9日目
クリスマス前の休日。お客さんは少ない。せっかくサンタクロースの格好をしてきたのに。披露する相手が少ない。いや、決して見せびらかしたいわけじゃない。でも、せっかく目立つ格好をしているのだから。お客さんには喜んで欲しい。
「河野さん? なんかボーっとしてるなら休憩してくれば? 無理して出てもらってるし」
体調不良もあって休み続きだったこともあって、休日を返上して働くことをもう出たのは春のほうからだ。それで少しでも罪滅ぼしになればと思ったりもしたのだけれど。そんなことで心の奥底にたまり続けるドロリとした塊は取り除けはしなかった。
まあ、でも休みをひまして家でそわそわしているよりはいくらかマシだ。
「ちゅうど。敗者復活戦が終わるころだし、誰が勝ち残ったか見てきてよ」
すっかり恒例となった年末のお笑い大会のことだと気が付くまで時間を必要とした。このところずっとそわそわしていたのを思い出してちょっとだけ笑えてくる。自分よりもひとまわりもふたまわりも年が上のおばさんがお笑い番組に夢中になってそわそわしているのだ。その姿はかわいらしくも思える。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
気を使わせているのがわかったし、本当に結果を知りたそうだったのでスマホでニュースを調べてみることにした。でもひとつだけ気になることがある。
「ネタバレみたいなことしてもいいんですか」
ファンだったら自分で結果を知りたいとかあるんじゃないかと思う。
「いいのよ。決勝はリアルタイムで見られそうだし。そこでどうせ知ることになるんだから。だったら先に知っておきたいわ。というかもう知りたくてしょうがないのよ。これ以上、ドキドキが続いたら止まっちゃうかも」
その熱量に圧されてしまう。
春はつい自分に置き換えて考えてしまう。彼女にとってのお笑いが自分にとってのなんなのだろうと。
まっさきに思い浮かぶのはボードゲームだ。間違いなく一番の趣味ではある。でも、だからと言ってそこまでの熱量を込められているかと問われると自信をもってうなづくことができない。
仕事もそこまで腰を据えて好きになることもなさそう。
そんな考えても考えても答えなんて出ないことを延々と頭の中を駆け巡り始める。
やっぱり仕事をしていたほうがいくらかマシだ。休憩もほどほどにしてすぐに戻ろうと思った。
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