第3話 特訓初日
ドンドン
「おい!!リクト!起きてるか?!」
戸をたたく音と大きな声で目が覚める
そういえば、昨日の夜に、午前中は訓練を行うと決まったのだった。
昨日は変なテンションになっていたが、冷静になってから不安が襲ってくる
本当に俺にやれるのだろうか
「すいません、今起きました」
戸を開けてそう言う
「む……そうか、今日から、この時間には起きて訓練を始める」
日が昇ってすぐのようだ、まだ空が薄暗い
季節が分からないが、5時くらいだろうか
こんな朝早くから、昨日の今日で早速なんて……
さすがに気が重い
「……わかりました」
「…昨日の目は見間違いだったのか?もっとやる気を出せ!へばるぞ!」
「はい」
武人なだけあって、せっかちなようだ。
「……まぁいい。まずは、身体能力を測るぞ」
「はい…………でも、ステータスを見るだけではダメなんでしょうか」
「ステータスの能力値とスキルは、魂の力だ。素の身体能力に能力値分の補正がかかるイメージだ」
「なるほど……」
「これから素の身体能力を測る。外に出ろ」
広い庭のような場所に来た
ここで訓練を行うらしい
すでにいくつかの物が用意されている
「よし、まず、この鉄塊を持ち上げろ。これが一番軽いやつだ。どこまで持ち上げられるか測るぞ」
一番軽い鉄塊は、見た感じ5、6キロくらいのものだろう
……ふっ……舐められたものだ。
昔から運動は嫌いじゃなかった。
それに今は身体が軽い、
力もみなぎっている気がするのだ
地面に置かれた鉄塊に両手をかける
「……よっ……ん?」
……動かない
「……ふん!!」
全力を込める
「うむ、ピクリともせんな。0点だ」
「……はぁ…はぁ……お、重いですね。15キロくらいですか?」
「キロ?……重さの話なら、赤ん坊2人分くらいだ」
「はは、冗談はよしてくださいよ」
「いや本当だ」
「…バカな」
「驚いたのは俺の方だぞ」
……いや、まだだ。筋力など必要ないのだ
ほかの分野で才能を発揮できるかもしれん
気を取り直して次だ
「次は持久走だ。この外周を何周できるか測る」
「……はい」
「途端に嫌そうな顔をするな。すぐに始めるぞ」
「……うむ、持久力は1点。クソだな」
「……なん…だと」
「俺も驚いた。100メートルで足がもつれ始めていたぞ」
「…………いや、まだだ。ほかの種目は……」
「最終結果は、筋力が0点、持久力1点、耐久力1点、柔軟性8点、……ほぼ見ないくらいに弱いぞ」
「……でも、柔軟性は……」
「柔軟性は高得点が多いからな。まぁ8点は高い方だ」
「……」
「もうエルモス神父も起きてるだろう、朝食を食いに行くぞ」
食堂に来た。
エルモス神父もそこにいた
「おかえり、どうだったかい?」
「こいつは、身体能力はクソのようですね」
「……あの、俺に試練攻略なんて可能なんでしょうか」
「安心せい、ユニークスキル特化型なら珍しくないことじゃ。鍛えれば、可能性は十分ある」
「あぁ、お前みたいな奴にも、英雄になった奴もいる」
「お主らの希望で、今日から早速訓練を開始したのじゃが、このまま続けて問題はないか?」
「…はい」
カリムさんも頷いている
「ては、予定通り、午前は体力づくりと戦闘訓練。午後は知識学習。それ以降は自分でユニークスキルの練習じゃ。よいか?」
「問題ないです」
「今日からしばらくは、戸籍など、いろいろせねばならぬことがある。午後の知識学習はできないじゃろう。まぁ、まず朝食を食べるとしよう」
朝食を取り、一息ついたと思ったらまた庭に連れてこられた。
「次は魔法の訓練だ」
「はい」
「まずは魔力を感じるところからだ。今から、訓練用の魔法をかける。お前の魔力を暴れさせる魔法だ。これで自分の魔力を感じろ。そしてそれを抑え込んでみろ」
「……なるほど、わかりました」
「心配しなくていい、訓練用の魔法だ。安全だぞ」
カリムさんが手を向けてくる。その瞬間、手の前に魔法陣が現れ、輝いた
「うっ……」
何かが体内で荒れ狂う感覚がする
「それが魔力だ、抑え込め」
その荒れ狂う何かに意識を向け、抑え込もうとする
すると、体の一部かのようにあっさりと抑え込むことができた。
「……ほう、筋がいいな。想像以上だ」
「…これ、そんなに難しいんですか?」
「お前のように、最初から手足のように扱えることはほとんどないぞ」
……ふふ……やはり筋力など不要。俺には魔法があった!
「ここまでできるなら、もう属性を調べてもいいな」
「属性?」
「魔法には属性がある。お前に合った属性を調べるぞ」
「なるほど」
「属性との相性は使ってみればわかる。まずは火魔法だ。俺の詠唱を真似しろ」
カリムさんが短い詠唱を唱える
すると、指先に小さな火が灯った
俺も真似して唱える
何度か試したが、何も起こらない
「火属性は合わないようだな。よし、次だ……」
「……よし、今のが最後の属性だ。お前に合う属性は……無いな」
「……バカな」
「俺も驚いたぞ」
魔法適正0?
期待してただけに喪失感が酷い
「どうやら、お前の魔力は魔法には変換できないらしい。お前のユニークスキル専用の魔力ってことだ」
「!?」
そうか、喪失感で忘れていたが、俺にはユニークスキルがある!……でも、あの粘土出すスキルだけ?
「あのユニークスキル、白い粘土が出るだけでしたよ」
「……スキルはレベル1ならほとんど使い物にならん。スキルレベルはスキルを使えば使うほど伸びる。今からその粘土を出し続けておいてみろ」
「なるほど」
「魔力の残量に注意しろ。それと、あまりユニークスキルについて人に語るな。お前の生命線になるぞ」
「わかりました」
「……よし、これからは、魔力操作とスキルの訓練に重点を置く。そのうえで体力づくりと、武術の基礎も叩き込むぞ。分かったか?」
「はい!」
「よし、昼メシ食ってエルモス神父と戸籍登録だかなんだかをやってこい。その後はユニークスキルの訓練だ」
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