一つ。街の人たちが太陽の事をすっかり忘れてしまう理由がありました。
小脇に大きな包みを抱えた男の人
手をつないで笑い合うカップル
はしゃぐ子供をたしなめ、たしなめ、両手一杯に買い物袋を持って歩くお母さん
みんな、今夜の事で頭が一杯で空を見上げようなんてすっかり忘れていたのです。
ドンっと足早に歩く男の人とおじいさんがぶつかりました。おじいさんはよろめくと道端にしゃがみこんでしまいます。
でも、ああ、なんということでしょう。男の人は気づかずにそのまま行ってしまうではありませんか。もしかしたら、おじいさんがあまりにみすぼらしい格好だったのでかかわり合いになりたくなかったのかもしれません。
たしかにおじいさんの服はきれいとは言えませんでした。いえ、正直に言いましょう。とても汚れていました。
赤茶けた布地のところどころが煤のような黒い染みがついていました。もしも触ったら手が真っ黒になってしまいそうです。
そのせいでしょうか、道いく人たちはうずくまっているおじいさんに見向きもせず自分の思う方向にどんどんと歩いて行ってしまいます。
おじいさんは力なく首をめぐらすとまわりに目を向けました。
街の建物ではちらりほらりと電灯が灯りはじめていました。
おじいさんは、ほうっと大きなため息をつきましたが、ため息はすぐに凍って真っ白に変わってしまいました。
どこからか陽気な音楽が聞こえてきました。なんと言っても今夜はみんなが大好きなクリスマスの夜なのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます