第5話

茉莉花宅に着いて、早速勉強を始めて2時間。


集中力の切れた茉莉花が

ふ、と思い出したように話し始めた


「さっきのコンビニで思ったんだけどさ

壱華が自分のこと話してくれるの

珍しいよね?」


「そうかな?そんなつもりは無かった。」


「私がたくさん話すからだと思うけど、比較的聞き役というか

皆んなの話を引き出すのが上手いっていうか…

なんか、気付いたらこっちがいっぱい話しちゃう雰囲気あるんだよね!」


なにそれ、と

クスクス笑う私に、少しムッとする茉莉花。


「本当なんだもん!

私、壱華と1年以上一緒にいたのに

家族の話聞いたの今回が初めてだったし。

話したくない事なのかなって思っちゃってた。」


少し寂しそうな、拗ねた表情に

本当は気遣い屋の、繊細な優しさを持つ茉莉花に甘えていた事に気付いた。


「ごめんごめん、馬鹿にした訳じゃないの!確かに、家族の話は少し避けてたの。気遣ってくれてありがとうね。」


「あ、謝って欲しい訳じゃないの!こっちこそごめん!

言いたく無いならいいの!

ただ、寂しくなっちゃって。でも、今日そういう話が聞けたのが嬉しくて!!」


あぁ、本当に素直ないい子だな。

中学の友達もいい人達だった。

煙草吸ってたし、良くない事はしてるんだろうけど。


「勉強の休憩がてら、少し私の話聞いてくれる?」


あんまり重く受け止めないでね、と

私は、母が亡くなった事、今は1人で住んでる事、勉強する理由、そして

家族が大好きである事を茉莉花に話した。


「あーー!!こんなに自分の事語ったの初めて!!

はずかしっ!」


スッキリした私はそう言って、茉莉花の顔を見ると

眉が下がり泣きそうな目なのに

口元は笑顔のなんとも言えない表情をしていた。


やっぱ同情させちゃったかな。

困った顔で私が笑った。


「話聞けて良かった。今度の土曜日さ、壱華のお家で勉強したいな!」


「いいよ!なんだったら泊まってく?」


「泊まるーーー!!!」


「これで数学叩き込めるわぁ」


「ヒッ!」


無邪気な笑顔から引き攣った表情になった茉莉花に笑いながら

勉強を再開し、もう1時間程してから帰路に着いた。

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