第9話

朝目が覚めてから、慌ただしく動き出した。


今日は15時にうちの最寄り駅で待ち合わせしてる。

茉莉花がうちに泊まりにくる日。


昨日の出来事は一旦頭の片隅に追いやり

トーストと珈琲だけで簡単に朝食を済ませたら

客用布団を引っ張りだし、水回りの掃除をする。


平日の日中に叔母がある程度掃除や

洗濯をしてくれているので

そこまで時間をかける必要がないのが

本当にありがたい。


なんやかんや動いてる間に

あっという間にお昼の時間になり

夜ご飯の事を考えながら

冷凍してた炊き込みご飯をレンジで温めて

おにぎりにし、口に放り込む。



食材そんなに無いし

家戻る途中で、茉莉花に何食べたいか聞きながら

お買い物して帰ってこよう。


シャワーを浴びて汗を流し

軽くメイクと、髪も軽く巻いて

低い位置でポニーテールにした。


オーバーサイズのTシャツとショートパンツに履き替え

キャップを被る。


家を出ようとしたら、スマホが震え

茉莉花からのメッセージに気付いた。


駅に到着したとの事なので

少し急いで外に出る。


外はどこからともなく蝉の鳴き声が聞こえ

茹だるような暑さを感じる。

今日は空の青が眩しい。


数分歩くと駅が見え、2人立っている姿が見えた。


1人は茉莉花で、1人は大和くんだった。


「壱華〜!!」


こちらに気付いた茉莉花が大きく手を振り

ぴょんぴょんと跳ねてる。

それに合わせて、膝丈の白いワンピースがひらひらと揺れていた。

かわいいなぁ。


「暑いのに待たせてごめんね」

「そんなに待ってないよ!」


「なんか、俺より恋人っぽい会話してない?」


揶揄うように言う大和くんの方を見ると

ずっと気になっていたものが

視界に入る。

ボディは多分黒なんだろうけど、赤いパール光沢が

大和くんの髪色みたいだ。


「バイクで来たの?」

「うん!大和に送って貰ったの。」


「明日何時くらいに帰る予定?

明日またここに迎えにくる。」


「私は何時まででもいいけど、茉莉花どうする?」

「うーん、18時!いいかな?」

「もちろん」

「了解、そしたら明日18時にまた来るわ。」


そういうと大和くんは

優しい目を茉莉花に向けて頭を撫で

ヘルメットを被り、颯爽と走り去って行った。


「ラブラブだね」

「やめてよ〜!でも、大和カッコいいでしょ!

惚れちゃダメだよ!!」

「あんなの見せられちゃ、惚れる隙もないよ」


本当にお互いを大切にしてるのが伝わってくる。

いいカップルだなぁ。


「あのバイク乗れるの18歳からじゃない?」

「そこはご愛嬌?」


うん、私の周りでは起こり得なかった世界だ。


私の家へ向かいつつ、晩御飯の話をしながら

スーパーへ向かった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る