11日目

 夜はやっぱり冷える。

 仕事帰りの街を歩きながら春は何となく空を見上げてみる。

 冬の空は透き通っていて星が鮮明に見えるている。それが町明かりの間からでもなんとなくわかるのだと気が付いたのはここ数日のことだ。

 風が吹いたのをコートの隙間から感じて隙間埋めるように体を縮こませる。

 このところ暖かいと思っていたので油断していた。かじかみ始める手に息を吹きかける。息が触れたところが一瞬だけ温まってすぐに冷え込む。早いところ家に帰らないと凍えてしまいそうだ。

 街はすっかりクリスマス一色。いよいよコンビニの店員さんたちもサンタクロースの衣装を着こみ始めた。春が着ているものと様子が似ていて、同じ場所で買ったのかな。なんて思ったりもする。

 なんだかんだであっという間だ。明日はクリスマスイヴ。クリスマス当日の一日前。だからと言って両日ともになにかがあるわけじゃない。どちらも仕事だ。アルバイトからすれば休みたい日。つまり社員にとっては出たほうがいい日だ。それも新入社員とならば出勤しなければならないとも言えるだろう。基本的には。だが。

 どこの世界にも割り切っている人と言うのはいるもので。堂々と休みますと言い張る同期は数人見た。素直にすごいなと思うと同時にうらやましくもある。

『あんた。次私の前にそんなこと言ったら承知しないから』

 佳代子の声が頭の中に響いた気がした。佳代子からすればとしくんと言う存在がいるのに贅沢な話だというのだ。ちょっと口を滑らしただけなのに洗いざらいしゃべらされたのは良い思い出だったりもする。

 そんな時だった。

 スマホが小刻みに震えた。こんな時間にだれだろう。もしかして佳代子のことを考えていたのが通じたのか。なんて気軽なことを考えながら見たのが間違いだった。

 ディスプレイに表示されたとしくん。の四文字に寒さと関係なく体が震えた気がした。

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