第3話 転倒
ヤクザれんじゅうは思い切り複数人で襲いかかってきた。
あっ、ズルい! ズルいズルい!
俺ひとりぼっちなのに対してお前ら複数人はズルい!
背中を刺されたのでそいつの首を掴んで近くにあった水路の欄干に叩きつける。メキッて音がしたからご愁傷さま。
ちょうど喪服みてぇな服着てんだから具合もいいよな。
冗談はさておき、俺は人を殺さない主義だから。水都県民に珍しく。
「オイ! 次は何処を刺してみる……!?」
「なんで死なねぇんだよ……なんで死なねぇの!?」
「ハンサムだから」
顔面を思い切りぶん殴り鼻が折れたのを確認したら思い切り掴んで、欄干に叩きつける。あ~っ、出血が多くて視界が揺らぐ。
腹に追加で二発弾丸を食らってから、地面に落ちていたおハジキちゃんを拾い上げてぶん投げるとよろめいて水路に落ちてった。
生きて帰れるといいね。がんばーれ! へい、がんばーれ!
「これで最後か!? エェ!? おい、なんで倒れてんだよエテ公ども! こんな欠けた人間に負けてェ! ごめんなさいはぁ!!」
「うう、ううう……」
あっ、死にます。ちーん。
だとか冗談言ってみる。……あれ? なんか本当に死なねぇな。
たしかにさっきから具合悪いんだけど本当に死なない。
普通刺されたら死ぬよな。ドラマとかでも刺されて死んでるもんな。
ドラマって誇張表現入るから膝じーんってなっただけでも死にそうだけど。でもそれ抜きでも死なねぇよ。なんで?
拳銃が恐れられてる要因のひとつとして、一発でも撃たれたら死ぬからっていうのがあるけれど、俺三発食らってるから死ぬはず。
死にそうすぎて逆に死なないとか?
「だっ、大丈夫ですか」
「大丈夫大丈夫。なんか死なないから怖くなってるだけ! 君こそ大丈夫? 歳はいくつ? 学生なら明日は学校休んで家でゲームとかしてたほうがいいよ。なんか怪我とかしたって言っちゃったりしてさ」
「じゅ、十六歳……」
「え! わか! 俺は五歳」
「精神年齢の話じゃなく」
すんごい失礼なコだな。あくまで水都県民ってことかい?
かなしいね、これが現実ってやつなのかな。ツンと来ちゃうゼ。
かくいう俺もうんこしたあと手洗わないからな。水都県民だね。
「かっこよかったです。あの、助けてくれてありがとうございます」
「いいのいいの。困った時はお互い様だろ」
「水都にもあなたみたいな人っているんですね」
「よく言われる。東京行ってたから」
「東京ってドブ臭いんですか?」
「臭くねぇけど……」
取り敢えずお金出してあげるからタクシー呼びなさいということになって、タクシーが到着するまでお話タイム。
「学校何処? 俺の高校はねぇ、県北の方なんだよね。毎朝電車に揺られてたなぁ。
「あっ、知ってます。たまに甲子園とかで」
「ね、たまに聞くよね。聞くたびにげんなりする」
「僕の通ってるのは、
「あっ、じゃあこの近くだ。いいね」
「はい」
あっ、タクシー来た。
いまの俺は覚醒状態。煙草を買うのも簡単だぜ。マジ簡単。
だとか思いながら歩き出してみたらうまく歩けなくて縁石に頭打ちつけて気絶した。通行人がどうやら救急車を呼んでくれたらしい。
目が覚めると救急車に運び込まれてた。
読んでくれた人はもういない。
あの少年は……たぶん違うや。
あのコ救急車呼ぶくらいの判断力なさそうだったし。
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