8日目
「ねぇ。ちょっと本当に大丈夫なの?」
佳代子が本当に心配になってきたのか覗き込むように春を見つめてくる。
「うん。大丈夫。もうちょっとで今年も終わりだし」
「終わりってあんた。本気で言ってる? うち本屋だよ。年末年始にゆっくりできるわけないじゃん」
言われてハッとする。あらかじめスケジュールは教えてもらっていたはずだけれどクリスマスのイベントに向けての準備に気を取られてすっかり忘れてしまっていたらしい。土日もお盆も休みがなかったのに。どうして年末だけ休みがもらえると思っていたのか。気が付いてみると不思議でならない。
「マジで驚いた顔してるじゃん。もうちょい休んだほうがいいんじゃない? 店長に言いにくいなら私から言おうか?」
そんな迷惑を掛けられないし掛けたくなかった。佳代子にも。お店にもだ。
本屋の仕事は力仕事がそれなりにあったりする。つまりは人がひとりいないだけで仕事量が単純に負担になる。それはアルバイトが休むだけでも時間するのだ。新入社員と言えど社員がひとり長く休めばそれはそれなりの負担になる。
「ゆっくり休んで彼氏のところでリフレッシュでもしてくればいいのよ。そうすれば少しは元気になるんじゃないの」
入社したころに話をしたから春に彼氏がいるのは知っている。加えて、今回はそのとしくんのことを話さなかったのは春だ。だから佳代子は何も悪くない。悪いのは全部、春自身。
だからなのだろうか。
自然と目頭が熱くなっていく。頭の中がぐちゃぐちゃになって、何も考えられなくなっていくのをがわかる。目の前にいるはずの佳代子の声がどこか別の世界から聞こえてくるような感覚にすらなって。春は混乱してしまう。
自分が自分でなくなってしまったそんな感覚。
社会に出るって思っていたより難しいのかもしれない。それを眼前に壁を建てられたかのような衝撃と共に受け入れるしかなかった。
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